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安い部屋とピンポン玉(禍話リライト)
「そういうの」って、こちらがなかなか相手をしないと、もっと嫌な感じで存在をアピールしてくることがあるんですよね。
私の知り合いの方がね、親戚の家に居候っていうのかな。一部屋借りて住まわせてもらってたことがあるんですって。
親戚の家とは言っても、ちゃんと家賃払ってて。
でもそれがすごく安かったって言うんですよ。
2、3万とかじゃなくて、数千円っていうレベルで。
空き部屋を使わせてもらってて、そこに元から綺麗なベッドが置いてあって。
それ使っていいよって言われてたから、ご厚意に甘えて使わせてもらってたらしいんです。
あるときそのベッドで寝てたら、なんか気持ち悪いというか、
吐き気じゃないんですけど、妙に落ち着かないような居心地の悪さを感じたらしくて。
で、「そういえばベッドの下見たことないな」って思ったんですって。
どうしてそう思ったのかはわからないんだけど、何の気なしに下を覗いてみたんだそうです。
そしたらピンポン玉みたいなのが落ちてて。
それがコロコロ……って奥のほうに転がっていったんですって。
触ってもないのになんで転がったんだろう、って気にはなったんですけど、
ベッドの下ちょっと埃っぽかったし、その人、気管支が悪かったからそれ以上はやめておこうと思って。
まあ、どこかから風でも吹いたのかな、なんて思って気にしてなかったんですって。
それから2、3日経った日の夜、ふっとまたベッドの下のことを思い出したらしくて。
ベッドの脇にしゃがんで、懐中電灯で奥を照らしてみたんだそうです。
やっぱり奥にはピンポン玉みたいなものが転がっていて。
改めて見たところ、風が吹いてきそうな隙間とかはなさそうだなぁ、と思ったんですって。
室内ですから、当たり前ですけど。
おかしいなぁって思いながらもそのまま就寝して。
そしたら、夜中にまた例の気持ち悪さで目を覚ましたんだそうです。
何だろう、って不快な気持ちで起きて。
で、変な話なんですけど、急にピンポン玉の位置を確認してみようと思ったそうなんです。
なんでかわかんないけど、「あれがもし動いてたら嫌だな」って。
で、起き上がってベッドの端に目を遣ったら、次の瞬間
コロコロコロ……
って出てきたんですよ。ベッドの下から。ピンポン玉が。
うわっ!って思って、
転がるピンポン玉の上を飛び越えて、走って部屋を飛び出して。
状況だけ見たら、ただベッドの下からピンポン玉が出てきただけなんですけど、
どうしてそんなにビビったかって言うと、ピンポン玉が転がり出てくる直前に
「コンッ」
って、何かを爪で弾くような音を聞いたって言うんですよ。
それで慌てて部屋を飛び出して。
そしたら、急な物音に家の人が起きてきたらしくて。
「どうした?」って聞かれたんですけど、その人も色々聞きたいことが溢れてきちゃって、軽くパニックになりながら
「な、何でこんなに安いんですか!?」
ってストレートに聞いちゃったそうなんです。
そう言った瞬間、その人の背後から
コン……、コン……、コン……、
ってピンポン玉が。
階段をゆっくり落ちて行って。
そのまま1階のガラス戸に当たって、コロコロ……って静かに転がったピンポン玉に、
なにか名前みたいなのが書いてあって。
それ見た瞬間に、「あっ、だめだこれ名前だ」って目瞑っちゃったらしいんですけど、その人。
親戚はそれを見て一言、
「こういうことだから、安いんよ」
とだけ言ったそうです。
たとえちょっとしたことでも、それ相応にリアクションしておいたほうが良いんですね。「そういうの」に接したときは。
この記事は、禍話アンリミテッド 第十八夜(2023/05/20配信)より「安い部屋とピンポン玉」(29:16頃~)を再構成・加筆したものです。
記事タイトルはwiki(https://wikiwiki.jp/magabanasi/)からお借りしています。
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