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英語で恋をして英語で母になり英語で絶たれた娘との絆~朝ドラ「カムカムエブリバディ」

安子から娘のるいへ。木曜日から本格的にヒロインがバトンタッチ。週半ばであの母娘断絶の瞬間を目撃して、いまだ衝撃が抜けきれません。でも週半ばでよかったのかも。あのシーンがが金曜日で次週に続く、じゃなくてよかった。週末、クリスマスを泣きながら過ごすハメになるところだった。

考察が甘かった

安子がアメリカへ行くこと、娘のるいが母を恨んで生きていく、という情報は事前に何となく耳に挟んでいました。

でもまさか、あんな別れ方をするなんて。

お母さん置いて行かないで!と泣きじゃくる娘るいと背中で泣く母安子、のような定番シーン、もしくは決定的瞬間は描かれず、のちに回想シーンで挟まれたりなんかして徐々に明らかになるとか、そんな展開を予想していた自分が甘かった。

思い出しても胸がズキズキする。
あんなに仲の良かった親子が…

別れだけでなく再会、誕生、と様々な人生が詰まっていた水曜日の「カムカムエブリバディ」。感情にまかせて書いたので、全然まとまってなくて文章長いです。でもあの衝撃を誰かと共有したくて。感じたことをつらつらと書きとめておきます。

るいがもっと幼ければ 

勇が安子とロバートを目撃していなければ。算太が少し遅く起きていれば。安子が兄を探すのを誰かに頼んでいれば。るいに算太を探しに行くと正直に言っていれば。るいが電車に乗れないくらい少し幼ければ。

人生はたらればとタイミング。 

何かひとつでも違っていれば。せめて母と娘があんな悲しい別れ方をすることにはならなかったんじゃないか。

小学生になったばかりのるい、ほんの6歳の子どもが汽車に乗って大阪へ行けるんだろうか、電車賃は? とか最初は疑問に思ったのですが、千吉さんに連れられて大阪に何度か行っていただろうし、おこづかいももらっていたのかも。賢い子だから大人のやることをきちんと見ていたんじゃないか。

お母さんを探しに家を飛び出したけど、結局は岡山の町で途方にくれて泣いている、だけだったらよかったのに。

そんな風に「たられば」ばかり考えてしまう。
ドラマなのにのめり込みすぎ?
いいんです。それが朝ドラだから。

るいが思い込んだ「事実」人は見たいように見る

安子の事実

るいのために、とコツコツと働いて貯めたお金が消えた。
失踪した兄を必死で探していた
心身ともにダウンして倒れたところをロバートに助けられた
ロバートに求婚された

るいの目に映る事実

ずっと一緒にいるといったお母さんは雉間に置いていくと言う
いなくなってしまったお母さん
帰ってくると言ったのに入学式の日も帰ってこない
自分を置いてロバートと抱き合っている

再建資金を持って消えた兄を探しに行くも見つからず
打ちひしがれて倒れたところを助けられた安子

(るいの視点)
雉間の家に私を置いていくつもりで
入学式にも戻らず男の人といるひどいお母さん

事実はどうであれ、るいの中では「私を置いていったひどいお母さん」。
思い込み、とらえかたひとつで「自分の中の事実」が決まってしまう。

心理学で割と知られた話ですが人は自分の見たいように見るんですよね。

置いて行かれた不安から
「私を置いて行ったひどいお母さん」
と安子を見るようになってしまった。
るいの安子フィルターは思いっきりネガティブに。

違うよーーーー! るいちゃん! 違うのよ―――!
と画面に向かって叫んだけど
この声はるいちゃんには届きませんでした。
当たり前ですが。届いてほしかった(涙)

るいの英語力があだになった?

ロバートと安子の英語の会話を、るいちゃんは聞いていたのかな。

ロバートの  I Love you
安子の  thank you

英語がわかるるいちゃんが聞いていたらショックだったかもしれない。

英語がわからなくても
自分の入学式にも帰ってこないお母さんが
ロバートと抱き合ってる姿を見たらショックだけど。

それでも。その後の安子の言葉を聞いていてくれたら。
この日は何を見ても、タラレバ娘になってしまうよ。

るいを想う安子の気持ちは届かない

るいちゃん! その後の安子のButも聞いてー!
待って!行かないでー! 
いったい何度叫べばいいのか。
いったい何度叫べば届くのか。届かないけど(涙)。

アメリカについてきて欲しいというロバート。
るいとは離れられない、
アメリカ行きを断る安子。

るいが私の幸せです。
一緒に暮らせなくても、るいが幸せなのが一番大事。
るいは私の命なんです。

そんな安子の言葉も想いも
るいに届かないのが哀しすぎる。

大切な英語で拒絶される衝撃

千吉さんが、しいたけは嫌いって英語で何て言うんじゃ?とるいに聞いたときに登場した「hate」がこんなところで活きてくるとは…こんな悲しい伏線回収ってあるだろうか。

