見出し画像

『鎧/人間』ちいかわ考察

 前章では"ちいかわ族"の生態について考察した。今回はそんな"ちいかわ族"と人間との関係性について考察する。

鎧さん

 『ちいかわ』の世界には通称"鎧さん"と呼ばれる人間が複数人登場する。彼らは"ちいかわ族"に仕事を与える雇用主的な存在である。鎧さんの多くは"ちいかわ族"と友好的な関係を築いている。
 だがある時、"ちいかわ族"と鍋を囲んだ鎧さんが、その帰りに他の鎧さん(その見た目からして上司っぽい)から「仲良くしすぎだ」と言われてしまう。前章で述べたように、鎧さんは"ちいかわ族"の"監視役"でもあることが示唆されている。その名の通り、常に鎧を装着していることから見ても、"ちいかわ族"との距離感は単なる雇用上の関係にとどまらない事情があるように思える。


鎧を着る理由

 鎧さんが常に鎧を装着している理由は、いつ"でかつよ化"するかもわからない"ちいかわ族"から身を護るためではないだろうか。さらに、この世界においては"身体"を奪う者、入れ替える装置、実際に入れ替わった者たち、キノコに寄生される者などが存在することもあり、容易に肌身をさらすのは危険であることが窺える。


 現段階では、鎧を装着していない人間か登場したことはない。鎧さんが鎧を"脱ぐ"瞬間、あるいは人間が鎧を必要としない局面があるとすれば、それは"ちいかわ族"から距離を遠くおいたときだろう。"ちいかわ族"から離れることで"身体"を奪われるリスクが解消されるかは不明だが、少なくとも"でかつよ"に襲われることはなくなる。

"人間"はどこにいるのか

 それはつまり、"ちいかわ族"と接触する場所では鎧を装着する必要があり、この世界は安全な人間の居住区域と危険なちいかわの居住区域とに分けられている、ということである。そこから推測するに、外部の人間が"ちいかわ族"をとある人工の区域に隔離し、そこで鎧さんに"監視"をさせ、なおかつある程度の"天候"や"食糧"の調整をしているのではないだろうか。

 以前、『ちいかわ』では食糧が"枯渇"する事件が起きた(通称『枯渇編』)。先に述べた説が正しければ、外部の人間が食糧の供給を一時中断することで、増えすぎた"ちいかわ族"の数を"調整"したということにならないだろうか。


生かされる"ちいかわ族"

 人間にとって"ちいかわ族"が単に厄介な存在でしかないとすれば、最初から殲滅する方が合理的であるはずだが、"でかつよ"のリスクを負ってまで、個体数を調整しつつ共存を図っているのは、"ちいかわ族"が人間にとって、何かしらの重要な理由からなくてはならない存在であることは間違いない。


 次回はその"重要な理由"を解き明かすべく、『ちいかわ』の過去を掘り下げていきたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?