マガジンのカバー画像

そして英雄になる

33
英雄を目指したラムとウィルの剣と魔法があるライトなファンタジー物語。
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

2章 5話 ウィリアム

「お母さん…お父さん…どこー!どこにいるの〜?」

あっ、これって夢だ。
私は唐突に気がついた。

村を歩く11歳の私の視点であの日が繰り返される。
村は至るところが燃えていて、村のみんなが倒れている。

この後で私は彼と出会ったんだ。

「だれか〜!ぐずっ…みんなどうしちゃったの?あ……」

村の中を裸足で彷徨う私の目の前に『鬼』が現れた。
一体じゃない、10、20、もっと沢山いて、『鬼』達が私

もっとみる

2章4話 でけえ蟹

 隊長から招集を掛けられた俺たちは、早朝に事務所に集まった。

「おはようございます隊長!」

「おはようオーフェン。」

事務室を見渡すと隊長の他にイレイナとメイファンも既に集まっていて、俺含め全員が完全武装の状態だった。

「そんで……どこスか?」

「うむ、魔種が発生したと報告を受けた場所は港町シールの町外れの海沿いで、姿は蟹が巨大化した物、数は三体だと聞いている。」

「蟹?なんか想像つか

もっとみる

2章 3話 守りたいもの

 早朝、俺は04小隊の隊舎に集合していた。

「オーフェン、集まるのはまた貴方が最後ね。」

事務室に入るとソファーに座っていたイレイナが俺に噛み付いてきた。

「うるせえよ!別にいいだろ、集合の5分前に来てるんだぜ?
あ、隊長、それとメイファンも!おはようございます!」

「おはようオーフェン、朝から賑やかになっていいね」

「お、おはようございます……」

俺はイレイナを一睨みしてからソファー

もっとみる

2章2話 魔女との邂逅

 オーフェン達の乗っていた馬車は街道を抜けて、穏やかな空気に包まれた農村に辿り着いた。
山々に囲まれたこの村は真ん中に線を引くように小河が流れていて自然豊かな場所だった。
稲穂が陽の光に当たって黄金に輝いている。
 馬車が止まり、御者席のディアモンテが後ろの3人に向かって顔を出した。

「道中で説明したと思うが、改めて任務内容を確認するぞ。
この村の農作物が獣によって荒らされているらしく、我々はこ

もっとみる

2章1話 オーフェン

 帝国が大陸全土に向けて宣戦布告を行ってから5年。
帝国は公国を侵略した後にいくつもの小国群を占領して更なる軍拡と戦争を行っていた。
 これに対して5大国の内の、北国アインドラ、共和国エスペンサ、南国グリムは同盟を結んで連合軍を作り帝国に対する共同戦線を張ることによって強大な帝国に対して攻勢を試みていた。

 そんな世界情勢の中で1人の少年の物語が運命と交わろうとしていた。
ここは沈黙を貫き続ける

もっとみる

20話 闇への誘い

 僕はベッドの上で目を覚ました。
小窓からは日差しが降り注いでいる、すぐそばの通りは商店街に近いのだろうか、賑やかな歓声が聞こえてきていた。

 身体を起こして部屋を観察する。
知らない天井、知らないベッド、知らない部屋。自分が今着ている服すらも知らない服だった。
いつもなら寝る時はベッドの側に置いてある筈の剣が無い。
ベッドの側の机には花瓶が置いてあった。
今までに見たことのない花が挿されていて

もっとみる