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<MBTI>INFP=社会不適合、は本当か?

 MBTIに関する議論で必ず浮上するものが存在する。それは「INFPは社会不適合」というものだ。しばしばINFPは引きこもりとか、いじめられっ子という表現がされることもある。本当にINFPはこのような社会不適合なのだろうか。今回はINFPの実像について考察したいと思う。

INFPの弱み

 INFPの欠点として常に言われるのは以下のようなものだ。INFPは内向的なので、コミュ障である。N型特有の浮世離れした思考回路で集団に馴染むのが難しい。理想主義なので現実とのギャップに悩む。INFJと違って勤勉な優等生ではない、といったものだ。確かにこうした指摘は間違ってはいないと思う。

 ただし、能力には個人差があるし、環境によって活かせる時もあれば致命傷になる時もある。特定の性格タイプが社会不適合というのはオーバーだし、事実とは著しく反するだろう。筆者の周囲のINFPには普通に就職して幸福に生きている人間はいっぱい存在する。社会的に落ちこぼれた人間がINFPばかりかと言うと、そうではない。INFP社会不適合説に関しては様々な要因が絡んでおり、一概に社会に馴染めないとか、引きこもりというのは乱暴過ぎるだろう。

 INFPの問題点は一言で言えば、ピッタリと当てはまる適職があまりないことが挙げられる。芸術家やエッセイストといった職はそこまでパイが多くなく、生計を立てるのが難しい。カウンセラーや学芸員はもう少しマシだが、それでも巨万の富を稼いだり、婚活市場のモテに繋がる仕事ではない。INFPはたまたま現代日本で求められる職と相性が悪く、職業的な成功と縁遠くなってしまうのだ。

 有名人となるとINFPは多いだろう。INFPの特有のカリスマ性と表現力はあらゆる方面に活かすことができる。演劇だろうが、執筆だろうが、同様だ。芸能人にもINFPは結構存在する。INFPにとって問題なのは「普通の仕事」との相性の悪さかもしれない。特に企業との相性は良くない。少なくともINFPが頑張りたいと思える理想像を見出すのは大変だ。

INFPの強み

 ところが、INFPの問題点は適職の問題を除けばあまりない。少なくとも、他の項目でビリになることはめったに無いのではないだろうか。INFPの大人スキルは思われているよりは高い。INTPのように他人に無関心ではないし、INFJのように強情でもない。INFJのような人望は無いかもしれないが、その代わりにユーモアや柔軟性を持っている。

 INFPがいじめに遭うケースは思われているよりは少ないと思う。INFPは人間関係をメタ認知するのが得意であり、人間関係の形成能力も高い。INFPのいじめリスクはINTJやISFPと比べて低いかは分からないが、少なくとも高くはないはずだ。

 N型の例に漏れず、INFPの強みは裁量が多い状態に生まれる。体育会系や旧態依然とした大組織の場合、INFPはS型に比べてコミュニケーション能力と適応能力で劣ることになるだろう。村社会的な環境では想像力や発想力というN型の強みがあまり活かせないはずだ。しかし、現在はこうした村社会的な場所は減少しており、日本社会はどんどん無縁社会となっている。無条件で居場所を提供してくれるコミュニティは姿を消し、自分の力で人間関係を開拓しなければならない世相になっている。この場合、INFPは強い。コミュニティ外に人間関係を構築する能力で右に出る人間はいないからだ。もしかしたらENFPには負ける可能性があるが、INFPにはインターネットや趣味のサークルなどで交友関係を広げている人間が多い。これはESTJには真似できない強みだろう。

 同様に、ある程度の自由度さえあれば、集団内でもINFPはうまく立ち回ることが可能である。人間関係を俯瞰的に見ることが得意なので、関わったらヤバそうな人間には最初から距離を置くし、自分なりの対処法を持っていることもある。INFJほど硬直的ではないので、NOと言えずに自縄自縛になるケースは少ない。無理だと思ったら逃げ出す胆力はあるだろう。

INFPの居場所は職場以外なのではないか?

