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【1982】原子力エネルギーは、核兵器として利用することができる。

【1982年の卒論回顧】代替エネルギー開発におけるソフト・エネルギー・パス理論の有効性(12)

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2 燃料資源利用上の障害
 
 原子力発電所の燃料はウランであるが、天然のウランの中には、核分裂するウラン235が0.7%(注9)しかなく、残りの99.3%(注10)は核分裂しないウラン238である。軽水炉ではウラン235を2%から4%に濃縮して燃料にしている。原子炉の中でウランの核分裂が起こると、燃料棒の中に高い放射能をもつ核分裂生成分が発生する。この生成物の処理が問題になる。さらに、原子力エネルギーは、大きな利益をもたらすが、核兵器として利用することができる。
 
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 つまり、原子力については、現在、安全性が問われ、地元住民等の反対をまぬがれることは不可能であるため、さらに、安全確保に万全を期さねばならないし、環境に対しての影響も十分に考慮しなければならない。
 また、原子力によるエネルギー供給の形態は電気でしか成立しないので、エネルギー供給の中央集権度が著しく高くなり、事故発生による停電等の被害は深刻なものとなる。
 
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 石炭については、石炭燃焼によって発生する多量の排煙・灰の処理が環境上大きな問題になってくる。
 つまり、石炭は燃焼の際、石油と比較して一般的に硫黄酸化物・窒素酸化物の発生量が多くなるほか、多量のばいじんを発生するため、大気汚染防止の観点から、これらの対策が必要である。
 
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 石炭利用に当たってさらに大きな問題は、石炭燃焼後の灰処理対策である。100万キロワットの石炭火力発電所の場合、1年間で30万トンから50万トン(注12)の灰が発生する。
 LNGは、天然ガスの主成分であるメタンが、摂氏0度1気圧のもとではガス状態にあるが、これを1気圧のもとで摂氏マイナス162度(注13)まで冷却すると液体となり、体積が600分の1という小容量となる性質を利用して天然ガスを冷却液化し、タンカーによる輸送を行うものである。
 
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 従って、LNGの開発、導入には、石油などに比べ種々の制約がある。まず、LNGは摂氏マイナス162度(注15)という極低温の液体であるため、LNGの液化基地、受入基地の建設、LNGタンカーの建設等には、特殊で高度な技術を必要とする。さらに、LNGをタンカーで運ぶことには非常な危険を伴うため海上での輸送は100%以上の安全性が必要である。
 
(つづく)マガジン「ソフト・エネルギー・パス理論の有効性」に編綴

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