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日記・エッセイ

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日々の日記、または過去のエッセイ。
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#1日1エッセイ

エッセイ#30『校章と組章』

 中学生の時、私は科学部の所属しており、毎放課後は旧校舎の理科室に屯していた。入部したてでまだ友達もほとんどいなかった時、よく話しかけてくれたのはT先輩である。若い頃の鳥肌実を、縦に小さく横の大きくした感じの見た目だ。  「ねえねえ君、これ回るんだよ。」そう言ってT先輩が取り出したのは、学ランの襟に付いた「組章」である。回るとは一体どういうことか。しばらく話を聞いてもよくわからなかったので、先輩は実際に回して見せてくれた。  ここで簡単に組章の説明をすると、学ランの襟に空いた

エッセイ#29『石油ストーブ』

 毎年この季節になると、中学生時代の係を思い出す。  私の母校には、生物係や刑事係の他にも国語係や数学係のような教科係があり、クラスの全員が何らかの係に属するような仕組みになっていた。このシステムは学期毎に一新され、長期休暇明け最初の週には必ず係決めのホームルームが催される。私は毎年3学期には、ここに所属しようと決めていた係があった。  その係とは、「給油係」だ。なんだかガソリンスタンドみたいな名前だが、この場合の油は「灯油」のことである。つまり給油係とは、冬季限定で教室に設

エッセイ#26『絵本も出るらしいし』

 話は数ヶ月前に遡る。品田遊氏のエッセイ『キリンに雷が落ちてどうする 少し考える日々』を読んでいると、小林賢太郎の文字が目に入ってきた。思わず「おっ!」と発してしまった。人生で初めて影響を受けた人物である彼の名前を目にすると、ただそれだけで心臓がバクバクする。「あ〜やっぱ知ってる人は知ってんだ!」という気持ちでいっぱいになるのだ。  ただ、この本は日記をまとめたものなので実際に話題に上がったのは1年以上も前のことになる。しかし、それでも嬉しかった。ちなみにこの時、私は電車に乗