朝ラーメンと文化

福島県の喜多方にやってきた。

喜多方といえば、喜多方ラーメンは主流で、部類のラーメン好きである私としては喜多方でラーメンを食べるのは大の楽しみであった。

というのは喜多方では、全国でも数少ない、朝ラーメンという文化がある。


福岡といえば、豚骨ラーメンが主流であり、福岡自体では特に朝ラーメンというのは文化としてはないが、福岡の長浜では元祖長浜屋というラーメン屋があり、そこは24時間営業でいわゆる朝ラーメンを堪能することができる。

私自身も福岡で学生をしていた頃は、朝寄ってラーメンと替え玉を食べて学校や予備校に行っていた。 

長浜屋は他の飲食店やラーメン店とは違う、独特なルールがある。普通店に入ったらいらっっしゃいませだが、こちらは店の中に入った瞬間に 「麺の硬さは?」と質問される。

私は、もう行き慣れているので。行って注文する内容は決まっている。「べた生葱多めで」

という。今はもう福岡に住んでいないので、帰省したときなど年に一回行くか行かないかくらいので、久々に行くと、緊張する。「べた」というのは脂多めで生は粉落としぐらいのニュアンスで言葉の通り数秒間お湯の中の入れて粉落とすだけである。

長浜屋と長浜家が歩いて徒歩2分ほどの区画の中にあるのだが、私は長浜家の方にしかほとんど行かない。どうやらこの2店舗は暖簾分けと思いきや複雑な事情があるそうで、そこの説明は割愛させていただきたい。

ではなぜ、長浜では朝ラーメンという文化があるかというと、博多漁港が近く、大浜というところに市場の人は朝が早いことから、市場の前に構えていた元祖長浜屋は市場で働いている人にうけ、1955年に長浜に市場が移転してから長浜の前に屋台が立ち並ぶようになったという。

競りなどで忙しく時間がない魚市場の人たちのために、素早く提供出来るように麺を細麺にして茹で時間を短縮。細麺は伸びやすいため、麺の量は少なくしてお替わりが出来る「替玉」を考案するなど、元祖長浜屋から始まり長浜ラーメンや博多ラーメンのベーシックなスタイルになっていった。




とんこつラーメンといえば、濃厚な白濁のスープで細麺というイメージが強いかもしれないが、長浜屋のラーメンはもちろん豚骨ではあるのだがスープはサラサラしている。麺は福岡の極細麺に比べて若干太く、麺量も多く、食べ応えがある。あっさりとしたスープに卓上にある紅生姜と胡麻、白胡椒、返しを好みでカスタマイズして食べるのが、長浜屋での醍醐味かもしれない。
そして、替え玉をする際も「生玉」とコールすれば、運ばれてくるのだが、替え玉の場合はまた味わいが違う。最初の生麺はスープに入った状態で提供されるので、替え玉の時の方がより、硬い小麦の食感、香りを全面的に感じることができる。


喜多方で朝、ラーメンが食べられるようになった理由として、

市内の3交替制の工場の人たちが夜勤明けに立ち寄るため」「朝早く農作業に出た農家の人が一仕事終えて食べに来た」「冬、出稼ぎから夜行列車で帰ってきた子どもを暖めるために家に帰る前にラーメン屋に立ち寄ったから」など諸説あり、定かではない。

喜多方ラーメンはチルドやインスタントなどで何度か食べたことがあったが、本場で食べるのは初めてであったがなんとなく、縮れ麺であっさりとしたゲンコツや鶏ガラ、魚介だしを合わせたすっきりとしたスープ、豚バラのチャーシューということは認知していた。

喜多方のラーメンがなぜこれほど有名になったかというと、大きな要因は水だ。飯豊連邦に連なる山々から流れ出る渓流を水源としており、ここに生息している樹木が国の重要文化財として登録されている。このような恵まれた自然から湧き出る水が来たかの美味しい水の秘訣であるわけだが、さらにそれを使用して醤油、味噌、味醂、清酒などの醸造業が盛んに行われており、これも全てラーメンのスープを作る材料になる。

 喜多方のホテルで朝、ラーメンを食べる前にウォーターサーバーの水を飲んだら思わず、舌を疑った。水が明確に違うのだ。水が硬度の高い、ヨーロッパのみずを飲んでいるような感覚に見舞われた。そしてその後2件ラーメン屋に行ったのだが、やはり水が違う。そしてラーメンのスープの自体の水が違うのだ。都内のラーメン屋でももちろん水にこだわった店は多いし、逆浸透膜水、(ro水)と言われる自ら不純物を99%取り除いた水を使用しているところが多い。というのは水の栄養素も全て含めて取り除いた方が、鶏ガラや動物性の出汁を水に存分に浸透させることができるそうだ。スーパーなんかに行ったらよく、ボトルを購入すれば無料で水を汲むことができるあれはまさにそうで、お茶やコーヒーを抽出する際、ラーメンと同じ原理でお茶やコーヒーの成分を抽出することができるのだ。



 しかし、喜多方の水はそれとは全く違う水の良さがある。

朝にラーメンを食べるということ自体は私の普段の生活においてはないことなので、旅先や帰省というイベントにおいて、非日常感を味は得るという部分もあり、また背徳感もある。

しかし、朝ラーメンと呼ばれるものとしてはやはり、朝食べやすいような比較的あっさりとしたスープであることが多い。


そして今日も岩手で朝ラーメンを食べる。

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