びっくり栗クリくりっくり
最近スーパーで美味しそうな栗を見掛けました。
買ったわけではありませんが、仲良く山盛りになっている、まん丸としたふくよかな栗たちは、昔のことを思い出すのに十分でした。
秋夕(추석)
韓国に来て2年目の秋、秋夕(추석)を迎えました。前年の秋夕では何をしていたのか全く覚えていないので、記憶の中では、初めての秋夕ということになります。
秋夕は陰暦8月15日の中秋節に行われる伝統行事で、旧正月のソルナル(설날)と並んで二大名節といわれています。日本のお盆のように、前日と翌日を含む3日間が休日となり、多くの韓国人は故郷に帰って家族と一緒に過ごします。
海外にいると、このような伝統行事が盛大に行われる休日は、意外にも暇になることが多いです。ほとんどの友人は実家に戻るため、遊ぶ相手はいません。もちろん学校も休み。秋夕を迎えるために賑わっていた街も、休日に入ると一気に静まり返り、普段はホームシックとは無縁な私も妙な寂しさを抱いたのを覚えています。
そんな外国人ならではの心情を知っていたのかもしれません。言語交換をしていたオッパ(오빠)が、「秋夕には知り合いのお姉さん(누나)の家に行くから一緒に行かないか」と誘ってくれました。「韓国の文化を知る良い機会だから」とのこと。
秋の味覚と栗
場所は覚えていませんが、確かソウルの郊外か京畿道(경기도)だったと思います。一軒家で畑があり、柿やミカンの木も植えられていました。忙しさは一切ありません。非常に穏やかです。
そんな雰囲気の中、家に上がって話をしていると、さつまいもと柿、梨、栗が出てきました。まさに、秋の味覚です。さつまいもは蒸してあり、柿と梨はお姉さんが皮をむいてくれました。台所ではなくみんながいる目の前で果物を切って食べるのは、韓国の家庭ではよく見られる光景で、個人的にも韓国らしさを感じる瞬間でもあります。
どれもこれも、甘くて美味しかったなあ。
さてさて、栗です。
お姉さんは器用に外側の固い皮をむき、中の渋皮も綺麗にむくと、そのまま口にぽんっと放り込み、ぱくっと食べてしまいました。
お姉さんは引き続き、栗の皮をむき続けます。
はい、どう見ても生栗です。
茹でたり焼いたりしているのであれば、あのようなむき方はしないはず。ふたつに割って、スプーンで食べるはずです。でも、お姉さんとオッパは、当たり前のように栗を食べ続けます。カリコリと音を立てながら・・・。
衝撃。
生栗はえぐみが強くて食べられるはずがないという考えと、目の前で起きている光景があまりにも違いすぎるため、私は静かに、ひとり困惑していました。
しかし、そんなふたりの姿をじっと見つめていると、ある瞬間から、こう思い始めます。
ということで、勇気を出して食べてみることにしました。
すると、意外や意外、美味しかったのです。
カリッとした独特の歯ごたえと、ほのかな甘み。
みずみずしさもあり、渋みやえぐさはほとんどありません。
むしろ、ひとつ、ふたつ・・・と食べていたら段々と癖になり、「今まで食べてきた焼き栗よりも好きかも!」とまで思う始末ーー。
何事も、分からないものですね。
◆◆◆
実は、韓国で食べたものの中で最も驚いたのが、この生栗でした。スンデなんかよりも、驚き度は高し。身近で目新しさは一切ないにもかかわらず、生のままでは食べられないという強固な先入観があったせいでしょう。
カルチャーショックは知っていることの中にこそあるんだと、学んだ瞬間でした。
最後にーー。
もし生栗を食べてみようかなと思われる方がいましたら、穴が開いている栗には虫がいる、または、いた可能性が高いため避けてくださいね。
ではでは。
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