るいがいなくなったと知り、フラフラになりながら帰ってきた安子へ放たれたのは、最愛の娘のナイフのようなひとことだった。

もう二度と会いたくない
I hate you

安子の世界から音が消えた。
稔が戦死したという知らせを受けたときと同じように。

家族が次々と亡くなっても、最愛の夫が戦死しても、女手ひとつで育てられなくなっても、るいと一緒に暮らせないことになっても、やっと帰ってきた兄がたちばな再建資金を持ち逃げしても、るいだけを想って生きてきた、1本の糸がぷつっと切れたような。

I hate you

稔さんに教えてもらった英語
るいとの大切な時間をくれた英語

その英語で拒絶された

表情をなくしたるい
天真爛漫な笑顔のるいが消えた

うっわーーーーーーそう来るか!と
このシーンを見たときは背中がぞわっとしました。

英語で恋をして
英語を支えに戦時中を行き
英語で子育てをして。

稔さんとの想い出の、るいとの想い出の
大切な英語で娘からその絆を断ち切られたわけで。

残酷すぎる展開に衝撃でしばらくその場を動けませんでした。

ドントライクとヘイトのあいだ

昔、韓国語や英語を学んでいたときに
先生からこんなことを言われて、なるほど、と思いました。

嫌い、という言い方は直接的すぎる。
好きじゃない、とか苦手、という表現の方が、表現がやわらかくなる。

語学だけじゃなく、普段の会話やコミュニケーションにおいても大事なことだなあと感じて、子供にも「ちょっと好きじゃないな」「私は苦手」という言い方をするように伝えてきたし、自分もそうしてきました。

私は苦手です。私は好きじゃない。

じゃなくて。

私はあなたが嫌い

ってとても強い言葉です。

しかも英語の語順だと

私は嫌い あなたが

となって「嫌い」がまず先にくるから
ストレートにダメージを与えることになる。

弱り切った安子がノックアウトされるには
十分なダメージだったんですよね…。

母親のくせに、なんて言わないで

娘に一度拒絶されたからといって、すぐ諦めてアメリカに行くなんて!という意見も目にしたのですが、雉間の家にるいを置いて行かねばならず、苦労して貯めたお金は兄に持ち逃げされ、結局兄は見つからずるいの入学式にも間に合わず…と何重にもダメージを受けていた安子には、この世の終わりのように感じてしまったのではないでしょうか。

確かに、子供がママ嫌い!なんて言いことはよくあるし、子供の嫌いは大好きと寂しい気持ちの裏返し。嫌い!なんて言って本当はママのことが好きなくせに!って子どもをギュッと抱きしめれば済むこともよくあります。

が。

大切な英語で。額の傷を見せられて。

自分を嫌うことなんてないと思っていたであろう
娘のるいにヘイトと言われ。

この世の終わりのように感じても仕方ないと思うのですよ。

何より、安子はたぶんまだ20代半ばですよね?
中卒?で稔さんに嫁いだはずだから。

社会経験もないあの頃の20代半ばの女の子が
ただ一生懸命生きていただけ
なんですよね。

ただ、るいと幸せに暮らしたい
幸せだった子供時代をるいにも味わわせてあげたい
それだけだったのに
歯車がどんどんかみ合わなくなっていく。

打ちのめされた安子はロバートとアメリカへ…

誰かの最悪の一日は誰かの最良の一日

一方で、安子の一番の理解者きぬちゃんは母になり。

一方で、喫茶店ディッパ―マウスブルースのマスターで
稔と安子を見守ってきた定一さんの息子健一さんが戦争から帰ってきて。

娘の拒絶に打ちのめされた安子の絶望の一日は
出産、再会に喜ぶ誰かの幸せな一日で。

どんな悲しい出来事があった日も
誰かにとっては嬉しい日。

どんなに幸せな一日でも
誰かにとっては悲しい一日。

そんな人生の無常と豊かさが詰まった物語でした。

こんな展開になったらいいな

ここまでで既に3000文字超! まとまらないからこのまま書いちゃう。15分でこれだけ感情と言葉をあふれさせるとは、なんなんですかねこのドラマ。まだ始まって2か月ですよ! あと4ヶ月あるんですよ! 

