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訪問してくる指導主事は教室の何を見ているのか 100校以上の学校訪問で感じたこと

学校に指導主事が来て授業を見られたこと、ありますか?
「学校計画訪問」「学校教育指導訪問」など自治体によって呼び名はちがいますが、多くの教育委員会で指導主事がこの仕事をしています。
私も指導主事になってからの3年間で延べ100校くらいの学校にお伺いして授業を見てきました。

本当だったら、何度もお伺いして「子どもがどう変わったか」について、実際に見て気が付いたことをお話しできたらベスト。
でも、1年間で何度も”要請”があってお伺いする学校もありますが、多くの学校は年に1回の訪問です。

指導主事は限られた時間の中で、何を見て、何を感じようとしているのか。
そして、先生方にどんなことを伝えようとしているのか。

「今の」私の考えをお伝えします。
なぜ、「今の」なのかは後で触れますね。

1.教室では「子どもの表情」を必ず見る
2.「割れ窓理論」は本当
3.どんなことを伝えたいのか

1.指導主事は「子どもの表情」を必ず見る

私が教室に入って、必ず見るのは「子どもの表情」です。
授業をまるっと1時間見る場合と1教室あたり5分~10分でさらっと見る場合がありますが、私はどちらの場合であっても、可能な限り「立ち位置」を子どもの表情が見える場所にします。

子どもの表情から読み取れることはたくさんあります。
初対面の私にものすごく興味津々な子、無表情の子、知らないスーツ着たおじさんが来ようと関係なく授業に集中している子・・・。
様々な子どもの表情から、いつもの授業に対するその子の気持ちの向き合い方や担任の先生との関係性を想像し、その学級が普段どんな様子であるかを探っています。

授業後、管理職との雑談で「A先生の学級、普段こんな感じじゃないですか?」と聞くことがあります。
意外と合っていることが多いのですが、外れる時も・・・。
外れる時は「いや、普段はすごくにぎやかな学級なんですよ。」「今日は緊張していましたね~。」ということがほとんどです。

いつもは教室にいない人がたくさん来たら、普段の教室の空気感が変わるのは当然。「教室全体がおとなしい」「教室全体がざわついてる」というのは、教室の様子を見る上であまり参考にしていません。

子どもの表情が学びに向かっているかということを1人1人の表情を読み取りながら考えています。

2.「割れ窓理論」”ものをかけるフック”が気になる私

あと、よく見ているのが「ものをかけるフック」です。
学校によっては、上着をかけるフックが教室の横についていたり、教材を入れておく袋が机の横のフックにかかっていたりします。
整理整頓されているかどうかだったら、教室の掲示物や担任の先生の机、子どもの道具を入れる棚も気になるところですが、その中でも私は「ものをかけるフック」を見ています。

フックにものをかけるというのは一番簡単な整理整頓の方法です。
整理整頓については得意な子もいれば苦手な子もいます。
私も小さい頃は本当に苦手でした。
机の中はいつもプリントが奥にあったり、お道具箱の中も大変なことになっていました。それでもフックに上着をかけたり机の横に巾着袋をかけたりするのに困ったことはありません。

みなさんは「割れ窓理論」はご存じでしょうか。
アメリカのジョージ・ケリングが考案した環境犯罪学上の理論ですが、以前から教育現場でも使われている言葉です。
よくないことが続くと、誰もそれを気にしなくなり、より状況が悪化する現象のことをいいます。

フックにものがかかっていない場合、本来かけられるはずのものは下に落ちています。見てすぐに直すことができることが放置されている学級はちょっと心配になります。
そうした学級は子どもの表情もどことなく不安げで不満げ。よくないことが放置されている状況は気になるサインの1つとして気にしています。

3.学校訪問で指導主事が伝えたいこと

学校訪問では多くの学級を見せていただきますが、その日の日程はきっちり決められているので、感じたことを限られた時間で伝えることはとても難しい。
本当だったら、1つ1つの教室、1人1人の先生に自分が感じたことを伝えられればいいのですが・・・。本当に心配だなぁと感じた学級については、こっそり管理職の方に「担任の先生をサポートして、よく子どもたちを見ててあげてくださいね」と伝えています。

やはり、学校で働く全ての先生方が生き生きと仕事をしてほしいし、全ての子どもたちが生き生きと学んでほしい。
そのために、私は「自分が関わる子どもの姿の理想を描いてください。それに向けて明日から何をしますか?」というメッセージをいつも伝えています。

以前は、教室に入ってまず気にすることは「先生の態度や言動」でした。先生がいかにして子どもたちを指導しているか、学級を経営しているかというところが大切だと思っていたからです。

東京大学名誉教授 汐見稔幸さんの「教えから「学び」へ ー教育にとって一番大切なことー」の著書名にあるように、今は、「教師が教える」のではなく、「子どもが学ぶ」ことが大切。

指導主事は「学校で子どもたちがどんな姿で学んでいるのか」を学校外からの視点で見ています。もし、指導主事が教室でうろうろしていたら、こっそり聞いてみてください。
「子どもたち、しっかり学べているように見えますか?」
快く、感じたことを答えてくれるはずです。

おわりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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