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ジョーは天然カウンセラー? るいの心の扉は開けられた:カムカムエブリバディ

新年は3日から放映された朝ドラ「カムカムエブリバディ」。ジョーがあの男の子だったらいいな。きっとあの男の子だよね。サニーサイドはジョーにとっては特別なんだ、というNight&Dayマスターの話、そして月曜に語られたジョーの思い出に、やっぱりそうだ!定一さんの店に来ていたあの男の子だ!とほぼ確信に変わりファンが湧いた。Twitterも大盛り上がりでした。

先週からの流れで心が動いたポイントを書き留めておきます。

るいの心の扉を開けるジョー

サマーフェスティバルのあの日。「On the Sunny Side of the Street」を聞くと、忘れていた、忘れていたかった母との思い出が蘇り、最後まで聞けなくて店を飛び出してしまう、るい。

サッチモちゃんにとって「特別な曲」じゃなくて
「すごく特別な曲」なんやね

byジョー

昔、この曲を聞いたときに表情が変わったのを見て、るいにとってこの曲が「特別な曲」だと感じたジョーが、よかれと思ってステージで吹いた「On the Sunny Side of the Street」。でも、るいは最後まで聞かず飛び出していったのを見て「すごく特別な曲」なんだねというジョー。

この曲を聞くと何か嫌な事でも思い出すの?

みたいな言い方じゃなくて

すごく特別な曲なんだね

という言い方をサラッと言えちゃうジョーに
グッと心をつかまれました。

ジョーはこうやって少しずつ、るいの
固く閉ざされていた心の扉を開いていく。
本人はきっと無自覚なんだろうけど。

音楽は優しい記憶も悲しい記憶も呼び戻すチカラがある。

本人も気が付かないるいの本音

るいにとっては、優しかった母、安子との想い出の中に流れている特別な曲。でもそのことすら忘れていた。忘れたくて記憶の扉の奥にしまっていた。なのにこじ開けられてしまった。ジョーはこじ開けたつもりは全然ないけど。

あなたのせいです。忘れたかったのに。
忘れたくて岡山を出たのに。

byるい

思わず怒りをぶつけて立ち去ってしまう、るい。
言い当てられたくない本音、知られたくなかったことを指摘されると、ついカッとなってしまう。身に覚えあり(笑) 

本人も気づいていなかった本当のところを言い当てられた。
グサッと切り込まれてつい怒りをジョーにぶつけてしまった。
しかも言い当てた本人も、そんな深いところに届いたと思ってない。

ドラマを観ているこちらだけがわかるふたりの心理。面白いですね。

ジョーの「ひなたの道」

お互い、相手を怒らせてしまったと思い込んでたふたりですが、いつものように食べこぼすジョーを見て、るいがシミ抜きにすっ飛んで行き誤解がとける。るいの恐るべきクリーニング屋魂(笑) それだけじゃなく、ジョーのことが気になり始めてたからだとは思いますが…♡

「On the Sunny Side of the Street」はジョーにとっても特別だった。

ぼくの一番古い記憶は「On the Sunny Side of the Street」なんや。
今でも耳によみがえる。あのイントロの高らかなトランペット。

シンガーでもないおじさんがマイク奪って歌い出して。みんな圧倒されてた。英語やったし何言ってるかわからなかったけど、そのときのぼくには見えてた。ひなたの道が。これから自分が歩いていく道は明るい光に照らされている。そんな予感でいっぱいやった。

byジョー

目の前で歌手でもないおじさん(たぶん定一さん。中の人はベテラン歌手)が突然(しかも、べらぼうにカッコよくパワフルに)歌い出した思い出の曲。きっとそれまで戦災孤児で辛いことばかりだったジョーの前に、定一さんの歌声がまだ見えない未来を、日なたの道を照らしてくれたんだろう。魂のこもった定一さんの歌にはそんなチカラがあった。

るいの「ひなたの道」

自分が「On the Sunny Side of the Street」を聞いたのは喫茶店だった。喫茶店でのレコードだった、とぽつりぽつりと思い出を言葉にする、るい。

小さいころ、何回か連れていかれました。
ずっと、忘れとりました。
しゃあけど、サマーフェスティバルで
大月さんのトランペット聞いて思い出しました。

byるい

喫茶店に連れて行ってくれたのはお母さん、という言葉も、すんなりとは口に出せなかった。10年以上「お母さん」と口にしたことなかったんじゃないだろうか。

お父さんとお母さんの大切な歌じゃ。
ひなたの道を見つけて歩いていこうね、るい。
母はそう言うたんです。

せえのに。母は私を捨てました。進駐軍さんと恋をして。
幼かった私を置いてアメリカへ行ってしもうた。
じゃから、思い出しとうなかった。

優しかった頃の、私だけを見てくれよった母の笑顔、
思い出しとうなかったんです。

思い出の中の母の笑顔が優しければ優しいほど、なんで? なんで置いて行ってしまったの?という思いが強くなり、思い出さないようにしていたのかも。頭の中の笑顔。悲しかった記憶。別れを告げたあの日。浮かんでは消し、浮かんでは消し、いつしか記憶にかたく蓋をしてしまった。記憶の扉に頑丈なカギをかけてしまったのでしょう。

「On the Sunny Side of the Street」と母がるいに投げかけてくれた「ひなたの道」は、優しかった母の記憶、そして優しかったのに、私だけに愛情を注いでくれたのに、自分を置いていってしまった母への悲しさと一緒になってしまったから、思い出したくなくて記憶の彼方へ追いやってしまった。

ジョーにとっての「ひなたの道」は光とともに記憶されていたけど、るいにとっての「ひなたの道」は安子という光と置いて行かれたという思いの影とセットになっていたのだね。

ジョーは天然カウンセラー?

