罪と罰 そして責任について
プロフィールにもある通り、私は陸上競技が好きで
最近は短距離選手の試合の動画を沢山観ている。
その中で印象的だった選手がいる、
見出しにあるジャスティン・ガトリン選手だ。
短距離選手の中では、恐らくウサインボルト選手の
次に世間的な知名度が高い選手ではないだろうか。
全盛期を過ぎたボルトのライバル選手として、
何度も激走を魅せてくれた人である。
彼が陸上競技界で知名度が高いのは
それだけではない、彼は過去に違法薬物の接種、
すなわちドーピングの陽性反応を2度も出している
のである。 2004年アテネオリンピックや
2005年世界陸上ヘルシンキの短距離種目でメダルを獲得していた彼だが、2006年、2度目のドーピング陽性反応が出た時に、4年間の出場停止を
言い渡されている。 停止処分が過ぎ、
彼はまた世界の舞台に戻ってきた。
2015年に全盛期を迎えた彼は、100mで歴代5位、
200mで歴代7位のタイムを出し(2022年現在)、
世界陸上やオリンピックでも、再びメダルを
獲得し続けた。その事に対して、陸上競技界では
否定的な意見もあった。 ドーピングの効果は
例え接種から長い期間があっても影響するという
見方があり、出場停止の後に復帰してはドーピングを一度もしていない選手とでは不公平さがあるとも
言われている。
他にも、2度目の陽性反応の際、当初は8年の
出場停止の予定だったが、今後ドーピング調査に
協力する事を条件に4年に短縮された経緯がある。
この事に関しては「せこい」などの意見があった。
このような理由で、彼は賛否両論の評価を世間から
受けた。そしてそれを象徴するかのような出来事
があった、2017年ロンドン世界陸上だ。
この試合はウサインボルトの引退試合でもあった、
復帰後、ボルトに負け続けていたガトリンだが、
最後にボルトを破り金メダルを獲得した。
しかし場内からはガトリンに対してのブーイングが
彼の入場、選手紹介、ゴール後に巻き起こった。
イギリスの人達はドーピングに対して厳しいらしく
過去に陽性反応が2度も出たガトリンが、
長年のスターであり最速男であったボルトの
最後の試合に勝つのが納得出来なかったのだろう。
私はその様子が酷く印象に残った。
彼はドーピング陽性反応という罪を犯し、
出場停止という罰を受けた。その罰はもう
終わっているはずなのに、何故そこまで
部外者に非難されなければならないのかと、
彼と同じように、陽性反応が出て停止処分を受け、
復帰した陸上選手は大勢いる。ブーイングが起きた試合にも、ガトリンと同じ様に過去陽性反応が出た選手も一緒に走っていた。なのに何故彼だけに
そのような対応をするのか、ガトリンは、
故意のドーピングを否定していた。
実際、風邪薬や興奮剤など、違法ではない薬でも
陽性反応が出たりする事がある。勿論口だけならば
何とでも言えるが、もし彼の証言を
事実とするならば、
わざとではない事で、責められている様が
酷く可哀想に思えた。
彼は親日家であり、日本の試合に何度も来て
日本の選手とも何度も競い合ったり、
時には日本のバラエティ番組に出てくれる事も
あった。
故に日本では比較的彼に対して好意的な
人が多いが、それでもインターネットなどで
彼に否定的な意見や批判する人は一定数いる。
彼は年齢の影響で、2021年に引退をしていて、
その際に彼の競技人生を纏めた動画が、
現在の私に強い影響を残した。
その件から、私は最近気になっている事があった。
「日本は犯罪者に優しい」そのような意見を
インターネットで見かけた事があった。
確かに法律だけ見ればそうかもしれない。
しかし実際はどうか、 前科を持った者は
就職は絶望的であるし、罪を犯した事が知られれば
一生陰で悪く言われる事になる。
「一度悪い事をすれば、次もするに決まってる」
「犯罪者は更生なんてしなくていいし出来ないから
一生地獄を見て欲しい」このような意見も
インターネットでよく見かける。
このように私は、現代の日本の罪を犯した者への
見方について些か疑問に思った。
罪を犯した者には罰がくだり、そしてその後にも
責任を取らなければいけないと私は考えている。
逆に言えば、罰をしっかりと受け、責任をきっちりと果たそうとしているならば、第三者がそれ以上
悪く言う必要性はないのではないかとも考えた。
ガトリン選手は、罪を犯し罰を受けた。
そしてその後も、選手として走り続けた。
私にとってその走りは、罪を犯した事を
しっかり反省している様を伝えるための贖罪の
行動に思えた。
ボルトのライバルとして世界短距離界を
盛り上げ、35歳という年齢を超えても世界大会で
メダルを獲得し続けたガトリン、
私もドーピングは肯定してはいけないとは思う。 しかしその功績は
「過去にドーピングしたから一切評価しない」
などの意見は間違っているし
あまりにも酷いと感じた。
ガトリンは選手として若い頃には、
挑発的な言動など、
生意気と言われる事もあったという。
しかし、晩年は選手として誠実な姿勢を見せるなど
変わる事ができた。 だから罪を犯した者は
変われないという意見は間違いであると思う。
罪の被害者などの気持ちを考えると、確かに
加害者に対して悪いイメージを持つのは当然だ。
しかし、罰をしっかりと受け、その後も被害者や
関係者などに対してしっかり贖罪をして
責任を取ろうという姿勢を見せ、それを実行できた
ならば、それ以上咎める必要はないのではないかと
思った。
だが、罪を犯した者が更生した場合に過剰に
持ち上げたりするのも間違っていると考えた。
「昔は凄い悪い奴だったのによく変われたなー
凄い偉いよ」などの発言を、現実でも
創作物でも聞くことがあると思う。
勿論、家庭環境などの問題で悪い人間にならざるを
得ない場合もある。それでも、何も悪い事をしていない人に迷惑をかけたりなどの行為をして良い理由にはならない。なので、一度も道を間違わず、
大した功績を残さずとも、堅実に生きている人間の
方が偉いと感じるというのも私の意見だ。
その点で言えば、ウサインボルト選手は
一度も陽性反応を出さず、世界最速の男として
勝ち続けた。なので、ガトリン選手よりも
圧倒的に高い評価を個人的にはしている。
「罪を犯してしまう人間はいる。
その時大事なのは、しっかりと罰を受ける事。
そしてしっかり責任を取る姿勢を見せ、
それを堅実に実行する事。
それが出来たならば、第三者が加害者を許す選択も
必要なのではないか。」
これが私の今回の結論である。
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