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アトピー性皮膚炎,新規治療薬が続々

アトピー性皮膚炎は,かゆみを伴う湿疹を主病変とする疾患で,増悪と軽快を繰り返します。乳幼児期に発症し,小児期に寛解するケースと再発を繰り返して成人期まで持続するケースがあります。また,稀に思春期から成人期に発症することもあります。
アトピー性皮膚炎の主な症状は「かゆみ」で,強いかゆみが生じた患部(湿疹部)を掻くことで湿疹が悪化します。湿疹はまず赤み(紅斑)から始まり,小さなブツブツ(丘疹)や水疱,ただれなどを経て,かさぶた(痂皮)を生じるとう過程を繰り返します(図-1)。

図-1

アトピー性皮膚炎の発症には遺伝的素因とともに様々な要因や悪化因子が関与するため,その原因が個々人によって異なることが多く,その治療法は多様です。治療法は大きく分けて悪化因子の除去,スキンケア,および薬物療法があります。物療法では,従来からステロイド外用剤やタクロリムス軟膏を用いていましたが,2020年にデルゴシチニブという新たな薬が加わり,これら3種類をいかに選択し組み合わせるかが治療の基本になっているようです(アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2021)。デルゴシチニブは種々のサイトカインのシグナル伝達に重要な役割をたしているJAK-STATシグナル伝達系のJAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害し効果を発揮する,ステロイドやタクロリムスとは異なる新たな作用メカニズムの薬です。

さて,デルゴシチニブは軟膏ですが,2020年末から2021年にかけて,さらに新しいJAK阻害薬として,バリシチニブ,ウパダシチニブ,およびアブロシチニブが登場しました。バリシチニブは,デルゴシチニブが全種類のJAK,すなわちJAK1,JAK2,JAK3,Tyk2の4種類に作用するのに対して,アトピー性皮膚炎の免疫炎症過程に大きく関与しているJAK1とJAK2に選択的に作用します。さらに,ウパダシチニブとアブロシチニブはJAK1に選択的に作用します。ただ,これらの薬は経口剤で,今のところ予測できない副作用の発現を懸念し,その使い方に関するガイドラインを添えて,臨床での使用を制限しているようです。

このようなJAK阻害剤以外にも,インターロイキン受容体に対するモノクローナル抗体やフォスフォジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤など新しい作用メカニズムの薬も登場しており,アトピー性皮膚炎に対する薬物治療の選択肢が増々豊富になってきています。

最近,佐賀大学と富山大学のグループは,生体内物質であるペリオスチンがアトピー性皮膚炎の強いかゆみを引き起こす原因になっていることを報告しました。そして,2024年4月からその阻害剤の臨床試験を行う計画を立てているようです。数年後には,また一つ新しい作用メカニズムの治療薬が誕生するかもしれません。
(これは,メディカライト・ジャパンのホームページに掲載した記事です。ホームページでは,からだ,くすり,健康などに関する記事を掲載中です。ご興味のあるかたは,是非ご覧ください。www.medicalite.co.jp)

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