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新潟、静岡、松山、沖縄にNPB新球団が作られるには

※ 2021/6/26、新潟の「日本海ドームシティプロジェクト」に関する内容を追加


先日、
NPBへの新規参入を目指して
静岡市、新潟市、松山市、沖縄県が合同会議を行った
との報道があった。
この4都市にNPBの新球団を作る場合、
必要なものは何なのか。
すぐ思いつく範囲で書いてみる。
例によってかなりひどい無茶ぶりもあるので
そのことを承知のうえでご覧いただきたい。

静岡

草薙球場

静岡判定

静岡県じゃなく静岡市となっていたので人口の判定はD。
駐車場がない草薙球場をホームとする場合、
時間にして片道1時間半、
往復で内野指定席並の金額(3,000円超)を費やす浜松を
フランチャイズ圏内に組み込むのは無理がありすぎる。

静岡では球場の改修か新球場建設が必須だ。
草薙球場の座席にはドリンクホルダーがなく
ネット裏以外には背もたれもない。
さらに静岡市は雨が非常に多い。
突発的な雨量は熊本や鹿児島ほどじゃないが、
6~9月まで毎月250~300mmを記録するのは
このレベルの都市圏では全国一のはずだ。
なので本当は
鉄道駅徒歩10分圏内でのドーム球場の建設が望ましい。
草薙を改修して使い続けるのであれば
座席を総とっかえして内野席を屋根で覆い、
芝を総天然芝か総人工芝化して
ようやく少しは何とかなる程度だろう。

ただ静岡市では、
やはり屋根がほとんどなく交通の便も悪い日本平を使用する
清水エスパルスも新スタジアムを必要としている。
鉄道駅から近いところに
球技専用スタジアムと開閉式ドームと駐車場を隣接させるのがベストだが、
果たしてそんな資金も土地もあるのか。

新潟

HARD OFF ECOスタジアム新潟

新潟判定

交通面を向上させるには
新潟駅からライトレールか路面電車などを作るか
田んぼをつぶして道路を拡張するぐらいしか方法がない。
ただこのあたりは、
鳥屋野潟や川、高速道路などの関係で
新しい公共交通を整備したくても
エコスタからさらに住宅街までつなげる手段がないようで、
せいぜいこの西にある市民病院へ接続させるぐらい。
駐車場をもっと広げられても道路を拡張しなければ
さらに渋滞がひどくなるだけだろう。
交通に関してはいささか絶望的に見える。

地方球場としてはかなり立派なエコスタだが、
それでも改修は必要だ。
球場のうりの一つにもなっていると思われる
外野の木のベンチをどうするかは選択次第だが、
背もたれだけでドリンクホルダーのない内野席は
最低でも付け替えたい。
雨に関しては仙台とそこまで変わらず、
4月の体感温度も仙台より少し暖かいぐらい。
屋根も必要かと思ったが
4月のデーゲームの日照時間を優先した方がいいのかもしれない。
芝は人工芝が敷かれているので問題ないだろう。

一方で
2021年に発足した
「日本海ドームシティプロジェクト」が成就するなら
ここまでに述べた問題はある程度解決する。
発足イベントの画像で示唆されたような
JRと大きな幹線道路の両方が近い用地を
確保できるのであれば。
ただある程度というのがくせもので、
条件を満たしそうな土地が
高速道路に近い場所しか探し当てられない。
そして
後半に述べる最重要条件の点で
新潟はあくまで
16球団候補地の中では最上位候補の一つ程度の存在にすぎず、
日本海側にプロ野球球団がなかった最大の理由が
球団を作っていい地域が一つもなかったから
であることを示している。
これらをすべて頭に入れたうえで
新潟の話は見ていかないといけない。

松山

坊っちゃんスタジアム

松山判定

雨は他の日本国内に比べるとかなりましなほうだが、
それでも6・7月はそれぞれ約200mmの雨が降る。
ここも天然・人工どちらでもいいから
内野に芝を敷く必要がある。
屋根はほとんどなく、
跳ね上げ式のドリンクホルダー付座席はネット裏だけなので
これらの部分もできるだけ改修し、
熱中症で倒れる観客が続出する事態も防ぎたい。

駅が隣接していて
一見何の問題もなさそうに思える交通も難点が多い。
普段無人の市坪駅は狭く、
全ての車両のドアが開けられない。
球場のある西側ばかり見ていると気づけないが、
東側の土地と建物が線路と密接しているので
拡張したくてもその余地はない。
また車の利用もかなりきつい。
というのも
石出川と重信川の合流地点に作られているためか
松山外環状道路以外スムーズに抜けられる道路がなく、
この広くない駐車場程度の量でも
環状道路が渋滞を起こすらしいのだ。

