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遺産分割時の不動産評価~不動産評価額に対する相続人の思惑~

遺産相続の際、財産の中に不動産(土地・建物)が含まれる場合があります。
(※国税庁の統計によると、相続財産の約半分が不動産)
それぞれの相続人の立場や考え方によっては、遺産分割における不動産の評価方法には特に決まりがないため、分割方法を巡り、争いや問題が起きるケースが多く見受けられます。
 
先日もこのようなご相談がありました。
夫が亡くなり、相続人は「妻」と「(夫の)先妻との子A」の2人でした。
 
夫の財産は、
・妻と一緒に暮らしていた家(土地建物)
・預貯金5,000万円
です。
 
遺言が無かったので、妻とAとで遺産分割協議することになったのですが、
妻は、Aから「法定相続分(財産の1/2)を現金でほしい」と要求されたのです。
妻は財産の1/2をAに相続させることについては渋々了承したものの、今後の生活のことを考えると、妻自身も預貯金を少しでも多くほしいと思うのは言うまでもありません。
 
妻とAとの遺産分割協議で、「家(土地建物)をいくらで評価するか」で議論になったのです。
 
一般的に、不動産は、遺産分割時の価格で評価されると言われておりますが、お互いが納得さえすれば、どの評価方法で決めても構いません。
 
ちなみに、以下が主な不動産の評価方法になります。
(1)実勢価格(時価)
   実際に不動産が市場で取引される際の評価額
   取引価格は様々な条件によって左右するため、正確に算定するのは難しい
   不動産業者に依頼した場合、業者によって査定額が異なることが多い
 
(2)公示地価(基準地価)
   国や都道府県が年1回のペースで公表している土地価格
   特定の標準地に関する地価で、標準地以外の土地については定められていない
 
(3)相続税評価額
     不動産にかかる相続税を計算する時の基準になる価格
   実勢価格や公示地価の8割程度になることが多い
 
(4)固定資産税評価額
     固定資産税を計算する時の基準になる価格
     公示地価や実勢価格の7割程度になることが多い
 
(5)鑑定評価額
     不動産鑑定士が計算する評価額
     費用が数十万円くらいかかる
 
Aは、不動産価格を高く見積もったほうが得なので、不動産業者に査定額を依頼して「実勢価格の4,000万円」と主張してきました。(上記評価方法(1)利用)
 
一方、妻は一番評価額の低い「固定資産税評価額3,000万円」で対抗したのです。(上記評価方法(4)利用)

以下、それぞれの主張を優先した場合の、妻の受け取れる預貯金です。
 
【不動産価格が4,000万円だった場合】全財産9,000万円
妻    預貯金  500万円(相続分4,500万円-不動産4,000万円)
A     預貯金4,500万円
 
【不動産価格が3,000万円だった場合】全財産8,000万円
妻    預貯金1,000万円(相続分4,000万円-不動産3,000万円)
A   預貯金4,000万円
 
わかりやすく説明させていただくために金額は丸めておりますが、不動産の価格をいくらで評価するかによって、双方が受け取れる金銭の額に大きく影響します。
もし、不動産が財産の多くを占めている方であれば、その額が大きく広がります。
 
今回の場合、最後まで双方の協議はまとまらず、お互いが弁護士を付けて調停となり、最終的には、不動産鑑定士の鑑定評価に基づいて和解することになりました。
 
このように、それぞれの立場や思惑から、不動産をもらう方はより低い評価額、不動産をもらわない方はより高い評価額を主張し、思いがけないトラブルにも発展することも少なくありません。
 
時には時間や労力をかけてでも、調停で話し合わなければならないこともあるかもしれません。
ですので、お金をかけてでも弁護士や不動産鑑定士にお願いしたほうが良い時もあります。
 
将来の遺産分割に不安やご心配、気になることなどありましたら、お気軽にご連絡ください。
弊社は、1回2時間×2回迄、無料相談をさせていただいております。




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