美容垢と、ドキンちゃん

なるべく楽しく暮らしたい
お金はたくさんあるのがいい
おいしいものを食べたいし
遊んで毎日暮らしたい

みじめな暮らしは大嫌い
朝から晩までおしゃれして
世界の中の誰よりも
美しいって言われたい

生まれた時から美人だし
頭の回転すばやいし
この世の終わりが来た時も
私ひとりは生き残る

今から７年くらい前、ツイッターでいわゆる「美容垢」界隈が賑わっていた。
「皆〜、（私みたいに）バチバチに綺麗になって行こうな」
「◯◯（サプリ名）飲んで肌を発光させていこうな」
「美は暴力」
「ナンパなんてされてるうちはまだまだ」
「一日の摂取カロリーは８００キロカロリーくらい」
などの彼女らの強気な物言いと、美に対する恐ろしいまでの執念が、なかなか読んでいてパンチが効いており、よく炎上しているのも含めて面白く、かつプチプラからデパコス、当時大流行していたアイハーブのおすすめ品などを大量に紹介してくれており、有効活用もまあまあできるという事から、私は美容垢収集専用アカウントを拵え、興味本位でよくTLをチェックしていた。

名前は伏せるが、中でも好きだった女性発信者の方がいた。とても美しく、コスメや食事を写真付で詳しく紹介し、つぶやきもユニークで面白く、かつ顔出しはなしの声のみのライブ配信もたまにしていて、受け答えの感じもとても感じがよい方だった。だがある日、自分だと言って載せていた顔写真が全部、全く無関係の韓国のインスタグラマーさん（そこまでの有名人ではない方）の写真を反転させてちょこっと加工していた物だった事が、別のアカウントの方（探し当てた方も怖いが…）に指摘され、確か一言「ネット怖…」などと呟いて姿を消してしまったのだ。これはまあまあショッキングな出来事だった。

彼女以外にも、流石にこれは虚言では…と思われるとんでもモテモテエピソードばかりを垂れ流す垢が多数あったり、謎の「◯◯ちゃん」というちゃん付けアカウント名が大量発生していたり、なんだか当時のその界隈は特殊な雰囲気だったのを覚えている。「ああ…皆病んでるな…」と思いながらその様子を眺めていた。

そんな中、当時美容垢界隈でちょっとバズっていたのが、上記の歌詞である。
これはアンパンマンに出てくるドキンちゃんのキャラソングの一部抜粋した歌詞なのだが、ああ、これが当時の美容垢界隈の方に刺さったのがなんとなくわかるなあと思った。私自身もなぜかとても記憶に残っている。

多様性の時代だし、いろんな形の美があり、造形美だけが魅力なのではない。それはよく分かる。でも、このドキンちゃんの歌詞はいつの時代にも残念ながら通じてしまう綺麗事なしの、普遍的な女性の願望の根本を歌っているようにも思う。
「バッチバチの爆美女になってお金持ちで頭も良くて強くて、自分の好きな人とだけ過ごし、好きな事だけをして生きる」って、結局のところ、最強なんだろうなと思う。

今はもう美容垢を除く事はほとんどなくなったが、今もあるんだろうか…どう変化しているのだろうか…興味本位でまた覗いてみようかな。