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[ドラマレビュー] 『シェイムレス〜俺たちに恥はない』シーズン5:三男カールの魅力大爆発のシーズン (アメリカ 2015)

今シーズンは、シーズン3 から徐々に存在感を増してきた三男カールにスポットライトが当たる。
学校のいじめっ子にも、クズ父フランクの度重なる裏切りにもへこたれない、メンタル鋼鉄のカール。昨シーズンではサミ以外の子供たちの中で唯一フランクに寄り添うという優しい一面も見せた。
基本的に他人に一切期待せずにいつも自分で道を切り開くことができるクールなカールが、今シーズンでは本格的に犯罪王への道へ。
合法サイコパスのサミとの対決が見られるエキサイティングな内容となっている。

あらすじ

赤ちゃんを連れ出し無謀な旅に出たイアンについに躁うつ病の診断が下り、精神科に入院することに。しかし、自分が病気だと認められないイアンはまたひと騒動起こす。
一方、元彼ジミーと再会したフィオナは誘惑に負けて過ちを犯してしまう。

リップは学費を稼ぐため、夏休み返上で大学の寮の監督官に。しかし手違いで奨学金が出ずカードでキャッシングするハメになる。
デビーは無事高校デビューを果たし、彼氏もゲットするが、カールの問題行動は加速しついに地元のギャングとつるむように。やがて大きな仕事を任されるが・・・。

さらに、おとなりでも問題発生。生まれた子供をあまり可愛いと思えないベロニカは、育児優先になったケビンと衝突し、家を出てしまう。

登場人物

フランク・ギャラガー(ウィリアム・メイシー):父。アルコール中毒で無職。基本的にクズ。
フィオナ・ギャラガー(エミー・ロッサム):長女。ギャラガー家の大黒柱。共依存症の世話焼きだったが最近は自分の人生をエンジョイできるように。
フィリップ・ギャラガー(ジェレミー・ホワイト):長男。通称リップ。秀才の大学生。フィオナと共にギャラガー家を支える。
イアン・ギャラガー(キャメロン・モナハン):次男。ゲイ。躁うつ病。
カール・ギャラガー(イーサン・カトスキー):三男。ギャングに入る。
デビー・ギャラガー(エマ・ケニー):次女。父曰く、「天使みたいな子」。反抗期。
リアム・ギャラガー(ブレンドン・シムズ):四男。みんなのアイドル。
モニカ・ギャラガー(クロエ・ウェブ):母。躁うつ病。
サミ:フランクの隠し子。実は長女。サイコパス。
チャッキー:サミの子供。知的障がいがある。

ベロニカ:仲のいいご近所さん。元看護師。
ケビン :ベロニカの彼氏。フランクの行きつけのバー、『アリバイ』の店主。絶対浮気しないマン。
ジェマ、エイミー:ベロニカとケビンの双子の子供

ミッキー・ミルコヴィッチ(ノエル・フィッシャー):近所の不良。イアンの彼氏。
マンディ・ミルコヴィッチ:ミッキーの妹。
スベトラーナ:ミッキーの妻。ロシア人娼婦。
エフゲニー:スベトラーナの子供。

シーラ・ジャクソン:潔癖症で広場恐怖症のご近所さん。フランクの妻。
ジミー:フィオナの元彼。窃盗犯。
ガス:フィオナの彼氏。ミュージシャン。

スタッフ

原作 ポール・アボット
監督 ジョン・ウェルズ
脚本 ジョン・ウェルズ、ナンシー・ピメンタル、エイタン・フランクル、シーラ・キャラハン、デイビー・ホームズ、クリスタ・バーノフ

アウトサイダーを拒絶するサウスサイドコミュニティの結束力

今シーズンの大きなテーマのひとつとして、サウスサイドの再開発が挙げられる。
シーズン序盤にシーラの家の売買の話が上がったのを皮切りに、富裕層をターゲットにしたヨガスタジオやカフェができたり、空き地に不動産屋が下見にきたりと、昔からのサウスサイドコミュニティが脅かされる事態が発生。フランクは金にモノを言わせて土地を買おうとする「エリート」たちにあくまで反抗する。

スラム街の掟

確かにサウスサイドは治安が悪く麻薬中毒者で溢れかえっているスラム街だ。街も、人々の心も荒廃し、暴力がはびこっている。
しかし同時に非常に仲間意識の強いコミュニティがあることも確かである。
マフィアがファミリーを絶対に裏切らないように、サウスサイダーは地元の仲間を売らない。
カールも、リップも、その友人も、フランクでさえそうだった。
身内がたとえ罪を犯してもよほどのことがなければ通報しない。そういう、仲間意識の強い土地柄なのだ。