 こうしてみると、INFPの課題は一にも二にも仕事ではないかと思われる。INFPは人を押しのけて競争するのが嫌いだし、拝金主義にも興味がない。むしろ嫌悪感を感じるだろう。現実的に食っていくには普通の人は会社に所属しなければいけないが、この場合は個性を殺さなければならない。自由と自己表現を好むINFPにとって会社組織は最悪の場所だ。出世競争にも一生懸命になれないし、人を騙すようなセールスには苦痛を伴うだろう。

 ところが、仕事を割り切ってしまうと、以外にINFPは人生で問題を抱えにくいのではないかと思う。例えば孤独問題に関してはINFPは比較的強い。特にネット社会になってからはINFPに追い風である。自己表現が容易になっているし、人間関係を勝手に構築することが簡単になっているからだ。そもそも私生活において個性を追求することは簡単であり、なんの制約もない。ISFPの場合は自分で個性を追求することが以外に苦手で「無キャ」になってしまうリスクがあるが、INFPは自分でコンテンツを見つけるのが得意だし、常に挑戦と経験が存在するだろう。

 職場はINFPにとって自己実現が認められない数少ない場所であり、それ以外の場所であれば比較的ラクに生きられるのではないだろうか。家庭に関してはなんとも言えないが、少なくともINFPにとって悪い環境ではないはずだ。家庭は競争社会ではないし、結婚相手を見つけることは、まさにINFPが得意とする人間関係の構築である。実のところ、INFPはモテるモテないに関わらず、交際相手がいることが多い。マニアックなモテにかけては天下一品である。

 人生100年時代、会社組織に拘束されるのはほんの40年に過ぎない。それ以外の期間はINFPにとって必ずしも悪い期間ではないし、現役時代であっても工夫すれば充実した人生を送ることは可能だろう。世俗的成功からは縁遠いかもしれないが、INFPは金や会社内の出世に興味が薄いので、あまり幸福度には影響を与えないだろう。

INFPのリアル

 MBTIの界隈ではINFPはなよなよしたいじめられっ子のように描かれるが、特に男性の場合はそうしたステレオタイプ的な人間は少ない。なぜならINFPの多くはその優れた人間考察能力を生かし、実社会で生きる上のある種の殻を持っているからだ。INFPはそのままでは実社会で生きていくことが難しいので、擬態しているのである。

 INFPがT型に擬態している例はあまりない。日本社会においてT型に擬態することは必ずしも必要ではないからだ。一見T型のように見えても、少し話せばだいたいF型の本性を見せるだろう。それよりも多いのはS型への擬態である。ENFPへの擬態やESFPへの擬態も目撃したことがある。現実のINFPはポエマー的な本性を出すことは少なく、表面上はとっつきにくいこともある。INFPには遠く及ばないが、INFPのステルス性は高く、仲良くなるまではその興味深い本性を引き出すことは難しい。

INFPが社会不適合と言いたがる?

 こうした強みを持っていながら、INFPが社会不適合と言われる理由は何か。筆者の見解によれば、INFPはそもそも社会不適合である自分について考えるのが好きそうなのである。INFPは表現力が高いので、自分の嫌なことや人生の悩みを文章化するのが得意だし、しばしばそれらは優れた芸術作品として多くの人間に共感を巻き起こすことができる。伝説の歌手である坂井泉水の生き様などはまさにINFPそのものだと思う。

 ネット上で生きづらさを表現しているのもINFPが多い。じゃあ他のタイプが生きづらくないかと言うと、そうではないだろう。INTJは自分の弱みを認めないかもしれない。INFJは自分の至らなさが原因ではないかと恥じて飲み込んでしまうかもしれない。ISFJは自分の考えている辛さを文章にして表現しようとは思わないかもしれない。INTPは辛さを感じてもINFPほどの表現力が無いかもしれない。INFPは共感を求めるのがうまいし、それらを表現するのも得意なのである。

 INFPはうまく行っている時であってもどこか考え込んでいる時があるし、それが正常運転なのだ。もしINFPがESTJのようなセリフを言い始めたら、そちらの方が不健全状態である。上意下達の体育会系説法をINFPが語り始め、昼夜問わずに出世競争とハードワークに打ち込み始めたら、なにか問題があるに違いない。INFPが人生に悩むのは普通のことで、別に社会からはみ出ているわけではないのだ。INFPで傑出した人物であっても、やはりどこか悩んでいるところがある。INFPにとっての最終目標は富や権力ではなく、自分の人生に折り合いを付けられるかだ。そういう人種なのだ。

まとめ

 今回は社会不適合と言われるINFPの生態について考察した。INFPは確かに熾烈なビジネス社会や軍隊式の組織には馴染めないかもしれない。ただ、それを持って社会不適合とするのは総計だ。INFPは人間関係構築能力が高く、私生活を充実させる能力は高いはずだ。また、INFPは社会不適合である自己像についてあれこれ考えたり、それを発信するのが好きだ。INFP社会不適合説は多分にこうした発信力のバイアスによって作られているところがある。

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