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【1982】化石燃料に過度に依存しているという危険な状態を脱して、エネルギー形態は極端なほど多様化する。

【1982年の卒論回顧】代替エネルギー開発におけるソフト・エネルギー・パス理論の有効性(17)
 
(93頁)
 
第5章 ソフト・エネルギー・パス導入の可能性
 
 1 ソフト・エネルギー・パスの評価すべき点
 
 石油ショックによってエネルギー危機が起き、「現在のエネルギー体系は、ハード・エネルギー・パスによるもので、再生不可能な資源を前提にしている。エネルギー源は高度に集中化した有限の鉱床からから、同じく集中化した金のかかる技術によって掘り出されている。その種類は限られていて、採掘方法も、採掘場所も、限定されている。」と考えがちで、さらには、燃料の供給量に左右されている。これは極めてハード・エネルギー・パス的な発想である。
 
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 しかし、ソフト・エネルギー・パスは、量の問題ばかりでなく、エネルギー体系の構造も問題にする。
 
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 必要とされるエネルギーは、一定量のエネルギーではなく、いま、必要とされているのは、もっと多様な形で、さまざまな場所(あるいは変化する地点)で、1年をとおしてさまざまな時刻に、思いもよらなぬ目的のために入手できるエネルギーである。
 このため、新しいエネルギーの探求は、巨額の金と想像力を駆使して急速に進められているが、その結果、多くの驚異的な可能性がつぎつぎと検討されるようになったばかりでなく、多くの人びとがエネルギー探求に熱中するようになり、一部のテクノクラートによって供給されていたものが、自らの手でエネルギーを生産し得る可能性が出てきた。
 
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 つまり、限られた生産方法と化石燃料に過度に依存しているという危険な状態を脱して、エネルギー形態は極端なほど多様化する。
 さらに、ソフト・エネルギー、太陽、風力、波力などの自然エネルギーは、原子力、石炭などのハード・エネルギーと違って生態系になじむソフトで枯渇しないクリーンエネルギーであるので、人間が、それにより、むしばまれることはない。
 
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 ただし、ここで、気を付けなければならないことは、このソフト・エネルギー・パスはあまりにも素朴で、経済観念に乏しく、空想的な技術に目がくらんでいると考えてはならない。
 ソフト・エネルギー・パスは、また、エネルギーの需要量をかえりみず、その供給量に左右されるハード・エネルギー・パスに再考察を促し、省エネルギー、補足的なエネルギーの開発を考えさせ、エネルギーの有効的利用へ人々を向けさせようとしている。
 
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 さらには、ソフト・エネルギー・パスは、生態系に決定的なダメージを与えるハード・エネルギーの利用方法を改めさせ、エネルギーをもっとクリーンに利用する方法を検討するようにと暗に示している。
 ソフト・エネルギー・パスをとるにこしたことはないが、もし、このままハード・エネルギー・パスをとるにしても、それが持つ悪い体質を改善する一考察を与えることは間違いないはずである。
 
(つづく)マガジン「ソフト・エネルギー・パス理論の有効性」に編綴

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