安子がるいと離れた決定的なダメージは描いても、安子がアメリカへ渡った過程は詳しく描かず、るいの10年も描かず、成長したるいは大阪へ。

これから少しずつ、るいの気持ち、雉間家での10年が少しずつ紐解かれていくのかな。その度に泣いてしまいそう。

大嫌い、は、大好き、の裏返し。
お母さんが大好きだったから。

そんな気持ちがほどけていく展開になるといいな。
成長したるいと安子が会って和解するシーンもあるといいな。
そんなシーンがあったら確実に泣く。

もしくは、どこかで再開したきぬちゃんや、年老いた勇ちゃんが、るいに話して聞かせるとか。どんな思いで稔さんと一緒になったのか。るいの誕生をどれだけ喜んだか。どんなに一生懸命るいを育ててきたのか。安子がどんなにるいを大事に思っていたか。

安子からるいへ。ヒロイン交代をどう描くか

誰が見ても仲むつまじい親子だった安子とるいを、このような形で決別させるために、ヒロインからヒロインへの流れをどう作るか、はこちらに詳しく書かれています。

今の今まで感情移入していたヒロインに対して恨みをもった別のヒロインに、今日から感情移入して見てください、というのはあまりにもハードルが高いものでした。

人もうらやむような親子関係だった安子とるい。わずか3回分で「決別」まで描かなければなりませんでした。

ある種の力技が必要で、登場人物たちの繊細な感情をうまく紡いでいかなければなりません。
その上で、徐々にるいに感情移入できるようにしていく……さらに、同じ時間軸の中で安子編にかかわった人々の伏線回収劇も始まり、「命の誕生」「再会」「決別」「始まり」など、人が経験する宿命のようなものを、すべて包括して表現すべき局面でした。

藤本さんの脚本には圧倒的なパワーがありました。演出としては一つ一つ手を抜かずに素直に表現することに徹底するしかありませんでした。
(中略)ものすごく深いことを表現しているドラマなんだな、とあらためて感じました。

作り手の熱が伝わってくるお話です。
世界観をどう作って、どう共有するか、というドラマ以外にも通じるエピソードも。ぜひ読んでみてください。

るいが心から笑える日まで

木曜日からは10年経って成長したるいちゃんの物語がスタート。

千吉さんは、安子とるいを引き離すようなことを言ったと後悔し。
勇は、安子がるいを置いてアメリカへ行くなんてよっぽどのことなんだろう、とふたりとも安子を責めていなかった。

千吉さんの葬儀の日だというのに、朝ドラ(!)の最終回から目が離せない勇の妻…は家政婦だった雪衣さん。勇の嫁に収まったのに幸せそうじゃないし、息子は祖父の葬儀より勉強に気持ちが行っているようで。千吉さんにあまり思い入れがなさそうで、何だか気持ちがかみ合ってないように見える。千吉さん曰く「思いがけず跡継ぎも授かった」雪衣さんも、なんとなく心もとない感じで。千吉さんと勇はるいを可愛がっただろうし、雪衣さんもるいにつらくあたったり、ということは無かったのだろうけど、お互い心に薄皮をかぶったような感じで、居心地が悪かったのではないのかな。

野球が好きな勇がキャッチボールをするのは、姪のるい。息子はあの様子だと野球に興味なさそう。勇ちゃんも寂しいね。でも自業自得か…

るいちゃんも、千吉さんも勇も、その家族も、安子がいなくなって、なんとなくしこりを残したまま暮らしていたのかなと想像できる。たった数分の描写で、それぞれの表情、立ち居振る舞いで10年の空気が想像できてしまう。

安子は優しくてあったかい、かつての「たちばな」のような家でるいを育てたかった。でも結果的に居心地の悪さを抱えて生きてきたるいは、千吉さんの葬儀のあと、家を出ると勇に告げて岡山を後にする。

二度と戻らないと決めて。

額の傷は治さなかった。
千吉さんに何度説得されても手術を受けなかった。
治してやるもんか、とう意地なのか。
でもそれがかえって自分を縛ることになってしまった。

母との優しい想い出だったカムカム英語。哀しい想い出に変わってしまったカムカムエブリバディのメロディにのって踊るるいちゃん。ミュージカル風の演出に、どこかで母との辛い想い出がやわらかくとける展開になるのだと信じて観続けようと固く決意したのでありました。

後半になればなるほど泣く気しかしないのだけど。
とりあえずクリーニング屋さんの夫婦がいい人たちでよかった。

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そういえば今日12月24日はクリスマスイブ。
安子がロバートに連れていかれた進駐軍でのクリスマスパーティを思い出します。パーティで突然聞いた定一さんの歌声に圧倒されたnoteはこちら。

その後のクリスマスにやってきた「サンタ」と美都里さんに泣かされたお話はこちら。それにしても算太あああああ!(怒) 帰ってこーい!

メリークリスマスおかあさん!
と言っていたあの無邪気なかわいいるいちゃんが愛しい。
るいが、優しい気持ちでメリークリスマスと言える
安子と過ごしたクリスマスを優しい気持ちで思い出せる
そんな日が来ますように。

るいが私の幸せです。
一緒に暮らせなくても、るいが幸せなのが一番大事。
るいは私の命なんです。

安子の、母の想いが
いつか娘に、るいに届きますように。

そんな願いを込めて。

メリークリスマス!

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