![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/98036940/rectangle_large_type_2_1de608edd5034d9ba754decdc6059045.jpg?width=1200)
【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#6
第二幕 靴を落とした少女
2:灰かぶり姫
彼女の母親らしき人がこう叫んだ。
「シンデレラ!!!!」
シン……………………………デレ…………ラ??????????
………………………………………
私は、まさかと思い呆然と立ち尽くした。
待って。今の女性、シンデレラって言った??え?待って待って。頭の処理が追い付かない。あの彼女がシンデレラということは、ここは物語の中ってこと??
いやでも、ありえない。
だって、こんなことあるはずがない。
そこで私はハッとした。
そういえば私、どうしてこの世界に来たんだっけ。
思い返すと、私がボタンを拾ったその手を、本にかざしたときだった。そして、本から溢れ出る光に包まれて気が付いたらここにいた。
確かあの本の題名「童話集」だった気がする。
と、いうことは、この現状から推測するに、ここはあの本の中ってことになる。でも私は、この事実をどうも受け入れることができそうもない。だって本当にあり得ない話だから。でも、今は悩んでいる暇はない。とにかく、ことの成り行きを見てみよう。
「シンデレラ!!!!水やりは終わったの?!終わったならさっさと部屋に戻って頂戴!!あんたみたいな小汚い娘、誰かに見られたらどうするの?!まだ、やることは残っているのよ!!!!」
そういって、彼女の持っていたジョウロを取り上げ、母親は、彼女を家の中に連れ去ってしまった。
これからどうしよう。この事実が本当のことだとしたら、私は本の中に閉じ込められていることにもなる。どうにかして、現実に戻らないと。まずは、家の中に戻ってしまった、彼女を追ってみよう。何かわかるかもしれない。
そう思って私は、花壇から大きな家の前までスルスルと歩いていき、止まった。
一応人の家の中に入るわけだし、一言いったほうがいいよね。
<おじゃまします>
そして、私は固くてどっしりとした大きなドアをスルリと通り抜けた。
彼女はどこだろう。
探して見ると彼女は、家の中央にある一室で、暖炉のそばを掃除していた。そして、その部屋には、彼女のほかに2人の女性がいた。
ここが本当にシンデレラの話の中だとすると、あれは継母の2人の娘だろう。
私は、シンデレラの話をうるおぼえながらに知っていた。
あの、かの有名なねずみーランドの影響かもしれないが。
娘2人は、彼女にこう罵っていた。
娘1(姉)「あんたは、ぼろ雑巾みたいな恰好で、チョロチョロとこの家を這うネズミみたいなもんだから、この豆も這って食べたらどうかしら??」
娘2(妹)「そうよ。そうよ。きっとあなたにはお似合いだわ笑」
と言いながら娘1は豆をまき散らし、娘2は彼女のことを笑っていた。
彼女が何も言わないことをいいことに、娘1は彼女の頭を掴んで、床に擦り付けた。しかし、彼女は四つん這いになりながらも何も言葉を発さず、その言動に耐えていた。
そのとき、彼女にとっての継母・娘2人にとっての実の母親がこの部屋の扉を開けた。
継母「何をやっているのですか。まだ、シンデレラのやることは残っていますよ。」
娘1「お母様、わたくしたちは今、この小汚い女に教養を教えていたのです。」
娘2「そうです。お母様。姉さまは、この女のために一生懸命、教養をお教えしていたのですよ。」
継母「そうなの。それならしょうがないわね。続けて頂戴。」
とにやりと笑いながら、継母はどこかへ行ってしまった。
それからというもの、娘2人の気が済むまでその罵りは続いた。
彼女がこの間に発した言葉といえば”ごめんなさい”だけ。
最初は無言で耐えていた彼女も、娘2人の罵声と罵倒が激しくなるたびに、”ごめんなさい”の言葉が聞こえるようになった。そして、彼女は、繰り返し、何度も、何度も、”ごめんなさい”の言葉を口にし、涙を流しながらその罵りに耐え続けた。
そして、娘2人の気が済んで、彼女が罵りから解放されたあとも、彼女は継母の指示に従い、部屋の掃除、洗濯、靴磨きなど、休む暇もなく、一晩中働かされた。
暗くなったころ、くたくたになった彼女は、暖炉の前で寝こけていた。
灰を被りながら。それを見つけた継母がこう言った。
継母「こんなところで寝ないで頂戴。床が汚れるでしょ。」
そう言われて彼女は、ぼろぼろになった屋根裏部屋に連れていかれた。
私はそのころ、何か彼女を助けることはできないかと色々と模索していた。豆がまき散らされて、食べなさいと彼女が罵られているときは、娘1を殴ってみたり、娘2を羽交い絞めにしてみたり。
それができないとわかると次に、豆をどうにか片付けられないのかと思って拾ってみたり、豆を1か所に集められたりしないかと風を吹かせてみたり。
たくさんの試行錯誤を繰り返していたのだが、やっぱりこの世界のものには一切触れられず、すり抜けてしまう。
結局私は、その一部始終を見守ることしかできなかった。。。
…………………………………………………………
メモ
第二幕 靴を落とした少女 2:灰かぶり姫
~この世界について得られた事実~
①自分は透明人間になってしまったこと。
(ヒント1:自分の体に触れられない。ヒント2:自分の声は誰にも聞こえない。)
②この世界にあるものには触れられないこと。
(ヒント3:ヒトに触れられない。ヒント4:モノにも触れられない。*すり抜けてしまうということ)
★③この世界は「童話集」という本の中の世界だということ。
*★は新しく知ることができた事実。
*これはフィクションです。
登場人物とは一切関係ありません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?