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#16.遠い昔、私は自分に嘘をついた

自分に嘘をついたことがありますか。
もしあるとしたら、その嘘を、あなたは覚えていますか。
その嘘に騙されて、それが本当だと信じたままで、生きていませんか。

 ーーある日、歌詞を追いながらある曲を聴いていたときのこと。遠い昔、私は自分に対して大きな嘘をついていたことを知りました。


네가 아파할 때가(君が苦しいときの方が)

 歌の中には、このような歌詞がありました。

내가 아플 때 보다
僕が 苦しいときよりも
네가 아파할 때가
君が 苦しいときの方が
내 가슴을 철들게 했고
僕の心を 成長させた

 ここでは 아프다 を「苦しい」と訳しましたが、一般的には「病気/体調が優れずつらい」という意味で使うことが多い単語です。


 この歌詞を聴いたとき、昔のことを思い出しました。

 現在私は韓国人の男性と結婚してひっそりと穏やかに暮らしていますが、結婚する前の彼は大病を患っていました。手術を受けなければ亡くなるのは確実でしたが、その手術も受けられるかどうか分かりません。

 彼の体力は、日に日に弱まっていきます。当時から一緒に住んでいましたが、仕事を終えて家に帰ってもしんどそうな彼の姿を見るのがつら過ぎて、ふたたび家を飛び出して親しい韓国人のお姉さんの家に行くことが何度かありました。

 願っても無理なのは百も承知。それでも「私の健康を彼にあげて、代わりに私を病気にしてください」と、何度も、何度も、泣きながら願いました。寺院でも、教会でも、大聖堂でもーー。聞いてくれるのであれば、神様でも仏さまでも、誰でも良かったのです。

 ただ、どれだけ強く願っても、それは彼のためではなく自分のためだということは分かっていました。病気の彼を見ているよりも、自分が病気の方が楽だったのです。苦痛のなかで徐々に弱まっていく彼に対して何もできないということが、とにかく虚しくて悲しかったのです。

 ーーそんなある日。

 いつものように仕事を終えて帰宅する途中、家の近所で彼が歩いているのを見掛けました。彼もまた、近くのスーパーで買い物をして家に帰るところでした。家に続くその道は少しだけ上り坂になっていて、あのときの彼からすれば歩くのも大変だったと思います。

 それでも、彼は一生懸命に歩いていました。
 一歩一歩、ゆっくりと、確実に 
 本当に、一生懸命に、歩いていたのです。

 そんな彼の後ろ姿を見て、私はこう思いました。

ああ、この人は、私に生きることを教えに来たんだな・・・。


自分は生きることが一番苦手で、一番嫌いだ

 12歳でうつになって以来、私には変わらない想いがありました。

生きることが一番苦手で、一番嫌い。

 それは20代になり元気を取り戻したあとも変わりませんでしたし、これはもう自分の本質のようなものなのだと完全に諦めきっていたのです。

 どれだけ楽しく充実した日々を過ごしても、ふとした瞬間に「死にたい」という気持ちが現れるような人生でした。だから、私はきっとどれだけ人生を謳歌したとしても、最後は必ず自殺で終わるのだと思って疑いませんでした。

 しかし、あの日ーー。

 日が沈んで薄暗くなった坂道で一歩一歩ゆっくりと、でも、確実に力強く歩んでいた彼の後ろ姿は、私に「ただ生きる」ということを伝えていたのです。

 それまでは、一生懸命に仕事をしている人、一生懸命に勉強している人、一生懸命にスポーツに打ち込んでいる人などは見たことがありましたが、「ただ生きる」ということに対してここまで一生懸命に真摯に向かっている人の姿を見るのは初めてでした。

 それが、とてもショックでした。

 そして、この瞬間から「死にたい」と思う自分の気持ちに付き合うことはもう止めようと思いました。

 上手に生きることも、正しく生きることも、優雅に生きることも、大して重要ではないのです。

 「ただここに居て生きている」ということが、こんなにも尊いものなのだと、思い知らされた瞬間でした。


거짓의 옷을 벗어 버렸다(嘘という服を脱ぎ捨てた)

