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手(2)

手を繋いで歩く事は無かった。

でも私がいつか手を繋げるんじゃないかと
淡い期待をしていたのには理由がある。

欲望を満たした後、
クタッとベッドに横たわる私に
『寒くないかい?』
と彼はいつもふとんをかけてくれた。
私がどんな姿勢で寝ていても、
いつも彼の手は私の手の側にあった。

繋ぐことはないけど、
いつも2cmほど離れて彼の手がある。

繋いでみようかな、と何度思ったか分からない。
この手に大事にされたいなと思いながらいつも見ていた。

目を瞑って彼の指を触りながら、
長い指や血管の凹凸を触りながら
最近あった事を話したりもした。

彼の大きな手を触って、
骨の感触を辿り、血管をフニフニ触る。
なんだか癒される。頑張って生きてる手だ。
自分の手にはない、男の感触。

手を繋ぐ行為は私にとっては『大切にしたい』という意味があるのだと知った。

名前のない関係でも
いつも手が側にあったり、手を自由に触らせてくれる事が続くと、私は淡い期待を持った。

同じ気持ちになってはくれないだろうか。
好きになってくれないかな。
その手で、私を大切に想ってほしいと願った。


繋ぐことはなかったけど、
手を繋ぎたいと思った時、
私はその人の事が好きなんだと知った。

この歳になって初めて知った。
『手を繋ぐ』っていうのは、そこに愛がある。


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