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【怖い話】赤ちゃん連れの女性【実体験】

ある冬の休日、いつものようにスーパーで買い物をしていた。店内は休日ということもありそこそこ賑わっている。
買うものを買って会計を終え、カウンターで袋詰めをしていると、隣に赤ちゃん連れの女性が来た。四十〜五十代位に見える。
かなり接近されたので少しスペースを空けようと端に寄り、袋詰めを再開した。流行り病やらインフルの季節やらで少し過敏になっていたからだ。
体があまり強くないので出先で人に近付かれるのは嫌だし、特に赤ちゃんともなればマスクをしていないので、気を悪くさせるかなと思いつつも距離を取った。

それでもかなり近い位置にいるので、意識しなくても女性と抱っこされた赤ちゃんの姿が見える。抱っこ紐で体の前に抱えているようだ。
しかし女性は何を思ったのか、抱っこしていた赤ちゃんを袋詰めカウンターの上に置いた。
不衛生だなあ、でも何か事情があるのかもと思いながら商品を袋に詰めていく。
すると、その女性と顔見知りらしい店員がレジ打ちを終えてこちらに来て二人は話し始めた。
探していた商品が見つからなかったような話をしている。

と、唐突に機械音声が流れてきた。高い音で子供の声のようだが何を言っているかはわからない。
その音は赤ちゃんから聞こえていた。よく見るとその赤ちゃんは二、三歳位の男の子の人形だった。
それを見て、抱っこしていたように見えたのは気のせいだったのだ、ただ手に持っていただけで親戚の子へのお土産か何かなのだろう、と思う。
そのスーパーで人形の類は売っていなかったが、おそらく歩きで買いに行った帰り、袋に入りきらずに手に持った状態で入店したのだろうと思った。
だが次の瞬間、その認識は誤りだったと気付く。
店員が人形に注意を向けたとき、女性はこう言った。

「この子は強い子だから〜」

「この子」が指すのは明らかにその人形しかいない。
それでその人形がお土産ではないことに気づいた。
動揺する私をよそに、店員が動じた様子もなく言う。

「そうですよね〜」

そしてそれに応えるように人形が何か言う。
店員と女性は「その子」を褒め、和気藹々と会話を続ける。
私は恐怖と同情心を感じながらその場を後にした。
そして帰る道すがら、本当にああいった人がいるのだという驚きと共に、おそらくどんなに努力しても子供ができなかった人か、子供を亡くした人だろうな、と思ったのだった……。

◇◇◇

嘘みたいな本当の話。ついさっきスーパーで出くわしてめちゃくちゃビックリしたので書き留めておきました。
この類の話は都市伝説だと思っていたが本当にあるんだなぁと驚いた話。

◇◇◇

素材お借りしています。↓

Photo by kissaten様

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