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会話泥棒について

会話をしていると全部自分の話にしてしまう「会話泥棒」な人っているなと思う。

「ストレス性の胃炎って言われたんですよ」
と言えば…
「私も!5年くらい前から胃炎が続いてて離婚のストレスからだと思う。あの時は大変でね、元旦那が絶対離婚しないって大暴れして……(割愛)」
そこから離婚の修羅場と極悪非道な元旦那の話が延々続く。

こんな感じで会話はどんどん盗まれていく。
一人ではない、私の周囲には何人か心当たりがある。

彼女達のオンステージ。
情感たっぷりに語り続ける。

私はこういう時の対応は習得済だ。
ひたすらフラワーロック化する。
彼女達の話に合わせて首を上下左右に動かし、手振り素振りを付け加える。
感嘆もお手のものだ。

彼女達は決して悪人ではない。
空気をしっかり読む常識人だ。
そんな彼女達を批判したい訳じゃない。

ただ、どうして自分自身の話を延々と長々話せるのだろうか?

基本的に人は自分の事を話したい生き物だと思う。
私自身ももろにそうだ。 
むちゃくちゃ自分の話がしたい。
自分の話だけしたい。
…でも自分の話をするのが怖い。
実名で実体を曝け出して自分の事を話すなんて自傷行為だ。
嫌われたり拒否されるのが怖い。
自分の話をするのはリスクが高い。
特に現在進行形で関係のある人には特に。

でも彼女達はハツラツと自分の話をする。
スターでもなく、高い話術テクニックを持っている訳でもなく、内容に突拍子もないハプニングやイベントが入っている訳でもなく、かと言って聞いた人間がすごく得するご褒美がある訳でもない。
そして、聞いてる人間は無償だ。
一緒に食べてるランチも各自自腹だ。

何故怖くないのだろう。
何にも怯える事なく話せるのだろう。

でも、ふと気付いた。
爆笑して聞いてるやん、わし!

申し訳ないくらい「おもんなー」って聞いてるくせに机叩いて突っ伏しながら腹抱えて笑ってる。
話より相手のほうれい線とかにじんだマスカラとか口紅がついた前歯の方が気になってるのクセに。
ホクロの割れ目から出てくるオバチャマの妄想してるクセに。
オバチャマ、黒柳徹子と取っ組み合いのケンカしてた。

すごい頷いてる。
話なんか全然聞いてなくて、「この人のオーラ透視してみよー」って訳わからんチャレンジしてるクセに。

生きていく中で習得した技術以上のものを身に着けた。
浮かずに弾かれずに生きていく為に必死だった。
過剰適応と言っても過言ではないと思う。

彼女達は「すごい楽しかった!」「むっちゃ話聞いてくれて、ありがとー!」「なんか癒やされた」と口々に言ってくれる。

決して苦でない。
これが私の生きる為の戦略だから。
相手がこれで満足しているならウィン・ウィンだ。 
「会話泥棒」なんて言ってしまったが、相手が自分の話をさも楽しげに聞いていたら泥棒なんて考えないだろう。プレゼントだ。ギフトだ。彼女達を加害者の様に扱ってしまった。

人の内面なんて全く推し量れない。
彼女達の本心も分からない。
結局はお互いの自己満足だなぁと思う。



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