[ドラマレビュー] 『シェイムレス〜俺たちに恥はない』シーズン3 :暑さでみんなハジけすぎ!?ギャラガー一家の夏休み (アメリカ 2013)
アメリカはシカゴのサウスサイド、麻薬と暴力とセックスの街に住むギャラガー一家の日常を描いたハチャメチャホームドラマ『シェイムレス』はシーズン3 に突入。
生と死をテーマにしたシリアスなシーズン2とは対照的に楽しい夏休みがライトに描かれる。
今シーズンのテーマは性愛。同性愛、SM、性の目覚め、ねじれた愛など、暑い夏にふさわしくセクシーな内容が多めとなっている。
あらすじ
ギャラガー一家は今シーズンも大騒ぎ。
父フランクは酔った拍子にうっかりメキシコへ。帰国のために麻薬を運ぶハメになる。
クラブのパーティーで赤字を出してしまった長女フィオナは経営の厳しさを思い知り、近くのスーパーでバイトをすることに。
家に戻った長男リップは固定資産税の支払いのために奔走、次男イアンは出所したミッキーとヨリを戻すがトラブル発生。
三男カールは自分がガンだと思い込んでガン患者の子供のためのキャンプへ行く。
思春期を迎えたデビーはビキニを着てプールデビューするが、散々な結果に終わり・・・。
更におとなりでも問題発生で、ケビンの妻が子供を連れて押しかけてくるのだった。
登場人物
フランク・ギャラガー(ウィリアム・メイシー):父。アルコール中毒で無職。
フィオナ・ギャラガー(エミー・ロッサム):長女。共依存症の世話焼き。ジミーと交際中。
フィリップ・ギャラガー(ジェレミー・ホワイト):長男。通称リップ。秀才の高校生。カレンが好き。
イアン・ギャラガー(キャメロン・モナハン):次男。ゲイ。軍人を夢見ている。
カール・ギャラガー(イーサン・カトスキー):三男。サイコパス傾向アリ。
デビー・ギャラガー(エマ・ケニー):次女。父曰く、「天使みたいな子」
リアム・ギャラガー(ブレンドン・シムズ):四男。2歳。みんなのアイドル。
モニカ・ギャラガー(クロエ・ウェブ):母。躁うつ病。
ベロニカ:仲のいいご近所さん。元看護師。不妊症。
ケビン :ベロニカの彼氏。フランクの行きつけのバー、『アリバイ』の店主。絶対浮気しないマン。
シェリル:ケビンの妻。
カイル:シェリルの子供。
ミッキー・ミルコヴィッチ(ノエル・フィッシャー):近所の不良。イアンの彼氏。
マンディ・ミルコヴィッチ:ミッキーの妹。リップの彼女。
モリー:マンディの妹。
シーラ・ジャクソン:潔癖症で広場恐怖症のご近所さん。フランクと不倫。
カレン・ジャクソン:シーラの娘。セックス依存症。
ジョディ・シルバーマン:カレンの夫。タトゥーの彫り師。
ハイミー・ジャクソン:カレンの子供。ダウン症。
ジミー(スティーブ ):フィオナの彼氏。
エステファニア:ジミーのブラジル人妻。マフィアの娘。
マルコ:エステファニアの彼氏。
スタッフ
原作 ポール・アボット
監督 ジョン・ウェルズ
脚本 ジョン・ウェルズ、ナンシー・ピメンタル、アレックス・ボースタイン、マイク・オマリー、エイタン・フランクル、クリスタ・バーノフ、シーラ・キャラガン、デイビー・ホームズ
今回のテーマは性愛
貧困、暴力、アルコール中毒、麻薬問題、教育格差、貧困な医療制度と病、虐待、移民問題などなど、現代アメリカに巣食う社会問題盛りだくさんでヘビーだったシーズン1とシーズン2とは対照的に、今シーズンは重いテーマ少なめとなっている。
その代わりに焦点が当たるのは性愛。さまざまな愛のかたち、特に同性愛が主に描かれる。
まずは、イアンのセフレのジミーの父親の性的指向が明らかになり、離婚。ジミーは衝撃を受けて悩む。
次に、出所したミッキーとイアンはヨリを戻すが、同性愛嫌悪のミッキーの父親に現場を見られ、事件が発生。ミッキーは女性と結婚することになる。
さらに、パートナーシップ制度を利用して保険診療を受けようとしたフランクはひょんなことからLGBT活動家に祭り上げられてしまう。お得意の話術で優雅なホテル生活を謳歌するが、同時に別の団体からの「同性愛の治療」も請け負うことになり・・・。
フランクは人類愛者
初期の頃、フランクは同性愛嫌悪の異性愛者だと思っていた。彼は誰よりも妻モニカが好きで、彼女に首ったけ。6人の子供を残して出ていった彼女を責めることもなく、帰宅を歓迎した。
同性愛者を差別するような発言もなくはなかった。
しかしフランクはイアンがゲイだと知ったとき、アッサリ受け入れた。男は男とヤるもんだ、と言って。
そして、周りからゲイだと思われることに抵抗感を示していない。
つまり、フランクは同性愛差別者ではない。
彼のスタンスは、人が誰とセックスしようがどうでもいい。酒が飲めて今が楽しければいい、それだけだ。
享楽主義で刹那的で無責任、でも意外と懐が深いキャラクターだということが今回わかったように感じる。
リップはマンディとカレン、どちらを選ぶか?
