【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#20
第二幕 靴を落とした少女
16:エラとの交渉
エルが元の調子に戻るまでは、そっとしておこう。
その分、エルと会話していた時間を、今日みたいに探検に使う時間にしようと、そんなことを考えながら目を閉じた。
チュンチュン。
「ん。んーー。」
「おはよう。エラ。」
「おはよう。りう。」
そのとき、エラがはっとしたように慌てだした。
「あ、あ、あの、りう?!大丈夫だった?私が起きた時にはベットに寝転んでいたということは、大丈夫だったみたいだけど。倒れていた本棚も、ぐちゃぐちゃになったクローゼットも、きちんと今は綺麗になっている?!」
「エラ。落ち着いて。大丈夫だったよ。」
「そう。ならよかったのだけど。りう。ごめんなさいね。りうにあんなことをしてしって。あのとき、私の意識はあったの。でも、どうにも抑えが効かなくて。」
だんだんと声の調子が悪くなって、しまいにはエラは泣き崩れてしまった。
「うん。エルから詳細は聞いたから大丈夫だよ。エラもつらかったよね。私は大丈夫だから。」
「うっ。りうーーーーー。ごめんなさい。ごめんなさい。」
そういってエラは声を出して泣き出してしまった。
その間、エラの背中を撫でてあげた。
優しく、優しく、昨日エルが流した涙を掬い上げるように。
「エルは、エルはなんて言っていたの?昨夜のこと。。。。。」
エラが不安そうに尋ねてきたので、エルが昨夜言っていたことを事細かく、話した。でも、エルが涙を流していたことは言わなかった。きっと、エラは悲しむと思ったから。そして、それはエルも望んではいないだろうから。
「そう。そうだったの。ダメだね。私。エルがいないと何もできない。私、エルにばかり頼って、私は何もできていない。私の中にいるエル。。。。。エルは、私と1つになりたいと望んでいるのかな。もう、よくわからなくなっているの。どうしたら、私はエルを守れるの。。。。。。。。。。。。」
「エラ。。。。。。」
そういえば、エルとの交渉の話をまだエラにしていなかったな。。。。
エルの背負っているものを完全には担えないかもしれないけど、エルとエラの繋がりは私だけ。
あっそうだ!!
私がエルとエラの情報係になればいいんじゃん!!
「エラ!1つ提案なんだけどね!
私がエルとエラの情報になればいいんじゃないかな?つまりね、エルからエラに、エルからエラに言葉を伝える伝書鳩の役割を私がやるの!」
「りう!それ、ものすごくいいね。でも、私がされてばかりじゃ嫌。その代わり、私がりうに何かできることは何?」
「うーん。そうね。そうだなー。
私の願いの手伝いをしてほしい、かな?」
そして、私はエラと話していて、思いついた話をエルに話した。エルとの交渉も。
するとエラは落ち着きを払った声でこう言った。
「それじゃ。私とも交渉しましょう。
私はりうの大切な人を探す手伝いをする。
その代わり私とエルの言葉を伝える伝書鳩の役割を任せるわ。」
「了解!よろしくね。エラ!」
「よろしくね。りう。」
そう言って、私とエラは握手をした。
はたと。そういえば、今何時だっけ?とチラリと
部屋に置いてある時計を見て、
「もうこんな時間になってしまったのね。早く支度をしなくては。お母様とお姉さま方に叱られてしまうわ。」
「そうだね。早くしないとやばいね!」
「や??や、やば??」
あっやばい。
エラはこの言葉の意味を知らないんだった。
「何でもない!!ほら。早くしないと怒られちゃうよ。早く!エラ!」
「う、うん。そうだね。いくよ。」
そうして、今日も1日が始まる。
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