2020.03.21

 東京、中野にある某居酒屋。ある人との出逢いを求めて、僕はここを訪れた。そこに行ったからといって、実際に出逢える保証なんてない。出逢える確率はどれぐらいなんだろう?普通に考えれば、出逢えない可能性の方が高いことぐらい理解している。とはいえ、そこに行かない限り、出逢える可能性はゼロである。でも、逆にそこに行けばどうだろう?可能性は五分五分である。出逢えるか?出逢えないか?この問いかけに対してなら。

 可能性が五分五分なら〝行かない〟という選択肢はなくなった。それどころか、『なんか出逢えそうな気がする~』と、まったく根拠のない不思議な感覚を抱いていた。ダメでもともと、会えればラッキー、そんな軽い気持ちも後押ししてくれた。本来、そのお店のサービスに興味を持ち、体感したいという思いも強かったから、そのお店を訪れるだけで自分にとってはプラスになるわけだ。別の用事が夕方で終了するのも追い風になっていた。

 滋賀~東京。東京~滋賀。移動手段は夜行バス。当時、定職のない僕の背中を片道2200円という破格の値段が押してくれた。東京に滞在できるのは一日だけ。23時30分にバスは出発する。移動時間を考慮すれば、お店にいられるのは3時間程度。だが、この3時間が僕の財産になった。お金には換えることができない、自分を見つめなおすための、とてつもない財産に。
(つづく)

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