見出し画像

すずちゃん


一昨年の秋の終わりに、うちの庭にボロボロの大きめな首輪に小さな鈴を3つ付けた小さな猫が現れた。
はじめは警戒していたけれど、余程お腹が空いていたのか、餌を出した所、すぐに寄って来た。
それから、ずっと、この小さな猫ちゃんは庭に居つくようになった。
かなり人懐っこく、人間が大好きなようで、玄関を出ると走って寄って来た。
しゃがんでいると、膝の上に乗って来てしまう。
子供が名前をすずちゃんと名付た。
名前は付けてあげたものの、うちはペット不可の物件の為、飼ってあげる事が出来ない。
けれど、寒い冬はもうそこまで近づいていた。
以前、飼い猫だった猫が野良猫になり、生き延びられる事は難しいという話しを聞いたことがある。
目の前にいるこの可愛くて小さな命を消してはいけないと思った。何とかせねば。
夫に相談すると、すぐにポスターをPCで作ってくれた。
極めつけのコメントを入れてくれた。
「お外は寒いニャ」である。
のちに、この一言により、もらい手が現れることになる。
ポスターを色々な人へ配った。
ご近所さんや酒屋さんなど、貼っていただくようにお願いに回った。
町内会の会長さんの所へお願いに行き、町の掲示板にも貼っていただくようお願いした。
やれる事は全てしよう。
行動の甲斐あって、ポスターが下校帰りの女の子
の目にとまり、そこのお宅で飼っていただけることになった。偶然にも、上のお子さんがうちの子供と同級生だった。 
飼う決めてを聞いてみた。
すると、なんと、うちの夫が考えついた
「お外は寒いニャ」が決めてだったとのこと。
これから寒くなるのに、外では寒くて可哀想だから、飼ってあげたいと思ってくれたようだ。
でかした、夫よ!!
先住猫が一匹いるが、その子がゆったりした性格で、お試し期間も仲が良く、これならば大丈夫そうとの事で、飼っていただけることになった。
なんて素敵な事が起きたのだろうか。
こんなにも早く、引き取り手が現れるなんて。
寒くなる冬前に良いお宅に、すずちゃんをお渡しすることが出来る。
すずちゃんの命を消すことなく、飼っていただけるお宅へお渡し出来て本当に良かった。
命を繋げられて良かった。
すずちゃん、幸せになってね。
家族全員、同じ気持ちで見送った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?