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番組自体が「悪魔のささやき」だったNHK番組「危険なささやき」

俳優の田畑智子さんが統一教会(世界平和統一家庭連合)の元信者、川上陽子(仮名)を演ずるNHKの再現ドラマ風の番組「危険なささやき」が9月23日放送された。

「危険なささやき」とは

番組には、社会心理学者と称する西田公昭氏と統一教会関係の裁判を多く扱ってきた郷路征記弁護士が登場し「危険なささやき」について解説する。

まとめると、

  1. 心理的プッシュを与える言葉が「危険なささやき」である。

  2. 情報を隠して決定させる事で自主的に選んだと思わせる。

  3. 社会的遮断をすることで、おかしい事でも受け入れてしまうようにする。

上記の解説を基に、陽子に起きたことを番組とは少し違う視点で観てみよう。そうすると、実は、番組では隠されていた「ささやき」こそが、陽子を今も苦しめていたことが分かる。

番組で隠されていた真実とは

1987年に統一教会に入信した陽子は、1992年、合同結婚式に参加し、おじに結婚の報告をしに行った。

おじに反対されるかもしれない、と思っていた陽子におじは「素晴らしい教義なら教えてほしい」と応えた。

この一言が、おじの理解を得たいと思っていた陽子に強い心理的プッシュを与えた「危険なささやき」の一つだ。

この「ささやき」は、教義を学びたいからではなく、キリスト教牧師と陽子を会わせ、陽子を統一教会から脱会されるための言葉だったようだ。

つまり、情報を隠して教育を受けさせ、脱会という決定を陽子が自主的に選んだと思わせるという、番組で紹介された手法に当たる。

続いて、番組で解説された、さらに人を騙す手法が実行される。社会的遮断された状況での教育だ。それにより陽子は、当初はおかしいと思ったことでも受け入れるようになり、最終的に統一教会を脱会することになったのだろう。

隠されていた「拉致監禁ビジネス」

ところで、陽子の件は、統一教会の信者を拉致監禁し、強制脱会することを請け負っている人たちによってマニュアル化された事例と酷似している。

統一教会信徒に対する「拉致監禁・強制脱会」とは、統一教会の信徒を監禁して、強制的に脱会させることだ。それによって統一教会に反対する専門家(脱会屋)などが、多額の報酬を手にする闇ビジネスになっているとの指摘がある。

この脱会ビジネスによってもたらされるのは、脱会屋らの金銭的利益だけではない。1980年代から90年代初頭にかけて、急速に信徒数を増やした統一教会に対して、信者不足に悩んでいた伝統的キリスト教会にとっては、信者を増やす絶好の機会にもなったという。脱会させられた統一教会信者が、脱会させた牧師のキリスト教会の信徒になることが結構あるからだ。

実際、教会の信徒が、統一教会元信者ばかりのキリスト教会もある。統一教会信者を強制脱会させることは、多額の金銭と信徒を獲得する一石二鳥の闇ビジネスということだ。

人生を狂わした「ささやき」の真実

あらためて陽子のケースに戻ろう。

番組では、どれだけの期間にわたって陽子が、牧師から社会的遮断された状況で説得を受けていたかについての情報は隠されていた。上記の拉致監禁闇ビジネスでは、何年も長期にわたって監禁されたケースが多くある。陽子のケースもかなり長期にわたっていたのかもしれない。

さらに番組によれば、陽子は今も苦しんでいるという。それは「犯罪者だったんだ私は」という心の傷を陽子が負ってしまったからだ。

ところで、この心の傷は、陽子が統一教会の信者だった時にしたこととは無関係なのは明らかだ。陽子は統一教会信者だった時に、何も犯罪者のようなことをしていなかったからだ。にもかかわらず、なぜ陽子は自分を犯罪者と思うようになったのだろうか。

そこにも番組では隠されていた牧師や脱会屋による「悪魔のささやき」があったのだと思われる。犯罪者ではない、陽子を犯罪者と思い込ませる、まさに「悪魔のささやき」だ。

陽子は自分の意思と判断で提訴したのか?

もう一点、この番組には、普通ならおかしいと気づく不自然な点がある。

1992年に牧師から説得を受け、統一教会を辞めた陽子が、それから12年も経ってから、なぜ「統一教会の勧誘が違法だと提訴」したのか、ということだ。

この12年の間に陽子に何があったのか?陽子は自分の頭で考え、自分の意思で提訴したのだろうか? 情報が隠された中で、陽子は自分でしたと思わされて、提訴せざるを得なかったのではないか?

もし、この番組で隠されていた事実が明らかにされた時、視聴者の判断は、この番組で作られたイメージとは真逆になるかもしれない。

「危険なささやき」をしたのは、実は、陽子を統一教会から脱会させた人たちではないか。陽子の心に深い傷を植え付けたのも、実は、陽子を脱会させた人たちではないか、という可能性だ。

提訴までの空白の隠された12年間は、脱会屋の関係者らが統一教会を提訴するために、陽子を利用し、犯罪者だと思い込ませるために必要な期間だった可能性は高い。

陽子の「人生を狂わしたささやき」とは何だったのか。その真実を判断するには、この番組で隠されていた事実が明らかにされる必要がある。その時、その「危険なささやき」は、この番組のイメージとは全く違う、まさに思いもよらぬ「悪魔のささやき」だったのかもしれない。

ひいては、この番組自体が脱会屋関係者に利用され、情報を隠して視聴者を操る「危険なささやき」そのものだったと言えそうだ。

このような一方的な情報のみで制作された危険な番組が、レギュラー番組の道を行くことはあり得ない。公共放送としての基本を無視して制作された番組だからだ。

読んでくださり、ありがとうございました。

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