見出し画像

多子世帯の大学授業料無償化――税金でFラン大学生を量産するエリートたち

2023年12月7日、政府は、3人以上の子どもがいる多子世帯を対象に、2025年度から大学授業料を無償化する方針を固めました。

多子世帯の大学授業料無償化 所得制限なし、25年度から―政府:時事ドットコム (jiji.com)

 政府はこれまでも、低所得層に限定した授業料減免や、給付型奨学金の拡充を行ってきましたが、教育費の負担軽減に向け支援をさらに強化するとのことです。
 今回、所得制限は設けず、「異次元の少子化対策」の一つとして、月内に決定する「こども未来戦略」に盛り込むそうです。

 数百万円の学費がタダになるのですから、一見して良いことづくめように感じるかも知れませんが、実はツッコミどころ満載の愚策であります。

 まず第一に、「無償化」といいますが、これはまやかしです。大学は慈善団体ではないので、無償化された授業料分の費用を政府に請求します。そして政府はそれを肩代わりし、予算支出に計上します。予算とはつまり、我々国民の収めた税金です。
 すなわち、「無償化」とは言い換えれば「税金化」に他なりません。

 我々国民の大切な税金を使う以上、それなりの成果を求めたいところですが、残念ながら、こんなことで少子化が解決するとは思えません。

 そもそも、全ての子どもが大学に進学するわけではありません。少子化の原因は「経済的負担」とよく指摘されますが、それは何も大学の授業料のことではありません。衣服や病院代、日々の食費や習い事など、子どもを育てるには様々な形での負担がかかります。

 特定の費用をタダにするのではなく、子どもの数に応じてまとまったお金を支給するとか、所得税を減税するとか、もっと広い意味での「負担軽減」をすれば良いのです。

 とはいえ、どんな形でも家計は助かるから良いじゃないかと思う人もいるかもしれません。たしかに大学の授業料は国公立で年間約60万円、私立では約100万円かかるので、家計に大きな負担となります。子どもの多い家庭ではなおさらでしょう。

 しかし、そもそも大学は皆が皆目指すべきものでしょうか。
近年、子どもの大学進学率は約5割を超えるそうです。就職活動に有利だから「とりあえず大学」「とにかく大学」という風潮もあるのでしょうが、5割もいるのはさすがに多過ぎです。

 大学とはどんな場所でしょうか、存在意義は色々あるでしょうが、第一は学問を究める、つまり「勉強」する場所です。大学生が就職活動に有利なのも、彼らが「勉強ができる」、つまり向上心・集中力のある優秀な人材であると企業が判断しているからに過ぎません。

 しかし近年、偏差値の低いいわゆる「Fランク大学」と呼ばれる大学では、勉強など嫌いでやる気のない学生が集まり、高度な授業が成立せず、「分数の計算」や「be動詞」から教えることもあると聞きます。

 断言しますが、そんなところで年間数十万円かけて4年間過ごすのは、どう考えても無駄です。勉強が嫌いなのに「とりあえず大学」に行くのは若者の貴重な時間の浪費であり、いたずらに経済的負担を増やしているだけです。

 大学授業料無償化は、そうしたFラン大学生を量産する結果が目に見えています。これが日本の国益に繋がるとは到底思えません。
 「どんな人でも大学に進学できる」のではなく、「大学に進学しなくても、まともな職に就けるようにする」ほうが、負担も無駄も大幅に減らせます。

 もちろん、低所得世帯の子どもで大学進学を望む人を支援する制度は必要です。しかし、それには当然、所得制限と学力制限を設けるべきです。大学など本来、全員が目指すようなものではないのです。

 なぜ政府はこのような的外れな政策を打ち出すのでしょうか。それには、この政策を考案した人がどういう立場なのか考えると想像がつきます。
 通常、こういった政策は担当大臣の指示のもと、省庁の官僚が考えます。彼らは国家公務員ですから、東大や京大など、一流大学に進学し、その中での競争にも打ち勝ち、省庁に就職したのでしょう。

 つまり、彼らのようなエリートにとっては大学に進学し勉強するなど当たり前のことで、まさか大学に入って勉強もせず、分数やbe動詞を習っているFラン大学生のことなど想像もしていないのです。

 さらに言えば、Fランク大学は文科省官僚の有力な天下り先です。文科省官僚にとって大学は自らの再就職先であり、あればあるほど都合が良い。公金を注ぎ込んで飼い殺しにすれば、大学側は文科省に逆らえなくなります。

 ここまで考えれば、大学無償化がいかに少子化対策として意味がなく、文科省官僚にとって都合の良い政策かわかるでしょう。
 官僚や政治家は、私たち国民のために働いているように見せかけて、隙あらば自分たちに都合の良い政策を差し込んできます。

 我々国民は彼らのようなエリートに騙されないように思考力をつけ、目を光らせる必要があります。いい大人になって分数やbe動詞を習っている場合ではないのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?