見出し画像

2. 修飾語と読点効果

ライティングの基本として特に重要なことは「正確さ」と「明快さ」であって,それらは表裏一体的な関係にありますから,これら二つに関連する具体的なポイントについて解説していきたいと思います。
今回は,前回「ライティングの基本とは何か」と題して述べた「語順と係り受け」に関連している「修飾語と読点効果」についてです。

修飾語は置いた文中の位置によって,その文意をあいまいにしたり,思惑とは違う文意になったりするので,注意が必要です。
基本的ルールとして,修飾語は,形容詞の場合は修飾する名詞の直前に,副詞の場合は修飾する動詞や形容詞の直前に置く必要があります。また,副詞は文全体を修飾することもありますから,その場合は文頭に置きます。

例を挙げて話を進めましょう。
最近,DVDドライブ付きノートパソコンで最新式のものが登場したとします。このことを紹介するにあたり,口頭であれば最新式がDVDドライブでもノートパソコンでも「最新式のDVDドライブを搭載したノートパソコン」という表現をするケースが多いと思います。それは「最新式」が特徴だから,それを強調したい気持ちが先走り,最初に口に出てしまう結果だと思います。そして,あいまいな言い方をしてしまっても,直ぐに補足したり,訂正したりできますから,口頭の場合は大きな問題にはなりません。しかし,それを文字で表現した場合は,表記する言葉の順序によって違いがはっきり表れますし,それを容易に訂正することもできません。

最新式のDVDドライブを搭載したノートパソコン

これは,DVDドライブが最新式で,それを搭載したノートパソコンということになります。一方,以下のように表記した場合はどうでしょうか。

DVDドライブを搭載した最新式のノートパソコン

これは,ノートパソコンが最新式であって,DVDドライブは最新式ではなく従来品を用いているということになるでしょう。
さて,ここで読点を用いて以下のように表記するとどうでしょう。

最新式の,DVDドライブを搭載したノートパソコン

読点を打つと,直後の名詞ではなく,その次の名詞を修飾するという文法的ルールが働いて,最新式なのはノートパソコンということになります。
このような読点効果は,頻繁に用いることはないでしょうが,2つある修飾語句のうち一つが長い場合には効果的です。例を挙げますので,順をおってみていきましょう。

DVDドライブ付きの超高速で処理能力が高く持ち運びがしやすいように小型化したノートパソコン

「DVDドライブ付きの」と「ノートパソコン」の間に長い修飾語句が割り込んでいて,その2つの語句が遠く離れてしまうので「DVDドライブ付きのノートパソコン」という語句の係りが少しわかり難くなっています。だからといって,ここで単に,これらの修飾語句を入れ替えるとどうでしょう。

超高速で処理能力が高く持ち運びがしやすいように小型化したDVDドライブ付きのノートパソコン

これは,「超高速で処理能力が高く持ち運びがしやすいように小型化した」のはDVDドライブということになり「ノートパソコン」ではなくなります。ここで読点効果を利用し「小型化した」と「DVDドライブ」の間に読点を打つと意味は変わります。

超高速で処理能力が高く持ち運びがしやすいように小型化した,DVDドライブ付きのノートパソコン

これはノートパソコンが「超高速で処理能力が高く持ち運びがしやすいように小型化した」ものということになり,当初の内容を正確に伝えていることになります。
このような読点効果を活用すれば,記述や表現の幅を広げることができます。

次回は,述部をあいまいにする「れる,られる」表現について解説する予定です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?