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顎関節症という歯科医療被害 3-7 非復位性円板軟骨の嘘について

(47P)
 先にあったMR像[図7,8]の誤診から円板軟骨の前方転位に「復位性」があるなどとても疑わしいことを示したが、[図9]にはこの著者が「非復位性」であるとする1症例のMR像が提示されている。

[図9]非復位性顎関節円板転位
a(左)が顎を閉じて噛んだ状態
b(右)が大きく開口した状態
[図9]aの顎関節を私が拡大したもの
(ab)が円板軟骨の前方肥厚部、
(iz)が円板軟骨の中央狭窄部、
(pb)が円板軟骨の後方肥厚部として
関節隆起真下の暗い像を矢印で指し示し、
この著者はそれが円板軟骨であるとしている。
ここでも顎関節症専門医はMR像で円板軟骨が
黒く映るものだと都合よく思い込んでおり、
デタラメに画像診断を行っているのである。

 [図9]aは顎を閉じて噛んだ状態のMR像であるが、ここでもこの著者はMRの原理と常識を無視して暗い像を矢印で指し示し、それが前方転位した円板軟骨であるとしている。先にも説明したが水分量の多い円板軟骨が硬い骨である下顎頭の骨髄よりも暗く映ることはあり得ない。この著者が先の「復位性」症例で誤診した構図と全く同じで、実際には[図9]aに映る前後の黒い像(ab)と(pd)は円板軟骨などではなくただの関節液であり、中間の薄暗い像(iz)も円板軟骨ではなく顎関節包靱帯の前方部分である。

[図9]aの構図を私が解説したもの
顎を閉じた状態では前方転位した円板軟骨は
側頭下稜付着の外側翼突筋によって
下顎頭よりも内側にずれて位置するので、
下顎頭のほぼ正面に位置する側頭筋の断面が映る
このMR像の観察断面で円板軟骨は映っていない。
この著者が円板軟骨だとする暗い像は
顎関節腔を満たすただの関節液であり、
下顎頭前縁直下に付着する外側翼突筋の上縁と
側頭骨関節面の間に生じた像にすぎず、
それを前方転位した円板軟骨であるとするのは
明らかな誤診である。

 [図9]aの構図を私が解説すると上のようになる。下顎頭関節面前縁の真下は丸く窪んでいて外側翼突筋が付着する箇所であるが、このMR像ではそれがよく確認できる。蝶形骨の翼状突起外側板に付着する外側翼突筋は左右が同時に収縮することで下顎骨全体を前方へ引き寄せる働きをする。顎を閉じた状態では外側翼突筋は収縮しないので弛緩した状態になり、外側翼突筋は重力に従って垂れ下がる。そして、垂れ下がって下に凸の弧を描く外側翼突筋の上縁が暗い像の下縁の輪郭となっているのである。
 また、脱臼でもしない限り下顎頭が前進するのは関節隆起の頂点(真下)までであり、顎関節包靭帯も顎関節脱臼を防ぐ為に関節隆起頂点近くまで覆う造りになっている。この著者が円板軟骨の中央狭窄部であるとして(iz)で示している薄暗い像は円板軟骨などではなく顎関節包靭帯の前方部分なのである。
 そして、暗い像の上縁は側頭骨関節面骨軟骨の下縁であり、暗い像の下縁は弛んだ外側翼突筋の上縁である。円板軟骨だとする暗い像はひとつの組織の外形ではなく、側頭骨関節面と外側翼突筋の隙間から覗いた顎関節腔であり、顎関節腔を満たすただの関節液なのである。水分量が多くても流動性が高いとMRでは無信号状態に近くなるので関節液が暗い像として反映され、[図9]aの暗い像として関節液が映ったに過ぎない。
 繰り返すが暗い像は専門医が主張するような非復位性に前方転位した円板軟骨などではなくただの関節液であり、顎関節症専門医であるこの著者の誤診なのである。

