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小・中・高・大の受験で一番簡単なのは〇〇?

 受験には大きく分けて小学校受験・中学受験・高校受験・大学受験がある。大学院受験は「学校歴」の物差しで語れないところがあり、除くことにする。これらに関して昔から言われる俗説がある。それは中学受験は環境・高校受験は地頭・大学受験は努力というものだ。個人的にはこの意見に懐疑的である。
 私の感覚からすると、小学校受験は環境・高校受験は地頭・大学受験は努力・中学受験は3つ全部である。

環境が全ての小学校受験

  小学校受験は一番受験者が限られ、一番必要性に乏しい受験である。参加者の殆どは学費を払えるアッパー階層かアッパーミドル階層だ。したがって小学校受験で私立小に入学すると、公立とはかけ離れた有閑階級の世界で育つことになる。

 小学校受験は基本的に学力試験を課せないと考えて良い。そのためほぼ運と環境ゲーである。幼稚園児に志望校を決めさせることは無理があるため、完全に親の受験なのだ。

 私の体感としては、小学校受験組の平均学歴はMARCHである。サピックスで中学受験する人の平均とほぼ同じだ。違いとしては、学力試験がないため、超名門校であってもこの割合はさほど変わらないということだ。学力で輪切りにされていないため、小学校受験でエスカレーター式に進学できる学校は最上位層にとんでもない天才がいることも多い。
 実際に東大には小学校から暁星や雙葉に通っている人物がチラホラ存在した。何年か前に関西学院高等部出身の女子が理三首席になったことが話題になったが、ここまで極端でなくても小学校受験組の最上位層はかなり賢いのである。

 余談だが、アッパー階層の人間は金で買えないものを求める。彼らは意外に学歴に拘っている。環境が良いのは「当たり前」と考えているので、こうした出自の高学歴者は出自以上に学歴にプライドを持っているようだ。香川照之や市川猿之助はいい例だろう。井川意高を入れても良いかもしれない。このメンツを見る限り、未来の天皇陛下がが東大に進学するのはどうなんだろうか。

めちゃくちゃハードな中学受験

 4つの入試の中で最もハードなのは中学受験であることは間違いない。東大理三や科学五輪出場者などは大半が中学受験組であり、彼らの地頭のレベルは極めて高い。

 一方で努力の方も半端ではない。
首都圏出身の東大生の多くは大学受験よりも中学受験の方がハードだと答えるはずだ。東大生の多くは中学受験で挫折しているし、東大理三ですら中学受験に失敗したものが多い。教育熱心な親は必ずと行っていいほど中学受験に熱を燃やすし、12歳という段階は親の言いなりなので、必要以上に加熱しやすいことが原因だろう。

 環境面に関してはなんとも言えない。昔は中学受験にトライするのは一部の裕福な家庭だったので、小学校受験の延長のような雰囲気があった。偏差値上位には御三家と並んで早慶附属やお嬢様校が君臨していた。小学校受験のリベンジも多かった。

 しかし、最近は中学受験はかなりマス化しており、12歳の段階で学力上位者の大半が選別されているきらいがある。基本的にアッパーミドル階層とミドル階層が中心と考えて良いだろう。ただ、長期に渡って親の関与が必要なので、その点では環境は重要である。

 中学受験のスゴい点は12歳という成長段階ながら、既に賢い生徒を選抜することが可能になっている点である。東大に合格するのはほとんどが中学受験組で、しかも一部の学校に偏っている。12歳の段階でどのゾーンの学力に行けるかは決まってしまうのだ。
 一方であまりにも加熱化・マス化してしまっているので優秀な生徒が中学受験に失敗するケースが増えている。
 受験界の神として崇められる河野玄斗氏は中学受験で筑駒と開成に落ち、灘を蹴って聖光学院に進学している。あのレベルの人間ですら運が悪いと中学入試では失敗してしまうのだ。

