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総務DXのためにRPAは導入すべき?RPAにより期待できる業務改善とは

「総務DX=RPA」そう思っている方々もいらっしゃるかもしれませんが、実際には「=イコール」ではないです。もちろん「DX=RPA」でもありません。大きくまとめると、DXの一部にRPAがあると理解いただければと思います。

このコラムでは「RPA」とはどういうものなのか、総務DXにどのような役割を担うのかについてお伝えいたします。総務DXを進めていく中でRPA導入の検討をどのようにしていくのがよいのか、以下の内容に沿ってご説明させていただきます。

RPAとは(Robotic Process Automation)の略でロボティック・プロセス・オートメーションのことです。認知技術(ルールエンジン・ 機械学習 ・ 人工知能 等)を活用した、主にホワイトカラー業務の効率化・自動化の取組みである。人間の補完として業務を遂行できることから、仮想知的労働者とも言われている。(参考:Wikipedia)

ロボットといっても、自動車を組み立てたり、お掃除をしたり、料理を作ってくれるわけではありません。パソコンを使って行っている事務処理をスピーディーに正確にこなしてくれるロボットです。ですのでRPAは、パソコンを使った処理が対象となります。

総務の複雑で考えながら行う業務には不向きですが、中には一見複雑に見えて、単純な作業を繰り返しているものもあるので、この後から行う総務DX化業務改善対象となる業務を絞り込みすぎないようにしてください。

総務DX化の準備:現状業務の棚卸とデジタル化を考えてみよう

DX化とは、パソコンを使った作業だけではありません。総務DXを進めるための準備として、アナログ作業のデータ化からはじまり、システムやプロセスのデジタル化を目指します。

それでは、システムやプロセスのデジタル化の一つである「自動化」を担う、RPAを検討する為に現状の業務内容を洗い出してみましょう。

まずは、現在総務が行う仕事で、パソコンで行っている業務と、手書き(アナログ)で行っている業務を、どちらも洗い出してください。

もし、全てを洗い出すのが難しい場合は、優先順位をつけて行いましょう。優先順位とは「面倒くささ」です。総務が行う業務ですごく面倒くさいものからリストアップするのが大事です。

