落とし物って想像力がかきたてられるよねという話

　駅のホームに靴下が落ちていた。かわいい恐竜の絵がプリントされた幼児用の靴下だ。片一方だけである。
　幼児用の靴や靴下が道端に落ちているのは見たことがあったが、駅のホームに落ちていたのは初めて見たので少しびっくりした。しかもホームの端の端、人が電車に乗り込むところらに落ちているというか引っかかっている感じである。
　拾って見つかりやすいところにおいておいた。あとで、持ち主に届いていると嬉しい。
　ああいう、幼児用の靴や手袋が落ちていると妙に生々しさを感じてしてしまう。これの持ち主はどこか異界に引きずり込まれたのではないか的な。わかってますよ。幼児がむずがって脱いだってことぐらい。でもね、なんか考えちゃうのよ。なにか異形のナニカに引きずり込まれて靴だけ残ったのではとか。落ちているはずのないものが落ちているというシチュエーションには想像力を掻き立てられる。
　前に、抱っこ紐が畑に落ちていたことがあった。抱っこ紐が畑に落ちるってどんなシチュエーションだよ!　抱っこ紐を出先で外す機会ってある?ないだろ。しかも抱っこ紐という使用頻度が高いものが落ちたのに拾いに来ないってなんだよ。親子ともども異形に喰われたか…。なにか異形の者が後ろからパクっと食べられて、血の一滴も残さずに…。

洗濯物が風に飛ばされて畑に落ちたのではという当たり前の結論に至るまですこし時間がかかった。