対馬の魚は何故美味いのか。

2022年11月。念願の対馬に初めて訪れた。

対馬は長崎県に属する島で、全国でも10番目の面積を誇る。
 私自身、対馬は長崎県に属しているということ自体は知っていたが、島がどの辺りにあるかは把握していなかった。まあ長崎からフェリーで行けるものだと思っていて、長崎から行くつもりであったが、なんと長崎市からはかなり遠い。九州からは博多港、東唐津港からしか船は出ていないということを行く二日前に知り、慌ててスケジュールを変更した。

 対馬は魚の産地として名高い。都内の寿司屋界隈でも対馬産のものは一目置かれており、特に対馬でとれる穴子は水産に関わる誰もが口を揃えて抜群に美味しいと言うくらいだ。対馬でとれるアナゴで百匹に一匹ほどの確率で黄金アナゴと言われる穴子はまた他のアナゴよりも脂のノリが格段に良く、美味しいと言われている。

しかし、なぜ対馬で取れる魚というのはこれほどまでに特別視され、美味しいと言われるのだろうか。


 対馬の近くには豊富な栄養を含む海流(黒潮)が流れており、
これが対馬海峡に流れ込む。対馬海域は海中に層ができやすい環境になっており、上層に暖かい層、下層に冷たい層があり、日光を浴びる必要のある植物プランクトンが暖かい層に留まり、大量に発生する。それを鯖や鯵、鰯などの小魚が食べて成長し、それをまた大型の魚が食べて成長するという食物連鎖が生まれる。
 
 美味しい魚と良質な自然というのは密な関係がある。対馬は温暖な気候で、島の89%が森林であり、原生林が残るほどの壮大な自然がある。
 海の魚の70%が沿岸に生息している。というのは、沿岸には森林から湧き出る栄養を植物プランクトンや海藻に利用され、動物プランクトン、魚類などへ繋がっていく。
 私が対行った11月は対馬ではクエ漁の終わりのシーズンであった。

朝5時、真っ暗闇の中船に乗り込み、漁場まで向かう。今振り返ると、漁場は沿岸から近いところで行われていて、沿岸付近に魚がいあると言うのも納得だ。
漁をしているうちに次第に闇は明けて次第にオレンジ色の朝焼けが海面に映しだしてくる。
漁から港に帰る頃にはすっかり朝なのだが、水面を走る船の横を振り向くとそこには断崖とそこに連なる壮大な森林があった。
私はあまりの絶景に言葉を失うのと同時に納得してしまった。

これこそが対馬の魚の美味しさの所以であると。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?