毎日行う面倒なことから、毎月行う面倒なこと、毎年行う面倒なことなんでも構いません。

大変ですが、できるだけ多くリストアップしてみてください。

DXによる業務改善のポイントと評価:業務の負荷を評価して改善対象とするかを考える

次に、洗い出した総務の「面倒くさい」業務を、整理していきましょう。整理していくポイントとして大事なのは「量」になります。「量」とは「件数」と「時間」です。

「件数」が多いもの、「時間」が多くかかるものを数値化して、できる限りまとめていきましょう。1件=5分などおおよそで構いません。

リストを作って業務内容がわかるように、実際の帳票や書類などの見本も整理してください。

それぞれの業務を誰が行っているのか「担当者」も紐づけてください。
ここまでの作業は労力も時間もかかります。

しかし、大きな労力をかけてできた資料だからこそ、「件数」、「時間」、「担当者」を集計キーとして現状を評価することができます。

また、総務の仕事で単純で長時間繰り返すような業務が、どれくらいあるのか。1日30分程度だけどひと月に何回もあるような業務がどれくらいあるのか。

各業務ごとでDX改善効果が大きいものと小さいもの、どちらも認識できます。大きいものなら、労力かけてまとめなくてもわかるけどという意見もあるかと思います。

しかし、手間をかけることで小さいものを洗い出すことができます。小さいものでも、件数を重ねると改善効果が大きくなります。

小さいことも大事に考えることが、RPAを導入・運用していく総務DX化の中で一つのポイントとなります。

また、「担当者」をもとに考えると、業務の集中による長時間労働や休暇を取りにくいなど「属人化」されていることによる課題も見えてきます。

状況を整理確認することでいろいろなDXポイントが把握できるので、総務DX化業務整理リストの作成がいかに大事なことであるかご理解いただけたのではと思います。

また、ここでいう「評価」とは、後に出てくるRPAを利用した総務DX化を進めていく導入検討の判断をする上で非常に重要となります。

RPA導入のメリット:どんなメリットがあるのか会社に与える効果とは

「RPAは、大企業でないと導入、運用が難しくて中小企業ではメリットもないのでは?」と思う方々もいらっしゃるかもしれません。

しかし、総務DXの推進、RPAの導入は大企業だけでなく中小企業でも多くのメリットがあります。ここで、代表的なメリットをいくつか紹介いたします。

1.生産効率が上がる

多くの企業で、単純で大量な作業を繰り返している業務があります。RPAで処理することで、正確に総務で発生する大量な業務を少ない時間で行うことができます。

2.労働時間を削減できる

単純でも作業量が多いものもRPAで置き換えることで処理の準備が整えば、RPAに業務を任せて休憩したり、帰宅することができます。次の日に出社したときには業務が完了しています。

3.業務改善に取り組む機会となる

総務DXを進める、RPAの導入を検討するにあたって現状の業務を振り返ることが必要です。

振り返ることで疑問や改善できないかなど見直しをするきっかけになります。総務DX化、RPAを開発、運用していく中で定期的に改善活動をしていくことが定着することで、社員の働き方や意識が変わっていきます。

4.技術ハードルが低い

簡単で誰でも使えるわけではありませんが、パソコンを使って自動処理をさせることができるツールでありながら、プログラム言語を学習するなど専門的な知識や能力が必要ありません。

なので総務DXはシステム部門のメンバーではなく、総務のメンバーで進めることができます。また、プロセスを整理して設定することで、業務改善の大きな経営効果を得ることができます。

RPAを活用できる業務とは:対象業務選定のポイントと事例

総務では、どんな業務がRPAで代替することができるのかについて、いくつかのポイントと事例をご紹介します。

ポイント1 Webブラウザを使用してのシステム操作

・ネットバンキングの操作
・株価などの情報収集
・自社SNSなどのルール違反などの書き込み内容チェック
・EDIなどとの連携
・Webシステムから定期的なCSV書き出し

