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『それなに?』ちいかわ考察

 本稿では漫画『ちいかわ』に登場する『謎の白い物体』について考察する。

白い物体

 謎の白い物体が登場したのは、『カブトムシ編』の終盤である。諸事情あってカブトムシとお別れしたちいかわが消沈していたところ、それを慰めようとハチワレとともにやってきたうさぎが手に持っていた場面である

 地面に落ちた途端にゆっくり溶けたこの物体、ハチワレたちの反応の通り正体が全然わかんない

 あまりにも意味不明な物体だが、うさぎがこれを持ってきた理由は、このタイミングではカブトムシを失ったちいかわ、あるいはカブトムシと関連付くはずである。落ち込んだちいかわを元気づけるために持ってきたのだとすれば成功しているように見える。だがそれだけのためであれば、読者にとってもわかりやすいものにするのではないだろうか。1つの長編の終わりに、謎すぎるアイテムを1回きり登場させるのは不可解である。うさぎが度々持ってくるアイテムはどれも癖の強い代物だが、どれも現実世界にもあるものがモチーフとなっていたり、物語の根幹に関わっていたりする。おそらくこの物体は今後の展開の伏線として用意されたものだろう。

うさぎの真意

 うさぎがこの物体を持ってきた理由が他にあるとすれば、カブトムシと関連付くものである可能性が高い。カブトムシは擬態型、つまり"危ないヤツ"だった。カブトムシはちいかわを捕食するために近付いたとすれば、居住地の知られているちいかわはカブトムシに狙われるおそれがある。うさぎはカブトムシの再来に備えて、ちいかわを守るための布石を打ったのではないだろうか
 仮にそうだとすれば、この物体は危ないヤツに対して何らかの対抗的効果を及ぼすアイテムということになる。

うさぎの特技

 ここで若干脱線するが、ちいかわやハチワレと違って、うさぎは極めて野性的な性格をしているため、自然の中で生活している可能性は高い。そんなうさぎには食料を見つけるという特技がある。

 そんなうさぎが、最も関心を寄せているのが"キノコ"である。

 以前、ラッコの過去を考察した際に、『ちいかわ』の世界におけるキノコの特異性について考察した。
 

 作中に登場する様々なキノコが、現実世界に存在するキノコをモデルにしているかは不明だが、今回、ゆっくり溶ける白いキノコの存在を確認することができた。ヒトヨタケである。

Wikipediaより


ヒトヨタケ

 漢字表記で『一夜茸』。つまり"一夜限りの茸"である。ヒトヨタケにはいくつかの種があるが、総じて成熟するにつれて液状になるという特性がある。液体化する速度は非常に速い。また、抗酸化作用を持つエルゴチオネインに加えて、アミノ酸やビタミン、ミネラルを多く含んでいるため、血中のコレステロール値を下げる効果や、内臓の機能を高め、弱い体質を徐々に健康な体にする働きを持つ種もある。
 ナガノ氏はこのキノコをモチーフに採用したのではないだろうか。


やはりキノコは特別

 ヒトヨタケが液体化するのは胞子を散布するためである。
 うさぎが持ってきた白い物体が溶けるキノコだとすれば、それに寄生された生物はどうなるのだろうか。"処理"の方法を心得ている者たちは問題ないが、"処理"の方法を教わらずに育った者は……


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