議論における建設的でない言明の分類
議論における建設的でない言明を分類してみました。
概覧
建設的でない言明
誤謬または詭弁
妥当でない推論規則
前件否定
後件肯定
選言肯定
未反証による論証
論理的欠陥
循環論法
言語使用上の欠陥
媒概念多義
不誠実な主張
選択肢限定
論点のすり替え
曲解
説明不足
自明でない命題断定
自明でない論理飛躍
自明でない言葉の未定義使用
モラルが欠落し議論の命題内容に無関係な主張
個人攻撃
誤謬または詭弁
誤っている主張のことです。意図的でない場合は誤謬、意図的な場合は詭弁となります。以下に誤謬や詭弁となりうる言明を述べます。
妥当でない推論
論理学的に妥当でない推論です。自然科学で用いられる論理学的に妥当でない推論(不完全枚挙的帰納法、類推法、仮説形成法)については除いています。
前件否定
「AならばBである。Aでない。よってBでない」という推論です。日常言語においては真のことも多いですが一応論理学的には妥当性はありません。
後件肯定
「AならばBである。Bである。よってAである」という推論です。個人的には普段の思考で無意識的に陥ることがあります。主観ですが前件否定よりも偽のことが多くなおかつ割と見かける気がします。
選言肯定
「AまたはBである。Aである。よってBでない」という推論です。共通部分があるかもしれない(包含的論理和)なら妥当性はないですが、共通部分がない(排他的論理和)なら妥当な推論です。正直あんまり見ないです。
未反証による論証
「Aである証拠がない。よってAでない」という推論です。無茶苦茶ですが割と議論では見かける気がします。
論理的欠陥
循環論法
「Aである。なぜならBだから。BなのはCだから。CなのはAだから」というような論法です。あまり見たことはないですが、理由を追求した時に起こることがあるのでしょうか。
言語使用上の欠陥
媒概念多義
一つの言葉を複数の意味で用いることです。それ自体は悪いことではないですが、意味を明示しないと誤解が生じる場合があります。詭弁としては使いやすい部類でしょうか。
「彼は考え事をするときにwhyよりもhowを考える傾向があると公の場で言っていた。つまり彼は公の場で自身の性癖を開示した。公の場で自身の性癖を開示するなど彼は非常識だ」
これは性癖が多義的に用いられた例になります。
不誠実な主張
主張が偽であるというわけではないが誠実でない主張です。
選択肢限定
文字通り誤って限定された選択肢を提示することです。誤った二分法と呼ばれる詭弁はこれに該当します。それなりに見かけます。
論点のすり替え
今の論点を無視して新たな論点に基づき主張を行うことです。明示的に論点を変えるなら問題ない場合もありますが何も言わずに変えると話がかみ合わなくなることが多いです。
曲解
文字通り相手の主張を捻じ曲げて解釈することです。意図的に行いその曲解内容に反論する場合はストローマン論法と呼ばれます。結構行われているのは見かけます。
説明不足
説明が足りないがゆえに正しさが判断できない主張です。
自明でない命題断定
根拠なく自明でない命題を断定することです。非常によく見かけます。そのあとに命題が成立する理由を説明してくれればいいのですが、されないことも多いです。
自明でない論理飛躍
日常言語においてはある程度論理を省略しても伝わりますが、それですまされない、明らかに必要な命題が不足している主張のことです。それなりに見ます。大抵の場合は背後にある論理を相手が推測して確認することで解決されます。
自明でない言葉の未定義使用
多義語や一般的でない言葉を説明が必要な文脈で定義せずに用いることです。一例として、少なくとも一方が多義的である二つの概念の比較においてその多義語の意味を定義せずに考えることが挙げられます。多義的であることを断った上で論じたい意味を指定するなら問題ありませんが、その断りなく用いると誤解が生じることがあります。
モラルが欠落し議論の命題内容に無関係な主張
個人攻撃
「この人はPであるため主張に説得力がない」という言明のことです。少なくとも何らかの建設的結論を目指す議論においてこの言明は論外でしょう。
おわり
以上になります。多少なりとも一般的な議論で見かけるような気がする建設的でない言明を分類しました。自分も気を付けたいものです。
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