鏡越しに自撮り

うちの母方は霊感持ちの割合が多く、母もその1人です。
私が持っている怖い話ネタはほとんどが母方一族の体験談です。
今回も母が体験した話です。

私は両親が早くに離婚していて、保育園ぐらいの時から母と暮らしていました。

当時住んでいたアパートはかなり古く、テレビ用のアンテナさえ無い部屋で
、そこに母はリサイクルショップで買った姿見用の大きな鏡を置いていました。

ある日、母は鏡に映る自分にポラロイドカメラを向けて自撮りを試みました。新しい服を着た自分を当時の恋人に見せたい、みたいな理由だったと聞いています。
当時はまだカメラ付き携帯電話も無いので、自撮りといえば基本的にインスタントカメラでした。

おそらく胸元あたりでカメラを構えて、シャッターを切ったんだと思います。
灰色で出てきたポラロイド写真をうちわのように煽いで、現像された写真を見た時、母は違和感に気付きました。

胸元から上が全くの別人になっていたそうです。

私も数年前に聞いた話なので詳しく覚えていませんが、誰かの顔がうっすら上書きするように重なっている感じだったと思います。

「光の具合でそう見えただけじゃないの?」と聞いたのですが
母は「あれは本当に全然違う顔……」ときっぱり否定しました。
髪の色、長さ、顔立ち、全てが変わっていたそうです。

気味が悪くなった母はその写真をその辺に適当に置いていて、気付いたらいつのまにか無くなっていたようです。
当時一緒に住んでいた私も、その写真を見た記憶はありません。

そのアパートは今も建っていて、賃貸物件サイトのアーカイブに残っています。
一階がスナックになっているアパートです。

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