 もっとも、地方に関しては必ずしも当てはまらない。地方部ではまだまだ公立高校のステータスが高く、中高一貫校のステータスを上回っている事がある。この場合は中学受験はそこまでハードでもないし、ブランドよりも環境を意図していることが多い。ハードな高校受験を回避して中学でマイナーな一貫校に入るという構図だ。例えば札幌における札幌南と立命館慶祥の関係がこれに当たる。地方の中学受験はやや小学校受験に近い意味合いを持つことになる。

 余談だが、中学受験は独特のカルト的なところがある。小学校受験もややカルト的なところがあるが、中学受験はレベルが違う。穏健なタイプの人ですら格下の学校や非中学受験組を見下してたりする。難関校に滑って中堅上位校に進む事になった人間が、小学校の同級生に中学受験マウントを取りまくるという光景も見たことがある。
 他の受験には見られない現象である。どうにもこの時期の教育は難しいらしい。昔は中学生が多感な時期と言われたが、現在の首都圏では小学校高学年の方が多感な時期に思える。

岐路に立たされる高校受験

 高校受験は4つの受験の中で最も受験者数が多い。高校進学率はほぼ100%だからだ。しかし、上位層に限っては薄いことも知られている。大都市では学力上位層の大半が中学受験で抜けてしまっている。首都圏の場合でも人口の80%〜90%が高校受験組だが、東大進学者に限ると高校受験組は20%〜30%程度と上位層がかなりスカスカだ。上位層の多くは帰国子女と中学受験のリベンジ組で占められる。基本的にミドル層以下は高校受験組である。

 そんな高校受験だが、近年は評判が悪い。原因の一つが内申点制度である。高校入試は全入であり、公立高校の場合はどうしても中間層と下位層にフォーカスせざるを得ない。したがって、上位層の多くは公立中の不透明な内申点制度にイライラすることになる。
 内申点が嫌いな上位層は私立の高校を受ければ良いのだが、これも問題がある。私立高校の多くが最近は中高一貫化を進めているのである。したがって私立高校に入学すると「外部生」として居心地の悪い思いをするし、そもそも高校の募集枠が存在しない学校が増えている。こうした事情で高校受験の場合は受けられる難関校がかなり少なくなっている。
 近年の首都圏では高校入試のレベル低下が吹聴されており、事実上中高一貫に行けなかった人の「残り物入試」と考える者もいる。ただ、教育虐待紛いの層が中学入試で抜けるので、高校受験組は穏当だ。最近の都心では公立中よりも公立小の方が問題児が多いとも言う。中学受験は熱狂的なヘリコプターマザーが目立つが、高校受験は悲喜こもごもの15の春といった雰囲気である。

 高校受験は地頭と言われるが、筆者の感覚からすると、地頭の比重は中学受験の方が大きいだろう。ただ、中学受験のような異常な加熱化をしていないので、地頭の良い生徒は確実に難関校に入学できるのがメリットかもしれない。余計な競争をしなくて良いので超進学校に入るのは圧倒的に高校が楽である。
 中学受験で灘中に合格したのに運悪く筑駒中に滑ってしまった知人がいる。彼は公立中に進んでラクラク筑駒高に合格し、東大に進学した。こうした例は結構多い。

 なお、地方の場合は当てはまらない事が多い。地方都市では未だに公立トップ高校が君臨しているからだ。したがって首都圏だったら中学受験で抜けている層が公立高校の入試に殺到することになり、内申点がかなりシビアになる。内申点が苦手な地方都市の生徒は中高一貫校に入ったほうが良いかもしれない。もっとも東大クラスの場合は内申取りが苦手でも公立高校に受かってしまう事が多く、公立高校の入試に滑った者はほぼ見たことがない。

意外と穴場?の大学受験

 大学受験は受験の中で最も重要性が高い。基本的に学歴とは出身大学を刺すことになる。したがって伝統的に大学受験は全ての受験の中で最もハードとされる。

 しかし、近年は意外と違うのではないかと思っている。東大や医学部はとてつもなく難関だが、早慶に関しては実のところ大学から入るのが一番簡単という説があるからである。筆者の友人曰く「早慶の高校は人数が少ないし、数学が難しいから、学部を選ばなければ大学の方が遥かに簡単だよ」とのことである。そんなバカな事があるだろうか。