るいの話を聞いて

そうだったんだね…とか
そんな想い出が…とか
岡山のどこかで会っていたかもしれないね

なんて反応じゃなくて、ジョーの口から思わず出た言葉が

そうか、会いたいんやな。お母さんに。

お母さんのことは思い出したくない、と言ってるのに!
お母さんに会いたいなんてひとことも言ってないのに!
この人は何を言ってるのか!?

すっかり呆れたるいはジョーを追い返そうとします。
生乾きのシャツで(笑)。
竹村夫妻のナイスプレーでケンカ別れにならずにすみます。

******

忘れたい、思い出したくない、は、さびしい気持ちの裏返し。
あんなに優しくて大好きだったお母さん。
本当はずっと一緒にいたかった。

るい自身も気が付いてない
るいの気持ちの奥底に抑え込んでいた想いを
あっさりと見抜いて口にしてしまうジョー。

人が口に出した言葉は
実は本当の気持ちとは限らない。

サマーフェスティバルの「特別」じゃなくて「すごく特別」発言といい、人の気持ちを見抜いて口に出しちゃう。その他意がない感じがジョーなんだけど、本人も自覚していない気持ちを「こう見えてますよ」って教えてあげるって、まるでカウンセラーじゃないですか。ジョーは天然のカウンセラーなのか(笑) ジョー自身が意識してないから、カウンセラーにはなれなそうだけど、るいとジョーのやりとりがトラウマ(と自分が思っている心の澱)、思い込みをほどいていくカウンセリングみたいだなあと思って観てました。

錠一郎は「錠」=カギを開ける人?

るいが忘れていた記憶の扉を開けたジョー。錠一郎だから「錠」=カギを開けた、という意見をTwitterで見かけてなるほど!と。心の扉のカギを開ける人、という意味も込められてるのかな。教えて公式さん(笑)

忘れたいと強く思っている過去は、一度ガッツリ向き合わないと本当の意味では忘れられない。しっかり自分の中で消化しないと、たぶんまたどこかで何度も自分の頭の中によみがえってくる。何かの拍子に心のカギは開けられてしまう。そのたびに苦しくなる。生きづらさを抱えていくことになる

そんなことがわかるには、まだるいは若いんだよなあ。
天然カウンセラーのジョーに少しずつほぐされながら、何度かぶつかりながら自分の気持ちと向き合っていくんでしょうね。

もしかしてサッチモちゃんもいたんかなと思って。
あの頃の岡山に。

byジョー

あの頃の岡山で
定一さんの喫茶店で
すれ違っていたんだよ!

とジョーとるい、ふたりに言いたくてたまらなくなる(笑)

るいは本当に忘れていたのか

お母さんは私を捨てた。

それまで口に出せなかったことを口に出せたことは
つらい過去と向き合う第一歩。

安子編が放映されていたとき、こんな風に思っていました。

「るいは安子を恨んで生きていく」と聞いていたけれど、実は少し違うのではないか。あの日、お母さんを拒絶してしまった自分を許せなくて、自分の行動のせいで優しかった母を傷つけてしまったのでは、と成長するにつれ思うようになって、苦しくて記憶に蓋をしてしまったのかな、と思っていました。無意識に自分の罪の意識にさいなまれていて、でも幼かったるいにはどうすることもできなくて。

でも週明けの放映を見て、自分が拒絶したこと、母にぶつけた「I hate you」を覚えていない? やっぱり安子が自分を捨てた、と恨んでいるのかな。

自分を捨てた、お母さんが悪い、と思うことで、自分のせいではない、あのとき自分がお母さんを拒絶したのは仕方なかった、と自分を守ってきたのかもしれないし。

その辺りは、少しずつ判明するのでしょうが、なんか全部が繋がったときには泣いてしまいそうな気がします。

親から子へ、未来に繋がる想い

母、安子に複雑な思いを抱えて、記憶が蘇ると逃げ出したり、記憶に蓋をしてしまうるいだけど、「どこの国とも自由に」「ひなたの道を歩いてほしい」と父、稔が願いを込めて、自分の名前の由来になったルイ・アームストロングに、ジャズに自然とかかわりを持っていく。

記憶の扉を開けられてジョーにイラつきながらも、なぜか気になってしまう。恋の始まりも予感させ。

ルイ・アームストロングのレコードを買おう、と思えたのも、無意識に記憶に向き合おうとしている、るいの小さくも大きな一歩だと思えて。

るいは不本意かもしれないけど、記憶の扉が自然に開けられていって。少しずつ、るいの記憶が風通し良くなって。るいが忘れたいと思っている母、安子の、そして稔の想いが、るいの未来に繋がっていく感じがとてもいい。三世代100年の物語はまだまだ中盤、この先が楽しみです。

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勝気だけど憎めないライバル、ベリー
育ちがよくキザで上昇志向の強いトミー
ジョーの過去を知ってるであろうマスター
るいをあたたかく見守る竹村夫妻と商店街のみなさん

それぞれの人生も気になりつつ
カムカムるい編、ますます面白くなってきましたよ~

また長くなってしまった…
長文を読んでくださってありがとうございます。
もう少しコンパクトにまとめたい、と思いつつ
毎日15分で、こんなに想いをあふれさせてしまう朝ドラって素晴らしい!とnoteの中心で朝ドラ愛を叫んでしまう今日このごろです。

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