見出し画像

日本の音楽と西洋の音楽

 日本の音楽が一部例外を除いて、海外でそれほど受けない【注1】のは、現時点では西洋が文化的に世界を支配していて【注2】、かつ、音楽の好みが日本人と西洋人とでは全く異なるからです。同じ日本人でも、年齢層、個人によって音楽の好みは異なるのだから、文化の異なる国・地域によって音楽の好みが異なるのは当りまえです。

だから逆に、Spotifyの「Top 50 - Japan」で海外の曲は6曲前後くらいしかない【しかも全てK-POP】事でも明らかなように、日本は日本で、洋楽は一般的にはあまり受けません。

 言語が異なれば生育過程において音の聴こえ方も異なってくるそうです。つまり例えば、日本人と英語圏の人々が同じ曲を聴いていても、日本人と英語圏の人々とでは音の聴こえ方が異なるという事です。

西洋の言語は子音の連続が多いのに対して日本語ではたいていの場合、子音の後ろには母音がついてくるなど、日本と西洋では言語構造が異なるので、当然その言語の違いから音楽の違いも生まれてきます。日本語で歌う事を前提とした楽曲を作れば、当然、その楽曲は日本語に合ったコード進行やメロディーやリズムの楽曲になるでしょう。また、日本人と白人や黒人とでは声帯も異なるので、その違いから音楽にも違いが生じる。

日本人は例えば、わび、さび、幽玄に美的なものを感じ取るなど、民族によって芸術的な感性は異なるので、そこから音楽の好みにも違いが生じてくるでしょう。

 それゆえ、日本的な音楽【注3】が西洋で受けないからといって、日本的な音楽が西洋的な音楽に比べて劣っているわけでも、逆に西洋的な音楽が日本的な音楽に比べて劣っているわけでもないと思います。恐らくはK-POP文化【注4】の影響で、その事が分からない日本人が物凄く増えましたが。

あるアーティストの新しい曲に対して、同じそのアーティストのファンであっても、称賛するファンと批判するファンが発生する事はよくある話で、人によって音楽の好みが異なるのは厳然たる事実で、音楽を商業主義的な観点【売り上げ(人気度)】から甲乙序列評価する事はできても、音楽の文化的な価値【注5】を単純に上か下かで評価する事は出来ないと思います。

例えば、有名芸能人の本の方が純文学の本に比べて売り上げが大きいからといって、有名芸能人の本の方が純文学の本に比べて文化的な価値が高いのかというと、そうとは言えないでしょう。

音楽の聴き慣れに関して

 あるイギリス人が、以前は日本の音楽は嫌いだったけど、日本に住むようになってから日本の音楽が好きになったと仰っていましたが、音楽の好き嫌いは聴き慣れによる要因もかなり大きいと思われます。

昔、寿司は野蛮な食べ物として海外では不人気でしたが、徐々に海外の人々の舌が寿司の味や食感に慣れてきて、今では、寿司は世界的に人気料理の一つになっています。

同じように、世界的なアニメ人気が今と同じか、それ以上の状態がずっと続いて行けば、海外の人々がアニソンを通じて日本的な音楽に耳が慣れてきて、日本的な音楽が好きな人々も世界的に徐々に増えていくと思います。今でもアニソンは世界でも割と人気ですしね。

地理的に近いがゆえに音楽の好みも日本人に近いのか、現時点では、日本的な音楽は西洋よりもアジアでの方が人気が高いですね。

日本の音楽アイデンティティ

 今、日本では日本の音楽をグローバルスタンダード【音楽に限らず、グローバルスタンダードというのは実際には欧米(或は西洋)スタンダードです】に合わせるべきだといった世論が特にネットで大きくなりつつあるように思います。

しかし、日本のアニメは世界で大人気ですが、作風を西洋人の好みに合わせたから世界的に大人気になったのか?違いますよね。つまり、日本的な音楽も長い目で見れば世界的に大人気になる可能性はあります。もっとも、日本の音楽を世界的に大人気にしなければならないとも思いませんが。

日本的な音楽(日本人が先祖から受け継いできた日本的な音楽DNA)を放棄してまで西洋に合わせる事が良き事だとは思えないですね。そもそも、世界中の音楽が西洋的な音楽ばかりになって何が面白いのか?それぞれの国々の個性を反映させるような形で音楽が発展した方が文化的に豊かだと思います。

それに、日本人が西洋の猿真似をしても、西洋人からは、本音の部分では、また、アジア人が俺たちの文化をパクっている(文化盗用をしている)、アジア人には創造性が無いと思われるだけだと思います。

西洋人は西洋独特のポピュラー音楽を創造しましたが、日本人にも日本独特なポピュラー音楽を創造する能力はあると思います。それゆえ、日本の音楽がガラパゴスだと言われるのは、むしろ非常に良い事だと思います。

マーティ・フリードマン&ROLLY (2)ヤング・ギターYouTube限定特別対談

マーティ・フリードマン&ROLLY (3)ヤング・ギターYouTube限定特別対談

日本人よりも外国人であるマーティの方が日本の音楽の良さが分かっているのも、何か変な感じですよね。ただ、浮世絵の良さも、アニメや漫画の良さも外国人が発見しているんですよね。何でなんですかね。日本人は評価能力が低い【権威や他者からの評価でしか評価できない。主体的な評価が出来ない】からなのか。

【注1】‥表現が難しいのですが、日本の音楽は海外でそれほど受けていないと言っても、私の記事「日本の音楽アーティストの世界での人気度」で示したように、ある程度は受けています。日本の音楽は一部の人々が言っている程、海外で全く受けていないわけではないし、かと言って大人気でもないといった感じです。

【注2】‥殆どの国は英語教育をやっているし、日本では義務教育で西洋音楽の勉強をやり、多くの国々は西洋文化の影響を強く受けています。そして、世界的に人気と言われているK-POPも、世界で割と受けている日本のシティ・ポップも西洋的な音楽です。

【注3】‥日本的な音楽というのは、一つの楽曲の中で(複雑なコード進行や転調やクロスオーバーなどによって)多様な、或は細やかな感情表現をしている。民謡など、日本の伝統的な音楽から来ていると思われる日本独特なメロディーラインやポップさやリズム感。日本語の響きを生かした楽曲など。

【注4】‥韓国は伝統的に他者との関係を常に上か下かで認識する甲乙序列文化の国で、そういった韓国文化の影響をK-POPを通じて(K-POPが好きだろうが嫌いだろうが)多くの日本人が受け、音楽も上か下かでしか認識できない日本人が激増したのだと思います。しかし、文化は単純に上か下かで認識出来るものでもないと思います。

文化を純粋に商品としてとらえて、お金に換算すればそういった認識もでき、そういった商業主義的な観点を否定はしませんが【私自身、人気度(商業主義的な観点)から音楽を認識するような事は頻繁にしていますしね】、その観点を絶対視する考え方には賛同できないですね。

【注5】‥ある音楽【ある曲や、あるアーティストや、ある音楽ムーブメント】の文化的な価値に関して、絶対的な評価ができるとすれば、その音楽が(音楽史的な観点から)独創的なのかどうか、その音楽がどれだけのアーティストに音楽的な影響を与えたのかといった観点からの評価でしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?