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42年目の和菓子屋さんの閉店と、ものを買うということ

昨秋、大好きだった和菓子屋さん・H屋さんが閉店した。定休日に貼り紙が出て、そのまま店仕舞いされた。大変驚き、心のどこかでいつでもそこにあってくれる、と考えていた脳天気っぷりを悔やんだ。自分の実家がそうであったように、このご時世、個人商店が店を開き続ける大変さは身に染みて知っていたはずなのに。



H屋さん、42年の間、お店を続けて来られましたこと、本当におつかれさまでした。真心こもった美味しい和菓子をありがとうございました。

カステラがちょうど焼き上がった時にお店に伺うと、甘く香ばしい香りがお店に広がっていて、わあラッキー!と嬉しくなったものでした。そのあと、ショーケースに置かれた黄金色に輝くカステラの端正な美しさにも魅了され、味はもちろん、カステラがこんなに美しく幸せな気持ちになるものなのだなあ、と初めて思いました。

天狗さんの絵柄がカッコいいどら焼きは今年5才の子どもも大好きで、おそらく初めて食べた和菓子。ツヤツヤした小豆あんとふっくら生地を口いっぱいに頬張って「美味しいねえ!」と家族で笑い合いました。

ご店主の研ぎ澄まされた技と豊かな感性が光る季節の練り切りはとても華麗で四季折々の日本の美が感じられ、見惚れていました。これほど美しい練り切りを作れるお方はそうおられないと常々思っておりました。ショーケース越しに見惚れるだけでなく、もっと早く、素晴らしい練り切りだとお伝えできれば良かったと、己ののんびりさが悔やまれます。

優しく上品な甘さのきんつば、吹雪まんじゅう、口当たり柔らかな羽二重餅は、上質な素材を惜しげなく使われていることが感じられる上品な甘さで、食べると身体が元気になるような心持ちになりました。

大好きなのが、酒まんじゅう。頬張ったときむっちりとした口当たり、豊かな香り、優しい甘さが口いっぱいに広がり、とても幸せな気持ちになりました。お店先に黄色い「酒まんじゅう」の旗が出ると、夏が来たなあ、と思っておりました。涼味・みずようかんもなめらかな口当たりで、美味しかったです。

それから、H屋さんの芋ようかんは今まで食べた中で1番美味しい芋ようかんだと思っています。

H屋さんの和菓子が1週間の励みでした。ご店主やお嬢さまと「暑い日が続きますね」「日が暮れるのが早くなりましたね」などお話をして、丁寧に包んでいただいた和菓子を胸に抱いて帰るのが楽しみでした。時折り「お子さんに…」とカステラの切れ端をいただき、お心配りがとても嬉しかった。その節は本当にありがとうございました。

きっと添加物など不要なものは使わずに、上質な素材で手間ひまかけて丹念に作られたからこその、味わい、香りなのだと思います。

原料の価格高騰など色々大変なこともあったと素人ながら推測します。そんな中でも、非常に安価で、買い求めやすい価格で和菓子を作り続けておられたこと、本当にありがたく、頭が下がる思いです。

心と身体が元気になる和菓子を、42年もの間作り続けて下さって、本当にありがとうございます。

ご店主、ご家族みなさまが健やかに穏やかにお過ごしになられますことを心よりお祈り申し上げます。くれぐれお身体を大切にご自愛ください。新たな門出を心より応援しております。

42年間、本当におつかれさまでした。
美味しい和菓子を作り続けて下さり、誠にありがとうございました。




お菓子屋さん、本屋さん、お惣菜屋さん、お魚屋さん、お肉屋さん、八百屋さん、お花屋さん、家具屋さん…。変わり続ける時流の中で、昔ながらの個人商店が、毎日お店を開き続けることの大変さ。

買って応援、という言葉を最近よく聞くが、どこのお店で、どんなものをどのように買い求めるかは自分の意思表示でもある。私は誠実な商いをしているみなさん、頑張っている作り手のみなさんを応援して、未来の世代に繋げていきたい。2024年が少しでも良い年になるよう、これからも出来るだけそうしたお店に足を運ぼうと思う。

また、ものを買うという行為のほかに、ものづくりの未来に自分が繋いでいけることを探して実行していきたい。

#ナイショの抱負

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