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【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#9

第二幕 靴を落とした少女

5:使用人


私は、その日、一睡もすることができなかった。

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朝日が昇り、今日も1日が始まる。

清が清がしい朝とは反対に、私の心は沈んでいた。

エラは、私が、一睡もできなかったことは梅雨知らず、うーんと気持ちよさげに伸びをしていた。
私は、昨夜のエラに対しての恐怖がまだ少しばかり残っていた。
そして、見てはいけないものを見てしまったかのように、私はエラに顔を向けられなかった。
するとエラが言った。

「おはよう。りう。」

私は、少し目を彷徨わせた。
そして、エラの顔をチラリと見やると、エラの目は、夜中に赤く染まっていたものとは違い、元の澄み渡るような青い目をしていた。

私は、エラの目が赤くないことを確認し、暗かった心に少し光が差した。

「う、うん。おはよう。エラ。」

「???。りう??どうかした?」

「あ、ううん。ちょっとまだ寝ぼけてるみたい。」

あの、あたたかい雰囲気をしたエラだ。

私は、心底安心した。

じゃあ、私が昨夜見たものは一体何だったんだろう。まさか、あれ全部が夢で私はとうに寝ていたとか?!

でも、私は、夜中に起きたことをエラに話すべきかどうか迷った。
そして、私は、やんわりとエラにこう尋ねた。

「ねぇ。エラ。夜中に何か音がしたようなんだけど、エラは分かった??」

「え???ううん。全然聞こえなかったよ。どうして?」

「う、ううん。寝てたんだけど、音が聞こえたような気がしたから。聞いてみただけ。」

「そう。それよりも、早く支度をしなくちゃ。お母様たちに怒られてしまう。」

「そうだね。」

そういって、エラは、早々と支度をし、下に降りて行った。

あれは、きっと夢だったんだ。よかった。

下で朝ご飯の支度しているをエラに対して、私はというと、今朝、エラと話し合って、この家の使用人になることに決めたのだった。
私は今日、この家の前で倒れていたことにし、それを見つけたエラがこの家に私を置いてくださいと継母達にお願いをするのだ。
エラは、

「今日、りうをこの家に住まわせてくださいとお願いするけど、私シンデレラだから。成功するかどうか、分からない。」

「エラ。私は、エラのこと信じてるよ。そして、シンデレラと呼ばれていようがいまいが、エラはエラでしょ。突然やってきた私を、エラは蔑んだりしなかった。ね?そうでしょ??」

「そうだね。」

「うん。それでお願い。じゃ、私は外で待機してるね。」

そうして、夢だと確信する場面に至ったのだった。私は透明人間になり、この家の門の前に姿を現した。そして、具合の悪そうな演技をする。

早速、エラが家の外に出てきた。さあ。作戦開始だ!!

エラ「ね、ねぇ、大丈夫??」

私「大丈夫です。でも、私には家がなくて、途方に暮れているのです。」

エラ「そ、それならこの家のお母様に相談してみる。」

エラはちょっとセリフが棒読みだった。

なぜここから、演技をするのかって??

ここから、演技をしようと決めたのは、エラだった。

「お母様は、私のこといつも見張っているわ。」

だから、ここから演技を始めなければいけないということなのだった。

すると、継母がこの家の扉を乱暴に開け、エラのところにずかずかと足を踏み鳴らしながらやってきた。

「シンデレラ!!!何をやっているの?!花壇の水やりはどうしたの?!」

「お母様。この人が門の前で倒れていたのです。それにこの人、住むあてもなくさまよっているそうなんです。ど、どうか、家においていただけませんか?」

「何を言っているの?!そんな、ぼろ雑巾みたいなネズミ、2匹もこの家には必要ないわ?!1匹でも苦労しているというのに!!」

「そう、そうですよね。お母様。」
そう言って、継母は後ろを向いてさっさと行ってしまった。

私のことをチラリと自信なさげに見ると、
悲しそうに目を落とした。
怒られる恐怖で目と強く綴りながら、裾をギュッと握りしめた。

私は、意を決して、お母様に頼んだ。

「お、お、お母様。少しの間だけでいいんです。
でしたら、住まわせてくれる代わりに私が使用になります。」

「ダメです!!こんな、何の病気を持っているかわからないネズミなんて!!」

といった後に、ちょっと考え、そうかと何やら思いついた様子の継母。そして、ニヤリと笑った。

「でも、そうね。しょうがないわね。そこの、ドブネズミと一緒の仕事をやってもらうわね。それでも、いいかしら??」

「はい!!どんな、仕事でも引き受けます!!」

そういって、私は、このお屋敷の使用人になったのだった。

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