サミはアウトサイダー

その中で唯一その不文律を破ったのが、外から来たサミだった。サウスサイドの生まれではないサミは、フランクの子ではあるものの、コミュニティに馴染めていない。ギャラガー家の子供たちは誰一人サミを受け入れなかったし、献身的に看病してあげたフランクでさえ回復後は彼女を敬遠するようになった。
それは、単にサミがサイコパス傾向の構ってちゃんだからではない。彼女が余所者だからである。
サミはフランクの実子であるという事実さえあればギャラガー家の一員になれると思い込んでいた。
しかし実際には違ったのである。街は、簡単には彼女を受け入れてくれなかった。そして結果としてはじかれたのである。

カールというキャラクターについて

今シーズン、活躍著しかったのは三男カールだった。フランクの看病をし続け、存在感が増した昨シーズン。これまで表面をなぞる程度だったカールの本質がかなり見えてきたシーズンだった。
そして、今シーズン更に掘り下げて描かれている。

カールは多くを語らないので人物像を知るにはよく観察する必要がある。いろいろな意味で特殊で面白いこのキャラクターについて分析してみたいと思う。

まず、彼には他の兄弟が持つような親に対する葛藤が見られない。彼はフランクやモニカの度重なる裏切りや嘘、失態にほとんど何の反応も示さない。これがサイコパスといわれる所以だろう。

実際には何か感じているのかというと、まったく何も感じないわけではないだろうが、明らかに他の兄妹よりは葛藤がなさそうである。
この理由については仮説がいくつかあって、

1、最初から他人には期待しない性格で信じるのは自分だけ。フランクは父親というより悪事を一緒にやるバディとして見ている。

2、本当に何も感じていないサイコパス。ひとに共感できない。

3、フィオナや兄たちからたくさん愛情をもらって育ったので父親がクズでも問題ない。最初から親とはそういうものだと思っている。

のいずれか、またはどれかとどれかの組み合わせではないかと思う。
個人的には1と3の組み合わせではないかと思う。なぜかというと、カールはサイコパスではないと思うからだ。

カールはサイコパスではない

感情の起伏が少ないことと、サイコパスはイコールではない。サイコパス、ないし反社会性人格障害というのは、ひとを自分の利益のために利用すること、嘘をついたり騙したりすることに何ら良心の呵責を感じないひとのことを指す。彼らにはひとの痛みに共感する能力が欠如しており、どんな残酷なことも平気でする。これに照らせば、サミは確かにサイコパスだった。

しかし、カールはそうは見えない。感情の起伏に乏しく、暴力性もあるが、彼には共感能力がある。それは、サミがフランクの観心を買い、「心優しい娘」を演じるために看病したのとは反対に、見返りなしでフランクの肝臓を得るために手を尽くしたカールの行動から明らかである。
彼は、フランクが病床にあるとき、自らの利益のためではなく、フランクのために行動した。これが、サイコパスに見えるカールがそうではないことを証明する。

サミはのちに思い通りにならないフランクを傷つけた。しかしカールはそうしなかった。これがふたりの決定的な違いである。

カールの将来設計

カールはサイコパスではない。しかし、だからといって善人でもない。彼は学校で問題を起こしまくり、小6でもう3回留年している。
彼にとって世界は常に弱肉強食であり、問題の解決方法は暴力しかない。
これは、サウスサイドというスラムで育ち、おそらくは学習障害のある彼なりの処世術であり、今後もそう生きてゆくと決めている。

勉強では成功できないと、彼は自覚している。普通の職場でも務まらないだろうということも。
だからギャングという裏社会で生きることを決め、早く自立しようとしている。驚くほどに老成した子供だ。

まとめ カールがますます好きになるシーズン

シーズン5、主役は間違いなくイアン&ミッキーカップルとカールだった。
フィオナ、ケビンがビッチ化する中、唯一マトモな交際を続けるイアンとミッキー。すごいイチャつきぶりにちょっとビックリしたが、ミッキーの献身的な愛に胸打たれた視聴者も少なくないだろうと思う。

個人的にはミッキーにはもう少し突っ張っていてほしかったが、幸せそうなのでまあいいかなという感じ。
イアンとミッキーの性格が逆で、プライドが高い不良のイアンが突っ張って突っ張って突っ張って耐えきれなくて崩れたところをミッキーが掬い上げる、みたいなプロットだったらもう少しキャラが立ったような気もする。

それはさておき、カール、なんといってもカールだ。シーズン3 まではただの端役だったのに今回のこの活躍ぶりにもう目が離せない。
いつかシカゴの裏社会を牛耳る姿をぜひ見たい。

ということで、結論はカールの魅力大爆発のシーズンだった。
今後のますますの活躍に期待!

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