性愛というテーマに絡めて、リップの恋愛事情についても考察したい。
リップはディクソン家の一人娘、カレンが好きだった。おそらくは初恋の相手で、3シーズン通し心はずっと彼女にあったように思える。
カレンにフられたあと、リップは滅多に笑わなくなり、マンディといるときもしばしば心ここにあらずといった様子である。
カレンの何がリップをそれほど惹きつけるのか。
セックス依存症で、自己破壊的で、父親の死を喜ぶような子である。普通の感覚では到底理解しがたい。周りもマンディの方がいいと言うし、リップもおそらく理性ではマンディを選ぶべきだとわかっている。
しかし、カレンなのだ。
天使のマンディと悪魔のカレン
マンディは本気でリップのことを想い、彼に未来を開いてやろうと手を尽くす。サウスサイドのようなスラム街から抜け出し、日の当たる場所で生きられる手助けをしようとする。
悪徳や罪、暴力、苦しみから救い出し、正しい道へと導いてくれる、聖書でいうところの天使である。
対照的にカレンはリップを堕落へと導く。欲望と衝動のままに生きる人生へと誘惑する悪魔だ。欲に溺れ、自分を見限り、絶望しながら刹那的に生きさせようとする。
最終的にどちらの手を取るかでリップの人生は決まる。
意外と自尊心が低いリップ
どちらを選ぶかはさておき、リップがこれほどカレンに惹かれるのは、彼自身に問題があるからに思える。
幼い頃から、リップは自己破壊的な親を見て育ってきた。隣近所も同じような人ばかりで、誰もが絶望し、自分の人生を見限っていた。
おそらくは早熟で多感で聡い子供だったリップはある時点で自分の人生を見限ったのだ。社会のシステムを知り、自分は一生底辺層だと思い込んでそう生きることに決めた。
だからカレンに惹かれるのだ。彼女は同類であり、生活を変えようとはしない。酒と麻薬とセックスに溺れて生きようとしている。彼女はリップに輪をかけて人生に絶望しており、厭世的だ。
だから安心するのだろう。
個人的にはマンディを選んでほしいが、彼はおそらく選ばないだろう。
シーズン4はフィオナに新しいロマンスの予感
シーズン3 で穏やかな交際を続けていたフィオナとジミー。フィオナの男を見る目は確かで、ジミーは家庭的な男だった。
子供たちの世話をし、家事をし、忙しくて色気のないフィオナを見てもゲンメツしたりしない。エステファニアとのおイタはたぶん視聴者サービスだろう。
そのジミーは慢性的な金欠を解消すべく医大への復学を決意するが、その医大というのがミシガンにあった。
もうこれは浮気、破局フラグである。遠距離恋愛は成立しない、というのがアメドラのお約束なのだ。
恋人がいない間に必ず浮気をしてそれが見つかってひと騒動、というテンプレ。個人的にその感覚はよくわからないが、見ていて飽きないし面白い。
たぶん、フィオナのお相手は新しい職場のイケメン上司だろう。
フィオナもまだまだ若いし、身を固めるには早すぎる。人生エンジョイして失った青春を取り戻してほしい。
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