 歌はその後、こう続きます。

너의 사랑 앞에
君の 愛の前で
나는 옷을 벗었다
僕は 服を脱いだ
거짓의 옷을 벗어 버렸다
嘘という服を 脱ぎ捨てた


 そして、この「嘘」という言葉で気づかされたのです。

「生きることが一番苦手で、一番嫌い」というのは、
遠い昔、私が自分についた嘘だった。

 「自分は生きることが苦手」という理由を付けて、「自分の人生がつらいのはしょうがないことなのだ」と自分に言い聞かせていたのです。そして、「自分は生きることが一番嫌い」だから、「生きることが苦手で当たり前なのだ」と言い訳をしていたのです。


 でも、実際の私は、生きることが大好きだったのです。

 だから生まれてきたし、だから今でも、生きているのです。

 そして、生きることが大好きだから、

 これからも、死ぬまでちゃんと、生きるのです。


◆◆◆


 皆さんも、

 もし自分についた嘘があるのであれば、早めに気づいてくださいね。

 でないと、嘘で騙された自分のままで、

 あなたの大切な人生を、送ることになります。

 そんなことになったら、

 折角の人生が、もったいないったらありゃしない。

 

 本来のあなたは愛の溢れる優しい存在です。

 そんなあなたの存在で、

 愛たっぷりの、優しさに満ち溢れた世界を創りましょう。

 自分はそんな人間じゃないって?

 そんなことはできないって?

 もしそう思うのであれば、

 それは、あなたが自分に嘘をついているからかもね。

 これが、自分の嘘に騙されてないかを確かめる、ヒントです。


◆◆◆


잔나비(Jannabi): 사랑을 위하여(For Love)

 最後に、私が聴いた曲をご紹介します。下に歌詞翻訳を付けているので、良かったらお聴きください。とても素敵な曲です😊


◆ 잔나비(Jannabi)

 これは、잔나비(Jannabi)というバンドグループが『不朽の名曲』という番組で 김종환(キム・ジョンファン)の『사랑을 위하여(愛のために)』を歌った映像です。

 ヴォーカル 최정훈(チェ・ジョンフン)の歌声とパフォーマンスは圧巻です。さらに注目してほしいポイントは、彼の美しい肌!あれは絶対にファンデーションだけの力ではないはず(マジで)。


◆사랑을 위하여(愛のために)

이른 아침에 잠에서 깨어
朝 早く 目を覚まし
너를 바라볼 수 있다면
君を 望むことが できるなら
물안개 피는 강가에 서서
水霧が立ち込む 川のほとりに 立ち
작은 미소로 너를 부르리
小さな笑顔で 君を 呼ぶだろう

하루를 살아도 행복 할 수 있다면
一日を 生きても 幸せに なれるなら
나는 그 길을 택하고 싶다
僕は その道を 選びたい
세상이 우리를 힘들게 하여도
世間が 僕たちを 苦しめたとしても
우리 둘은 변하지 않아
僕たち ふたりは 変わらない

너를 사랑하기에 
저 하늘 끝에
君を 愛しているから あの 空の果てに
마지막 남은 진실 하나로
最後に 残った 真実ひとつで
오래 두어도 진정 변하지 않는
長い間 そのままに 決して 変わることのない
사랑으로 남게 해주오
愛として 残るように してください

내가 아플 때 보다
僕が 苦しいときよりも
네가 아파할 때가
君が 苦しいときの方が
내 가슴을 철들게 했고
僕の心を 成長させた

너의 사랑 앞에
君の 愛の前で
나는 옷을 벗었다
僕は 服を脱いだ
거짓의 옷을 벗어 버렸다
嘘という服を 脱ぎ捨てた

너를 사랑하기에
君を 愛しているから
저 하늘 끝에 마지막 남은 진실 하나로
あの 空の果てに 残った 真実ひとつで 
오래 두어도 진정 변하지 않는
長い間 そのままに 決して 変わることのない
사랑으로 남게 해주오
愛として 残るように してください

하루를 살아도 행복 할 수 있다면
一日を 生きても 幸せに なれるなら
사랑으로 남게 해주오
愛として 残してください
오래 두어도 진정 변하지 않는
長い間 そのままに 決して 変わることのない
사랑으로 남게 해주오
愛として 残るように してください

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