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最強弁舌家 キケロ

世界史の「この人、気になる!」5

オヤジブログ怪気炎 vol.163

政治家にして文学者としても名を残しているような存在は、ローマ帝政以降ではゲーテくらいしか思いつかないのですが。
しかし、言っていることとやっていることが違うのは、政治家としての宿命なのだろうか? たいそう立派な言説を垂れながら、実際には政治行動に首尾一貫性がない。中世の詩人ペトラルカが、彼の書簡を発見した際、ガッカリしたのも無理はない。
彼の晩年・成熟期、古代ローマは風雲急を告げていた。カエサルがブルータスによって暗殺され、共和政の存続か帝政かに揺れる政界の中で、アントニウスの反感を買ったキケロは殺されてしまう。世渡り上手の渡り鳥キケロも命運尽きたというわけです。
ボクは評価が分かれる人物が好きです。評価が偏って英雄視されているのは、どうも怪しい。例えば織田信長なんて、同時代に生きていた抵抗勢力から見れば悪魔的な存在であったに違いない。今読んでいるキケロも、稀代の雄弁家であり「祖国の父」とまで称えられながら、晩年はかなり日和見主義に陥り情けない。でもだからこそ人間くさいじゃないですか、隙を見せない完璧な人生よりずっといいと感じます。

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