JTCの文系総合職とは結局何をする仕事なのか

 私がサラリーマンとして落ちこぼれた理由は沢山存在するが、理由の1つとして、そもそもサラリーマンが何をする職業なのか理解できなかったことにある。確かに眼の前の業務は存在するのだが、長期目標ややりがいというものが全く見いだせず、頑張ることができなかった。一見把握しているようで、絶妙に噛み合っていない。そうしたギャップがサラリーマンとしての職業人生に閉塞感をもたらしていた。結局、金のために人生を売り渡している感覚で、そこに何一つ意義を見いだせなかった訳である。こうなると学生時代と違って自分の存在意義を私生活に求めるしかないが、昔のように友達と毎日遊ぶのは難しくなってくるので、結果として老人のようなマインドになってしまった。後は会社で就業時間が来るのを待ち、昔ほど楽しみが少なくなった日常の中でいかに余生を過ごすかというありさまである。もう人生でやることは子育てと親の葬式と自分の死しか無くなってしまったのだ。

 もはやサラリーマンとして活躍することは不可能であるが、もう一度日本の大企業の文系総合職とは何をする仕事なのかを考えてみたいと思う。

JTC文系総合職とは「ビジネスマン」である

 これはJTC文系総合職だけに当てはまる訳では無い。JTC文系総合職は広い意味でのビジネスマンというのが一番客観的な職業観だろう。資本主義社会の荒波に耐えながらマネーを追求する仕事である。学校の先生や医者はビジネスとは違う目的のために頑張る仕事とされているが、JTC文系総合職は会社に利益をもたらすことを唯一の存在意義としている。扱う内容は営業・経理・法務といった分野で、文学や哲学といった領域とは全く関連がない。この点では渉外弁護士や公認会計士とも関連性は強そうである。

 JTC文系総合職を「ジョブ」と捉えれば、営業・企画・コンサルティング・金融専門職などが該当するだろうか。実際、新卒で入社した会社を離れて転職市場で生きていく人間はこうした職種の専門性を高めることが求められる。

JTC文系総合職とは「何でも屋」である

 JTCの文系総合職の特徴としてよく指摘されるのは専門性を持たないジェネラリストであるということだ。こうしたキャリア観は最近は批判の対象になることも多い。ジョブローテでどの部門に関しても数年しかキャリアを積めないため、転職市場で通用しないというのが理由である。

 この理由の1つは労働組合が会社単位で、社員の首を切れないという事情が関わっている。会社はある部門が不要になったらそこの社員を切るのではなく、別の部門に異動させて有効活用する。従って、ある程度何にでも対応できる人材を求めている。

 社内のみに目を向けたキャリア形成であれば、こうしたジョブローテは非常に合理的だ。これは会社のみならず、あらゆる項目にも言えることである。例えばブログ記事は得意分野に全振りしろと言われるが、もし読者が1つのブログしか読めないのであれば、少しずつ色々な記事が掲載されているブログの方が人気のはずだ。これと同じである。

 JTC文系総合職は何の専門でもないと言われるが、見方を変えればその会社の専門家ということになる。三菱商事の文系総合職は三菱商事の専門家で、JR東日本の文系総合職はJR東日本の専門家ということである。

JTC文系総合職とは「幹部候補生」である

 文系総合職の独特の性質はジョブローテだけでは説明できない。それ以上に重要なのがJTCの文系総合職は幹部候補生ということだ。ジョブローテはそのための経験値の積み増しである。

  専門職と総合職の決定的な違いは現場に立つことの意味だろう。例えば研究者は研究で名を挙げることが本分であり、大学のマネジメントに関わることを嫌がる人が結構多い。他にも、医者であれば名医と言われたり、塾講師であればカリスマ講師として参考書を売ったりといった、現場仕事での栄達がキャリアの成功の1つのパターンとなっている。

 ところが文系総合職の場合は現場に立つことに大した意味は無く、基本的には下っ端の役割である。文系総合職はマネジメント人材として管理職になることが栄達であり、成功の証ということになる。したがって、文系総合職は組織との結びつきが非常に強い。文系総合職が独立したり、外で名前を売ったりできないのはマネジメント人材だからという事情が非常に大きい。サラリーマンの自己決定権の極端な乏しさはこうした事情が原因である。

 医者で例えるならば、サラリーマンにとっての成功はノーベル賞受賞者や「神の手」になることではなく、医師会の会長や大病院の部長になることということである。医師や弁護士といった資格業は上に文系総合職が君臨しないので美味しい立場なのだが、理系技術者や金融専門職は会社に所属する必要があるため、どうしても文系総合職のマネジメント人材に指示される存在という性質が強くなってしまう。

まとめ

 子供の頃はサラリーマンが会社で何をやっているのか分からなかったし、実際にサラリーマンになっても良く分からなかったのだが、なんとなくの構造は把握することができた。

・ビジネスに関する仕事であること。
・ジョブローテで「その会社の専門家」になること。
・マネジメント人材になることを期待されていること。

 この3つはサラリーマンの骨子である。サラリーマンは会社の内部でリーダーになることを期待されているため、新卒で入社し、同期との出世競争を30年に渡って繰り広げ、最終的には取締役を目指すというのが目的となる。

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