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子供のいない相続人がいる場合に起こり得る相続問題

相続に関するお悩みは、家族の関係性や個人の価値観、想いによって様々です。
特に、今回のような子供がいない相続人がいる場合には、後々、思いがけない問題が引き起こされるかも知れません。
 
遺産分割協議の中で、目先の損得だけにとらわれず、将来の遺産の行方も見据えた協議が出来れば、後々のリスク軽減にも繋げられるのではないかと考えます。
 
これからお伝えする、最近起こった出来事も、子供がいない相続人と不動産を共有名義にしてしまったことで起こってしまったお悩みです。
 
今後の相続について、ひとつの参考になりましたら幸いです。
 
ご主人を5年前に亡くされた奥様からのご相談です。
 
その奥様には子供が2人いて、同居している長男には妻と子供が1人、
次男は結婚しておりますが子供はいません。
 
ご主人を亡くされた当時、遺言書が無かったので、相続人3人で遺産分割協議を行いました。
遺産内容は、以下の通りです。(計 1億6,000万円)
 
・自宅の土地建物   評価額:土地8,000万円、建物2,000万円
・店舗の土地建物   評価額:土地3,000万円、建物1,000万円
※ご主人が営む店舗(長男が後継者)
・預貯金 2,000万円
 
遺産分割協議時に出た意見など
・相続税対策の為、小規模宅地の特例を活用したい。
 自宅土地建物→妻or長男、店舗土地建物→長男
「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
・奥様は、今後の生活費として1,000万円はほしい。
・次男は、法定相続分をもらいたいと主張。
(法定相続分:妻1/2、長男1/4、次男1/4)
 
なかなか3人で話す時間がとれなかったということもありますが、遺産分割協議が整わないまま数カ月が過ぎてしまいました。
遺産分割協議には期限はありませんが、相続税がかかる場合や「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減」を活用するには、原則、期限内申告(相続税の申告・納税の期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内)が条件となります。
「配偶者の税額の軽減」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
 
仮に、遺産分割協議が完了していなくても、相続税の申告期限が延びることはなく、各相続人が法定相続分で相続したものとして申告し、各自が申告期限内に相続税を納めることになります。
(今回のご家族の場合には、約1,700万円の納税が必要)
 
ちなみに、「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減」は、期限が過ぎても一定の要件や手続きのもと適用できることもありますので、その場合には、遺産分割協議がまとまった後に修正申告または更正の請求を行ってください(期限があるので注意)。
 
後から戻せるとは言え、一時的な税金の負担が大きいため、納税期限がせまる焦りから、以下のように相続されたとのことでした。
 
・妻  :自宅の土地3/4・建物1/2(共有名義)、預貯金1,000万円 → 計8,000万円
・長男:店舗の土地・建物 → 計4,000万円
・次男:自宅の土地1/4・建物1/2(共有名義)、預貯金1,000万円 → 計4,000万円
 
奥様は、親子3人が仲良いので、次男と共有名義にしても特に問題ないと思っていたそうです。
 
ところが、昨年、次男が亡くなり、次男の持ち分の一部が、次男の妻に相続されました。
(子がいない場合の法定相続分:妻2/3、母1/3)
 
奥様からは、このままだと仮に次男の妻が亡くなったら、
「自宅の持ち分は妻の親へ、親がいない場合には妻の兄弟に相続されてしまう」
という、不安を持たれておりました。
 


結局、今回の問題は、次男の妻の持ち分を長男が買い取ることで解決しましたが、遺産分割の際は将来をしっかり考えたうえで協議することが望まれます。
仮に、次男より母が先に亡くなったとしても、次男の持ち分が妻に行くことは当然考えられます。
 
この事例の落とし穴としては、
・相続税申告(納税)までの期間(10か月)を見誤り、遺産分割協議がギリギリになってしまった
・妻と子供のいない次男を「共有名義」にしてしまった
というところです。
 
焦りからその場しのぎの相続は、後々のお悩みやトラブルに発展しかねません。
法定通りに相続ができたとしても、揉めることなく遺産分割協議を終えることができたとしても、あらゆる方向から将来を見据えた協議を念頭に置いて進めたいものです。
 
弊社は、1回2時間×2回迄、無料相談をさせていただいております。
遺産分割協議で不安や疑問がある方は、お早めにご連絡ください。
 
【HP】
http://souzokusalon-ueno.com/

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