 次に同一症例で開口した状態のMR像bの構図を解説し、この著者の誤診を証明する。

[図9]bの顎関節を私が拡大したもの
(ab)が円板軟骨の前方肥厚部、
(iz)が円板軟骨の中央狭窄部、
(pb)が円板軟骨の後方肥厚部として
関節隆起真下の暗い像を矢印で指し示し、
この著者はそれが円板軟骨であるとしている。

 関節隆起との位置関係から先ほどのMR像とこのMR像を比較すると、閉口状態aよりも開口状態bではこの著者が円板軟骨であるとする暗い像が前に移動しているように見える。だが、結論から言えばこれも前方転位した円板軟骨などではなく関節腔を満たすただの関節液であり、この画像診断も誤診である。 

[私図]前方転位した症例の大開口位で
関節腔が前方へ拡大して見える原理

 円板軟骨が前方転位すると下顎頭と側頭骨関節面の間から抜けてしまうが、円板軟骨は何処かへ消えるわけではなく顎関節包内に留まり、押しのけられる形で下顎頭(私図黄●)の内側前方に位置することになる(私図紫●)。そして、大開口動作に伴って外側翼突筋が収縮すると、前方転位した円板軟骨は側頭下稜(私図赤●)付着の外側翼突筋によって前方(正面方向)へ引き寄せられることになる(私図赤⬆)。すると、顎関節包の前壁は内側で前に動こうとする円板軟骨によって前方へ引っ張られることになり、顎関節包靭帯の付着位置(私図点線)自体は変わらなくても大開口動作時には下顎頭前方の関節腔が拡大して見えることになる(私図青↔)。

[図9]bの構図を私が解説したもの
大開口動作では顎関節包内の円板軟骨が
外側翼突筋に引っ張られて前進するので
関節包前壁が前へ動く円板軟骨に引っ張られ、
閉口状態より関節腔が拡大して前に動いて見える。
関節隆起の下に見える暗い像は円板軟骨ではなく
拡大した関節腔を満たすただの関節液であり、
閉口位のMR像[図9]bもこの著者の誤診である。

 関節腔は流動する関節液で満たされていてMR像では低信号で暗い像として反映されるため、開口動作に伴って関節包内で円板軟骨が前に動くと顎関節包靭帯の前壁が引っ張られることで[図9]bのように関節腔の暗い像が前へ動いたように見えるわけである。関節液で満たされた関節腔の暗い像をこの著者は非復位性に前方転位した円板軟骨と間違えているのだ。

 非復位性顎関節円板転位の症例として提示されたMR像[図9]a、bの構図を私が解析してこの著者の誤診について解説したが、この著者は復位性の症例[図7、8]と同じようにただの関節腔を円板軟骨であると間違えている。だが、それだけではなくこの歯学書には章ごとで担当著者が複数名おり、先に続くMR画像診断でも同じように黒い像を指し示して円板軟骨であると誤診を何度も繰り返している。日本顎関節学会所属の担当著者らはいずれも大学病院で教授を務めるような歯科医療の重鎮であり、それに学ぶ顎関節症専門医の画像診断はインチキデタラメで当然なのだ。
 MR画像診断に必要となるのはMRの原理を理解していることは勿論だが、解剖学的立体構造の把握と機械動作の理解である。画像診断の適正能力である空間認知能力と機械仕掛けの理解力は行き過ぎた学歴社会の学校教育で気づかれる丸暗記や計算能力とは何も相関しない。誰にでも得意不得意があり個人が持つ脳の性質は偏りがあって当たり前で、脳が丸暗記と計算に特化した成長をするほど他の性質は成長しなくなる。歯も顎も形ある物で歯科医療は諸に物づくりの仕事であり、残念ながら学歴エリートの特性とは真反対の性質が求められる。だから適正のない人間が歯科医療を牛耳っている限りは歯科医療の水準が進歩することなど無いし、顎関節症専門医がやりたい放題になっているのだ。

 [図7,8,9]で私が解説したように、円板軟骨の前方転位に復位性も非復位性も初めから存在しない。「復位性・非復位性顎関節円板転位」はこの担当著者のような顎関節症専門医を自称するヤブ医者達が行ったインチキデタラメなMR画像診断の誤診に基づいて創り上げられたありもしない架空の病なのである。

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