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『ちいかわ/でかつよ』ちいかわ考察

 本稿では漫画『ちいかわ』を徹底解剖すべく、はじめに"ちいかわ族"の正体について、仮説を立てながら紐解いていく。
 今回は第1章として、ちいかわ族の生態について考察する。

"ちいかわ族"とは

 この名称は読者による非公式的なものであり、漫画『ちいかわ』に登場する、所謂"なんか小さくてかわいいやつ"と見なされたキャラクター達の総称である。

生態

・小さくてかわいい
・人間と同等の食文化に精通している
・人間の言葉を理解し、一部のちいかわ族は話すことができる

 以上の点からわかるように、ちいかわ族は人間の社会性や食文化に少なからず好感を抱いている。 
 そして漫画第1巻の冒頭では、作者ナガノ氏本人の理想であるかと思われる暮らしのあり方が、『ちいかわ』のイラストとともに記されている。


"でかつよ"化

 だが"ちいかわ族"の生態には、もう一つ重要な点が示唆されている。それは「何らかの要因により、巨大で凶暴な生物"でかつよ"に変異してしまう」という点である。"でかつよ"という名称も"ちいかわ族"と同じく非公式的な通称であり、おそらくはナガノ氏が"でかくて強いやつ"と紹介したことに由来する。この"でかつよ"という生物に変異してしまう要因は未だに明かされていない。




"でかつよ"化の要因

 そもそも"ちいかわ族"が"でかつよ"化するという説は立証されたものではない。だがそれを暗に示す描写は多い。その中でも特に核心に近い台詞が、第1巻32頁に見られる。

「だから なんだってんだよ」

これは主人公であるちいかわに対して、獅子のような姿をしたでかつよ(バリ島の聖獣バロンと酷似している)が言い放った台詞である。一見不可解な台詞のようにも見えるが、次のコマで

「「なんだ」ってんだよ だから……」

と"なんだ"が強調されている。それに対しちいかわは衝撃を受けたような表情をしている。ここから推測するに、"なんだ"とは"成んだ"という意味であると思われる。実際に後の話では何体かの"ちいかわ族"が"でかつよ"に"成った"かのように描写されている。


 ではなぜ"でかつよ"化してしまうのか。ここから作中の描写や台詞を参考にしながら考察していく。
 現時点では、"ちいかわ族"が"でかつよ"化するまでの具体的な過程は描かれていない。だがこの作品の性質上、つまり現代社会人(なかでも派遣労働者)と何ら変わらない生活をおくる"ちいかわ族"にとっては、最も避け難いもののひとつに"ストレス"があると考えられる。

 "でかつよ"になってしまえば、"討伐"の対象となり、追われる身にはなるものの、今までの過酷な社会生活からは解放される。ここで仮に『"ちいかわ族"は"ストレス"を一定量以上溜め込むことで"でかつよ"化する』という説を唱えた場合、それはそれで成立しそうではあるものの、"ストレス"のみが要因であるにしては、あまりにも"ちいかわ"族の減少率が低いように思われる。スーパーアルバイターとして雇用されていた"ちいかわ族"が"でかつよ"化するのであれば、ゴブリン達に幽閉され、ストレスフルな環境下で数日間過ごしたちいかわ達が"でかつよ"化してもおかしくはない。とは言え、幽閉されたちいかわ達も極限状態であったことに疑う余地はなく、オデの暴走(これはストレスからくる"覚醒"か?)によって、ちいかわ達は"でかつよ"化を間一髪免れたという可能性も否めない。いずれにせよ、"でかつよ"化の要因に"ストレス"が関与している可能性は高い。

 以上の点から、ここでは"ちいかわ族"は"ストレス+他の要因"、あるいは"ストレス等からくる何らかの要因"によって"でかつよ"化すると仮定する。


"でかつよ"化予防対策

 少し脱線するが、『ちいかわ』の世界には"鎧さん"というキャラクターが登場する。ここでは詳細は割愛するが、彼らは"ちいかわ族"の"上司"的な存在でありながら、"監視役"であることも示唆されている。仮にそうだとすれば、彼らは"ちいかわ族"の"でかつよ"化を極力阻止したいと考えているはずであり、"ちいかわ族"に対し"でかつよ"化予防対策を水面下で行っている可能性がある。そしておそらくは"でかつよ"化する事実を直接的に伝えるようなことはせず、"でかつよ"化の"要因"を回避させるように促すことで、"ちいかわ"族にショックを与えないようにするという配慮がなされているかと思われる。

 "鎧さん"が"ちいかわ族"に様々な危険を悟られないように呼びかけるには、そもそも発信者が"鎧さん"側であることを極力明かさない方が都合が良いだろう。そこで"鎧さん"が考案したものが"むちゃうマン"であると推測する。むちゃうマンについての詳細は別の機会に解説するが、ヨーグルトのイメージキャラクターとして、"ちいかわ族"から人気を博している彼が、音楽と踊りに合わせて繰り返し言う台詞こそ「腸内環境整えろ」である。

 仮にこの「腸内環境整えろ」が、"でかつよ"化との関連性があるとすれば、"腸内環境を乱さない"ことが"でかつよ"化防止につながることになる。そして腸内環境が乱れる原因はストレスによるところが大きい。

 以上の点から、'ちいかわ"族が"でかつよ"化する要因は、"ストレス等からくる腸内環境の悪化"であると推測する。

"でかつよ"化するとどうなるのか

 では"鎧さん"の努力もむなしく"でかつよ"化してしまった"ちいかわ族"の身には何が起こるのか

・爪やツノなど、身体に攻撃的な部位が備わったり、巨大化したりする。
・力を得たことで次第に性格も凶暴化していく。
・やがて味覚も変化し、特に肉を好むようになる。


 作中には"でかつよ"化した自身を喜ぶ個体や、(若干事情は異なるが)「戻りたい」と願う個体が存在する。第1巻に登場した魔女のようなキャラクターがちいかわ達に「なりたいやつがいるんじゃ……こういう……風に……」と言って"身体"を奪い去ろうとするエピソードがあるが、この「なりたいやつ」こそがまさに"でかつよ"化してしまった者たちであると推測する。

 しかし"でかつよ"化してしまった個体は、"鎧さん"や"ちいかわ族"から危険生物と見なされ"討伐"の対象となる。したがって、"でかつよ"は人里離れた場所で暮らすことを余儀なくされ、やがて"討伐"された際にはドローンのような機械でどこかへ運ばれてしまう。

なお、"ちいかわ族"もこの機械で運ばれる。


元には戻れないのか

 現段階では、一度"でかつよ"化してしまった個体が"ちいかわ族"に「戻った」ような描写はない。だからと言って、「"ちいかわ族"に戻る方法はない」と断定するにはまだ早い。また、「戻った」個体が確認できないにせよ、上に述べた魔女のような要領で"身体"を「入れ替えた」個体が存在する点も見過ごせない。作中では"身体"の入れ替わりや離脱、移動等、"身体"が"容れ物"として描かれる場面も少なくはない。いずれ"でかつよ"が"ちいかわ族"に「戻る」方法が明かされる可能性は大いにあるだろう。





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