ポイント2 数値の集計

・社内向けの集計レポート作成業務
・複数のファイルを順序立てて処理を行う

ポイント3 社内システムのマスタの登録や修正

・商品情報、単価情報などの更新
・人事システムへの新入社員登録や人事異動情報の登録

ポイント4 社内アプリケーションの操作

・メールのチェックや添付ファイルのダウンロード、メールの送信
・社内サーバ共有フォルダの監視
・特定条件で取得したファイルを指定したプリンタに出力する

ポイント5 同一性のチェック

・項目漏れや転記ミスなどルール違反がないか記載内容のチェック
・ウェブサイトが更新されているかファイルの同一性をチェックすることで更新の有無を確認する

ご案内した内容は、できることの一部になります。中には総務DXにつながるイメージを持てるものもあるのではないでしょうか。

次に自社で活用しているRPAの事例を、ご紹介します。

1.社外秘の資料を暗号化して定期配布

以前は、購読該当者にのみ定期的に配布していた資料を、指定の社内共有フォルダで受け取り資料PDFをダウンロードできるように。

資料PDFを暗号化システムにアップロードし、暗号化PDFを生成。ダウンロードしたファイルを、購読該当者リストに合わせて配信できるようになった。

2.取引先Webシステムを監視して即時情報を把握

Webシステム内に見積依頼や伝達事項が掲載されるのだが、メールなどで即時通知があるわけではなく対応が遅れることがあった。

そこで、RPAに置き換えることで状況チェックを随時担当がチェックしなくても、チーム内で情報をすばやく取得できるようになった。

3.売上処理に必要な帳票をの繰り返し出力

以前は、社内基幹システムから売上処理に必要な帳票を出力するために、対象の案件をリスト化して確認しながら出力を繰り返し行っていました。

一つ一つの処理は、約2分程度でできるのですが様々な業務を完了後に取り掛かると必ず残業となり2時間くらいかかることも。

そこで、その業務を売上案件リストを用意して帰宅時にRPAに任せることで、残業することなく翌朝には出力が完了している状況を作ることができた。

他にも様々なロボットが稼働しております。これからも随時増やしていく予定です。総務DXのためのRPAにも一部の設定を変更することで転用できるロボットもあります。

総務DXのためのRPA導入検討で大事なこと:RPAにもコストおよび機能で様々なものがある

RPAには、大きく分けて「サーバ管理型」「スタンドアローン型」「クラウド型」の3つに分けられます。

改善したい業務の範囲や規模、同時稼働させたいロボット数など用途やコストによって選別することになります。簡単にRPAの動作形態別にご説明いたします。

「サーバ管理型」

サーバで管理、運用することになるので部署内のみでなく社内の広範囲で利用することができます。多くの処理で活用できる能力があるので導入費用や運用コストが高額になります。

会社全体を業務改善したい、部署内の作業だけでも膨大になっているなどここまでにまとめた業務状況にあわせて検討します。

「スタンドアローン型」

PCにインストールして利用するタイプです。対応できる範囲は小規模になるのでコストも手頃になり、スモールスタートを考える場合に適しています。

共同でのロボット作成などはPC1台なので難しく、作成者も限られるためロボットを管理することができません。

「クラウド型」

インターネット環境にログインすることで動くロボットになります。サーバなどが不要になるので導入しやすいタイプになります。

ただし、Webシステムやエクセルやワードなどはの利用できても、社内基幹システムは使えないなど対応範囲は限定される場合があります。

どのタイプを選べばよいのか、リストにまとめた改善対象になる業務やシステム、必要なロボット数(同時稼働)を踏まえた導入および運用コストで判断することになります。

合わせてRPAを使いこなすこと、社内で学習していくことは容易ではないので導入サポートやロボット開発指導及び相談ができ、総務DXに実績があるか確認の上で検討することをお勧めします。

自社の環境下でのテストを実施した上で判断をしましょう。

RPA運用で失敗する要因:導入時に気づきにくい問題について

プログラム開発や、パソコンの制御など専門的な知識がなくても、ロボットを開発して業務改善を推進することができるRPA。この内容は概ね正しいのですがすべてを正確には表せていません。

RPAを有効に活用するためには対象業務の洗い出しから始まり、どのように設計すれば業務を代替できるかを考え、テストを重ねた上で実働させて、トラブルやミスがあれば修正を繰り返すことで安定稼働させることができ
業務改善を達成して労働時間短縮などの成果につなげることができます。

OSやブラウザのアップデートによって動作不良を起こすこともあるため、メンテナンスも継続して行うことになります。これらの作業は規模にもよりますが社員ひとりでやりきることは困難です。

チームを作り、開発、学習、検証を繰り返し継続していけばうまく運用することができます。社外サポートを利用することも一つの方法です。

ただし、サポートを受けている間は開発や修正をすることができても、サポート契約終了後、現状維持となりロボットが修正されず動かなくなったり誤動作するようになったりします。なのでサポートを受けつつも社内チームが自立して行動できるような仕組み作りが必要です。

RPAの運用は技術的なハードルは高くないのだが社内基準、文化を変革するくらいの強い意思をもって活動することで成果がでます。

まとめ:RPAを活用していくことで得られること

ここまで読んでいただいてRPAを導入するべきか、見送るべきかどのようにお考えなのか直接お話をさせていただきたいくらい気になります。

業務内容の現状把握、業務内容・業務量の数値化、数値化された内容とのコスト比較、RPAツールの選定、運用チームの結成、開発・メンテナンス活動の継続などなど、重苦しく捉えている方もいると思います。

まずは、RPAの導入云々の前に現状を把握しておくのも、よいのではないでしょうか。何もない中で現状把握の活動をすることが自社では難しいと考える方々も多いと思います。

しかし、DXもRPAも、業務改善することで社内変革を実現する一つのきっかけとして捉えしっかり活用できれば労働時間短縮によるコストダウン、できた時間での学習や新たな役割への取り組みが進められます。

最初は部署単位でのトライでも構いません。

RPAを導入すべきかと問われたら、正解はありませんと回答しますが、RPAの導入を検討すべきかと問われたら必ずすべきですと回答します。導入検討の一助となれば幸いです。


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