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指導主事は”タテ社会?”小学校の先生が指導主事になって驚いた教育行政の仕組み

私が小学校教員から指導主事になった4年前。
まず驚いたことが業務の進め方における「タテの関係」でした。
ところによって違いはありますが、多くの教育委員会には「課長」がいます。他にも「課長補佐」「主査」「主幹」「局長」など様々な役職があり、それぞれの役職がタテにつながっています。

会社であれば「課長」、「社長」といった”役職”があります。
最近だとCEOだったりCFOだったり横文字の役職もあるようです。
でも、学校には「社長」はもちろん「課長」と呼ばれる人もいません。
もちろん横文字の役職が付く人がいるなんて話は聞いたことがありません。

一般的によく知られている学校の”役職”としては「校長」「教頭(副校長)」などがありますが、いわゆる会社の「社長」とは若干ニュアンスが違うことは、誰もが何となく感じているのではないでしょうか。

今回は小学校の先生から”指導主事”として教育委員会に入った私がとにかく驚いた教育行政の仕組みの大変さと面白さをお伝えします。

1.指導主事になって1週間。指導主事の「タテ社会」に驚きの連続!
2.指導主事も役職が上がると偉くなる?
3.学校と教育行政をつなぐ指導主事になるために考えていること

1.指導主事になって1週間。指導主事の「タテ社会」に驚きの連続!

数年前の4月、指導主事として初めての勤務日。
職場に行くと着任式があり、ひとまず自分の席へ。
私が指導主事として最初に勤めた勤務先は机の配置もどことなく職員室に似ていて、義務教育を担当する班、高等学校を担当する班、社会教育を担当する班、事務的なことを担当する係などが3~5人のグループに分かれていました。
まるで「学年団」みたいな感じ。

私の班ではいわゆる「教務主任/主幹教諭」的な立場として「主査」と呼ばれる役職がありました。
そして、班を見渡す位置にいわゆる「課長」がいて、いくつかの班を統括しています。
職員室でいえば管理職が座っている位置に「課長」がいるわけです。

こう書くと「タテ社会なんてホント?」と思われるかもしれませんが、
翌日から1週間で学校とは違う仕事の進め方がわかってきました。

まず、驚いたのが自分がこの書類を見て承認したことを示す「ハンコ」の数。
業務を進める上で、このハンコによる承認を上席(立場が上の人)から1人ずつもらう必要があります。
この「1人ずつ」というのが”くせ者”で、1つ立場が上の上席にミスを指摘されて直してハンコをいただいた書類を、次の上席に見せたら違うミスが発覚して再度やり直しということはザラでした。

行政的な文書(通知や事務連絡)や調査の書類などにはきちんとした「書式」があります。
出す人、出す部署によって書き方が全く異なる書類が来たら、学校現場、特に教頭先生が大変です。
今では慣れましたが、指導主事になって最初はこの「書式」どおりに発出する文書をつくるということが本当に大変でした。

でも、小学校の先生の経験しかない私が作成するメモみたいな文書で
生徒指導や調査に関する大事な大事な連絡や質問の回答が来たら、大きなトラブルにつながってしまうこともあります。
教育行政の世界では、正確で必要なことを確実に伝達するため、文書や電話連絡などで起こり得る人為的なミスを、「ハンコ」による複数回のチェックによってなるべく減らすよう努力しています。

2.指導主事も役職が上がると偉くなる?

今、指導主事になって4年目の私は、6人いる班の”上から2番目”の立場にいて「次席」と呼ばれています。私の上は班の「主査」で、私の下には「三席」「四席」「五席」「末席」の4人がいます。そして、「主査」の上には「課長」がいます。

教育委員会によって違うと思いますが、いわゆる指導主事は学校でいう「教諭」と同じ立場です。そして、指導主事を数年続けると、「主幹教諭」「指導教諭」などと同じ立場となっていきます。

では、主査は?
これも教育委員会によって異なると思いますが、指導主事を経てなった主査は、まず教頭や副校長と同じ立場になります。

しかし、ここでややこしいことが・・・。
実は、教育委員会には違うルートで主査と呼ばれる立場になる人もいます。学校から教育委員会に入り、指導主事を経て主査になる人と学校を経ずに最初から行政職として教育委員会に入り主査や課長になる人がいます。

教育委員会には様々な部署がありますが、大きくは「指導系」と「事務系」、「学校教育担当」と「事務方」などのように2つに分けられます。
指導主事だけではない、教育委員会全体のお仕事は今後のどこかで触れていきたいと思いますが、どちらからなった上の役職であっても、役職が上がったからといって偉くなるかといえば、そんなことはありません。少なくとも、教育委員会では役職が上になると、その分、視野を班から外へ広げなければいけなくなります。

指導主事は基本的に自分が所属する班内の仕事を中心に業務を進めていくことが大事です。その辺は「学級担任」に似ているかもしれません。

しかし、主査や課長は教育委員会内にある他の部署と連携した業務があるため、「主査どうし」「課長どうし」で協議しながら進めていくことが増えてきます。その上で、自分の属する班内の業務についても「ハンコ」を押す必要がある。

役職が上がること=自分の視野を広げることといえるのかもしれません。

3.学校と教育行政をつなぐ指導主事になるために考えていること

先述した「指導系」と「事務系」、「学校教育担当」と「事務方」という教育委員会で働く人の2つのルート。
私は、学校現場を経験したことがある人が教育行政の仕事に携わることの価値はすごく高いと思っています。

もちろん学校現場から指導主事になった最初のうちは、業務の進め方に戸惑うでしょうし、自分の仕事に精一杯で周りを見る余裕はないでしょう。
そんな状況でも、実際に現場で子どもたちとふれあって教育をしてきた経験というのは、教育委員会の業務を進める上で貴重です。

実は、指導主事は教育委員会内で他の部署の方から「〇〇先生」と呼ばれています。
「教育委員会でタテを知る”先生”」だからできること、これからもっと模索していきたいです。

おわりに

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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