一言で要約すると、
交通の改善はかなり厳しい
自治体やJRの協力程度で済む話ではなかったようだ。
解決するには
運動広場と競輪場をつぶして駐車場にし、
それによって2つの橋を経由した北西への接続を作るという
極めて乱暴な手段ぐらいしか思いつかない。
あるいは比較的新しく評判もいいこのスタジアムを捨てて
どこかに新しい球場を作るかだ。

那覇

沖縄セルラースタジアム那覇

沖縄判定

南九州や本州・四国の太平洋沿岸に比べれば
雨は多くなく、意外と気温も高くない。
と言ってもあくまで「少しはまし」程度
那覇よりちょっと高い広島が何とかなっている暑さはどうにかできても
雨はさすがにどうしようもない。
また球場への公共交通手段はモノレールしかなく、
車の利用が多い沖縄なのに
公式サイトではかなり離れたところにある駐車場から
球場までモノレールで移動することすら勧められる環境だ。

この2点を総合すると
本来必要なのはドーム球場の建設
那覇市内または近隣都市のどこかに
ドームと広大な駐車場を作れる広大な土地があればいいのだが。
とはいえ国道58号線沿いにあるこの場所も
沖縄県内ではかなり交通の便がいい部類と考えられる。
だとするとあとやれることは、
奥武山公園北東側の土地を全て買収し
ここと陸上競技場の跡にドームを作るぐらいになる。
セルラースタジアムと武道館、庭球場などは取り壊して駐車場。
さすがに山と神社はつぶせないからね。

セルラースタジアムをそのまま使う場合も、
すべきことはあまり変わらない。
球場は屋根を広げてさらに内野席を覆えるようにし、
ネット裏のごく一部にしかない跳ね上げ椅子を内野全てに完備させ
芝生席の外野にも個別の座席を置く。
芝は全て人工芝にするか内野にも天然芝を敷くかだ。
広大な駐車場も必須事項なので
先述の土地買収と陸上競技場等の駐車場化は欠かせない。

四都市共通

はっきり言ってしまうと、
この四都市は人口の時点でアウトだ。
球団運営に必要な都市圏人口は
MLBとNPBともに最低200万人
しかし最も多い新潟でもマイナーリーグのAAAでは13番目。
静岡は19番目にあたる人口しかなく、
那覇や松山にいたっては
AAAの下~AAの中レベルにすぎない。
AAAからAAのリーグ観客動員数は平均3,300~7,000人。
AAAで最も動員数が多いラスベガスでも
平均9,299人で10,000人には届かない。
ちなみに昨年のAAAの
平均観客動員数はこうなっている。

画像5

8,000人以上は7チームあったが、
アレンタウン(約83万)にある
アイアンピッグス以外の6チームは
167~221万人の人口を抱えていた。

いくらその土地の野球人気が高いなどと言っても、
プロ野球の試合を年間何十試合も見に行ける
熱心な「プロ野球ファン」の数は
物理的、時間的、金銭的にもたかが知れている。
多数の観客動員数を確保するためには
コアなファン以外の観客を呼び込み続けねばならないのに、
肝心の「人の数」自体が少なくては限界がある。
国内のトップリーグだから
AAAよりはもう少し増えるだろうけども、
それでも10,000人程度で止まることは見越さねばならない。
となれば
何としてもやらないといけないのは
平均観客動員数10,000人程度でも
球団経営を成り立たせる手法の構築だ。
前にもふれた内容でしつこいと思われるかもしれないけども、
この条件が達成できないことには
せっかくの新球団もすぐ合併か消滅、
なんて事態にもなりかねない。

「16球団」に求められる「変化」と「変化してはいけないこと」

既存の12球団にもこうした努力と改革は求められるだろう。
元々の人口が限られているから
各本拠地へ移住した人の数も限られているのもあるが、
そもそも遠征するファンの数が少ないうえに
移動手段の数が他の地域より乏しくなる。
「地域密着」と言うと聞こえはいいが、
結局のところ
新規4チームファンの動員はほとんど見込めなくなり、
そのぶん平均観客動員数も減少するのだ。
16球団でリーグを解体し四地区制を主張している人が出るのは、
選手・スタッフの移動費の削減とともに
ファンの移動しやすさの側面もあるのかもしれない。

そしてこれらの経営改革は
選手の年俸水準を大幅に下げることなく行わなければならない。
「16球団」にせよ「12+24球団」にせよ
「プロを目指すアマチュア選手への門戸が広がる」と
一見それっぽい夢を語って支持する人は多いけども、
その結果
一軍で活躍し続けても年俸が1000万円程度からなかなか増えず、
二軍選手の年俸が手取り88万円になるようでは
夢も希望も現実もない。
喜ぶのは
「最近の野球の年俸は上がりすぎだ」
「二軍や独立リーグは恵まれすぎていてハングリー精神が足りない」
「好きなことをして金貰うなんておこがましい」
などと言っている
他人が金を儲けるのがいやなだけの連中と
20代前半の若手を2~3年でとっかえひっかえするプロ野球が見たい
高卒至上主義の「若手厨」だけだ。


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