#2『俳優(敬称略)』

 私の母親はよく俳優の名前を役名で呼ぶ。
 例を挙げると、滝藤賢一を「ワンさん」、松重豊を「五郎さん」、伊藤健太郎を「若君」と呼んでいる。それぞれ、『踊る大捜査線』『孤独のグルメ』『アシガール』での役名である。

 母親が役名で呼ぶ人とそうではない人には、いったいどんな違いがあるのだろうかと考えたことがあるが、未だに結論は出ていない。上野樹里を「のだめ」と呼んでも、阿部寛を「ルシウス」と読んでも良いはずなのに、なぜかそう呼ぶことはない。母親なりの拘りがあるのだろうか。

 役名で呼ばれているのならまだ良い方だ。活動名も役名も覚えられていない俳優が何名かいる。
 代表的なのが野間口徹だ。母親は彼のことを「公安」と呼んでいる。恐らく、ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係 』での「田中一郎」役のことを指してそう呼んでいるのだろう。公安部の役ではないドラマを見ている最中に「あ、公安が出てる!」と突然言われても、何のこっちゃ分からない。
 ちなみに、田中要次は「あるよ」と呼ばれている。台詞だけで人物が特定できてしまうのは逆に凄い。凄いが、そろそろ俳優の名前を覚えても良い頃な気がする。

 さらに酷いのはTEAM NACSの5人である。
 それぞれの呼び方はこうだ。

森崎博之→リーダー
大泉洋→大泉洋
安田顕→安田くん
戸次重幸→安田くんじゃない方
音尾琢真→?

 本来「じゃない方」という言葉は、2人(2つ)で1セットの時に使うものだ。それを5人組に対して使用してしまったら、普通であれば会話は成り立たない。しかしながら、我が家では日常的に「安田くんじゃない方」という言葉が飛び交っている。
 母親が音尾琢真について言及している場面に立ち会ったことはないが、恐らく「安田くんじゃない方じゃない方」とか呼んだりしているのではないかと睨んでいる。

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