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デザインを守るための権利の話

こんにちは、LTSデザインチームのおおきです。
先日制作していたロゴが完成したのですが、商標登録をしようとしたところだいぶ先になることを知り、愕然とする…という出来事がありました。

この経験を踏まえ、今回はデジタルプロダクトのデザイナーでも知っておいたほうがいい知識についてまとめてみようと思います。

作品そのものや創作者を守る「著作権」

創作者の思想や感情を表現したものを著作物と言います。
デジタルプロダクトに関連の深いものだと、イラストや画像、Webサイトなどがこれに当たります。

その著作物を創った人の権利を保護するのが著作権です。
権利者に許可なく著作物を使用したり、その著作物をもとに新しい創作をすると著作権侵害に当たる可能性もあります。

●著作物の定義

  1. 思想・感情が込められているもの(事実やデータは認められない)

  2. 創作者の個性が現れているもの(模倣や創作が加わっていないものは認められない)

  3. 表現したもの(頭の中のアイデアやイメージは認められない)

  4. 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(工業製品などは認められない)

「著作物」と言われるためにはこの4つを満たす必要があります。
逆にこの要件を満たしていれば誰が創作したものでも著作物となります。

●著作権はどうしたら発生するの?

著作物を創作した時点で自然と発生するため、特に手続きをする必要はありません。

●会社に所属するデザイナーが創作したものの著作権は誰にある?

原則として著作権は著作物を創った人が持つと書きましたが、会社の業務として創作した著作物はその会社に帰属します。
たとえ自身が創作したものでも、その会社を退職した場合、勝手に使用したり改変するのはNGです!

●著作権に関するトラブルを避けるためにデザイナーができること

特にクライアントワークの場合、著作権はデザイナーに帰属するものという共通認識をクライアントと持つようにしましょう。
クライアント側で自由に使用・加工などしたい場合は著作権の譲渡契約を結ぶこともできます。

イラストや画像など他人の著作物を使用する場合は、権利者の許諾を得たり、素材サイトの規約をきちんと読むなどしましょう。
Google画像検索・Googleレンズを使用して自身の著作物と同一・類似したものがないか調査するのも有効なようです。

ブランドの価値を守る「商標権」

商品・サービスを区別するために使用する文字や図形などのマークを保護するのが商標権です。

商標権が発生すると、その権利者以外は商標を勝手に使用できず、類似した商標が登録・利用されることを防ぐこともできます。

●商標の種類

商標というとロゴやサービス名が一番に浮かびますが、平成27年4月から動き、ホログラム、音、位置、色彩なども商標に含まれるようになりました。
東京スカイツリーのように立体形状として登録されているケースもあります。

出典:特許庁「事例から学ぶ 商標活用ガイド」

●どうしたら商標を取得できるの?

特許庁に出願して審査を通過し、商標登録されると発生します。(10年ごとに更新が必要)審査などの工程があるため、費用も発生します。
審査期間について、特許庁のサイトでは以下のように書かれています。

出願から最初の審査結果の通知(登録査定または拒絶理由通知)まで約6ヶ月要しております(2023年3月現在)。

引用:特許庁「商標制度に関するよくある質問」

私はこれを知らずにもっと短い期間で登録できるものと思っていました💦
皆さん余裕を持って出願しましょう…

●商標権を侵害しないためにデザイナーができること

様々な商標が登録されており、その類似する範囲まで商標権の効力が及ぶことから、意図せず他社の商標権を侵害してしまう可能性もあります。
商標権を侵害してしまうと、使用差し止めだけでなく、損害賠償が請求されるリスクもあります。

特にロゴデザインをする際は最終確定前に似た商標が登録されていないかチェックしましょう!

商標の簡易チェックができるサービス
J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)
Toreru商標検索

オリジナリティを守る「意匠権」

独創的で美感を有する物品(物品の部分も含む)の形状、模様、色彩等のデザインを保護するのが意匠権です。
著作権で保護されない工業製品は、この意匠権で保護されます。
令和2年4月から保護対象が拡大し、画面デザイン(UI)なども対象となっています。

出典:特許庁「イノベーション・ブランド構築に資する意匠法改正」

意匠権が発生すると、権利期間が終了するまで模倣類似したものを排除することができます。

●意匠権登録の主な要件

  1. 工業上利用できるもの(設計図から複製できないため美術品などは認められない)

  2. 今までにない新しさがあること(すでに同一や類似したものが存在すると認められない)

  3. 容易に創作できないもの(簡単に思いつき模倣できるものは認められない)

  4. 意匠の一部を含め、同一・類似したものが出願されていないこと(他の人が先に出願していれば認められない)

  5. 不登録事由に該当しないもの(公益を損ねるものなどは認められない)

  6. デザインごとに出願していること(複数をまとめて一つの出願にすることは認められない)

●意匠権はどうしたら発生するの?

商標と同様、特許庁に出願して審査を通過し、意匠登録されると発生し、登録費用もかかります。(存続期間は出願日から25年)
こちらも商標と同じくらい登録までに時間がかかるようなので、余裕を持って出願しましょう。

●意匠権を侵害しないためにデザイナーができること

こちらも同じような意匠が登録されていないか簡易的に調査することができます。
特にUIデザインではユーザビリティを考慮して業界標準のものに合わせにいくこともあると思うので、定期的にチェックすることをおすすめします。

意匠の簡易チェックができるサービス
J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)
Graphic Image Park(画像意匠公報検索支援ツール)


ここでまとめた内容はかなり概要的なもので、私自身も専門知識を持っているわけではありません。
もっと詳しく知りたい方は特許庁のサイト文化庁のサイトにアクセスしてみてください。

デザイナーは日々何かを生み出していますが、その権利を守る法律について知っておくことで、自分自身の創作物を守るだけでなく、意図せず自分が権利侵害をしてしまうことも防げます。

デザイナーが互いに気をつけ合い、創作を楽しめる世界を作りましょう!