 この説が正しいのか検証するのは困難だ。実際に求められる勉強のレベルは大学受験の方が高いだろう。ではどうやって考えるべきか。
 早慶の小学校入試は超難関であり、一般家庭に手の届くものとは思えない。したがって考察から外れるだろう。早慶附属の中高もかなり難関だ。中学受験で早慶附属より偏差値の高い学校は筑駒・開成・麻布・武蔵・筑附・駒東・海城・栄光・聖光・渋幕・桜蔭・女子学院辺りである。高校受験となると、筑駒・開成・筑附・渋幕のみとなる。基本的に早慶附属よりも難関な高校は鉄緑会指定校クラスの有名進学校に限られると見て良い。

 大学から早慶に入る人間の出身高校に鉄緑会指定校クラスの人間は少ない。数が少ない上に東京一工医に抜けるからだ。数の上では早慶の入学者の殆どは付属校よりも偏差値の低い高校の出身ということになる。実際に大学から早慶に入った知人の出身高校は私立中堅校が多かった。地方からも優秀な生徒が入ってくるという意見もあるが、早慶の入学者の7割は関東なので、大きな影響はないだろう。

 また、大学入試にはとっておきの秘策がある。それは浪人である。大学受験の浪人はまさにマジックのようなもので、現役時に到底手が届かなかった学校に浪人で合格する者が多い。大学受験が努力と言われる論拠の一つだろう。こうなると早慶には大学から入るのが一番簡単という説にも頷ける。

 ただし、理工学部のような上位学部の入試はそれなりに難しいので、早慶附属に合格するのと難易度が近いかもしれない。実際に内部生は真面目に勉強していればこれらの学部に優先的に行けるので、レベル的には同等だろうか。
  余談だが、私の友人でいつも塾で一番の天才がいた。突き抜けて地頭が良く、ロクに勉強しなくても上位をキープしているのである。彼とは超進学校で同級生になったのだが、入学早々「大学受験は努力だよ」と言っていた。彼の天才的な読みは当たったのか、彼は大学受験で浪人する羽目になった(幸い東大には合格した)。

早期教育が引き起こした逆転現象

 現在の首都圏では受験戦争の早期化が進み、ある種の逆転現象が発生している。もはや首都圏では中学入試>高校入試>大学入試になっているのだ。
 
有名進学校に入学するのは早慶旧帝に入るのより遥かに難しい。 中学受験で早慶より難関な学校は十数校あるが、定員を合計すると3000人程度だ。高校受験に至っては四校しかなく、しかも極端に定員が少ないので300人程度だろう。日比谷や翠嵐を含めてもせいぜい1000人だ。有名進学校の生徒は同世代上位1%に確実に入っているものと思われる。
 一方で早慶の進学者は首都圏だけで1万人おり、しかも上位層は国立に抜ける。同世代上位3%に入れば十分だろう。中学受験で例えると中堅上位校程度だ。大学受験で早慶に入るのは、浪人や推薦を含めれば意外に簡単なのである。

 超進学校の筑駒・開成・桜蔭に入学するのは東大に入るより難しいと言われているので、ある意味で東大にも早慶付属校に似た構図が存在しているのかもしれない。こうした高校では東大に進むのが当たり前なので、感覚として「ハードな内部進学」に近いのではないか。ハードすぎるだろ

 開成=塾高、桜蔭=慶女、灘=慶應志木、麻布=慶應湘南藤沢といった下らない妄想をすることもできる。筑駒に対応するのは敷居の高さとレア度を考えると幼稚舎だろうか。「東大幼稚舎」とはなんとも面白いネーミングだ。センター試験の点数でマウントを取る等の幼稚な行為が頻発してそうである。


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