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「レベルの低下」が本来「16球団構想」の妨げにはなりえない理由

「16球団構想」に対する反論の中で、
おそらく一番よく見られるのが
「レベルが低下する」
基本的に私はこのnoteやブログで
16球団構想についてあまり肯定的なことを書いてないが
この点に関してはあまり考えなくていいと思う。


日本では「レベルが高い野球」が求められていない

野球に限らず
スポーツ関係者全般にありがちなことだが、
スポーツを見ている人の大半は
そのスポーツの「レベルの高さ」を見てはいない。
中でも野球ではその傾向が顕著だ。

「いやそんなことはない。
俺はレベルの高い野球を見たいと思っている!」と
怒ったそこのあなた。
じゃあなぜあなたは
大学野球や社会人野球を見ないのに
高校野球だけは見る
んですか?
日本ではほとんどの選手が高校野球を経て、
そこからある程度選抜された選手が
NPB、独立リーグ、大学、社会人などへ進む形態になっている。
どの場合でも
高校野球よりはレベルが上がるはず。
なのに独立リーグ、大学、社会人を見る人は非常に少ないのだ。
唯一両立する考え方は
「レベルの高い選手は全て高卒でプロ入りするから、
大学以降のアマチュアにろくな選手は残ってない」だ。
こういう考え方をする人は
プロ野球ファンの一定数を占める「若手厨」を含めて
結構な数がいるから、
高校野球以外のアマチュア野球や独立リーグを見ない志向は
一応成立しないこともない。

ただそうすると疑問点が二つ生じる。
まず彼らは20歳そこそこの選手をやたらと使わせたがり、
年齢的に最もレベルが高くなっている選手は
徹底的に「老害」扱いして干そうとする。
結局はレベルの高さが求められていない。
もう一つは
「大学生や社会人にプロ野球への門戸を広げろ」という彼らの主張。
「選手ファースト」を自称してはいるが、
実際には野球選手、特に大学・社会人の選手を
ものすごい勢いで見下しているわけだ。


「レベルの高い野球」の定義とは

そもそも「レベルの高い野球」ってなんだろう?
まず現代野球の特徴はといえば、
「効率野球」だと思う。
勝利に対して最も効率の良い手段を追求する。
たとえばフライボール革命にしても
その前の極端な守備シフトにしても、
全ては効率よく点を取り、失点を減らすために行われてきた。
勝負の世界である以上、
勝ちへの効率を重視し、追求していくのは
「レベルが高い」と言って問題ないはずである。
そのために選手は
不正行為以外のあらゆる角度から
自身のパフォーマンスの向上をめざし
日々研鑽している。
そして現代は
「角度」の数が飛躍的に増えていて、
しかもプロだけじゃなく
高校生などのアマチュアもこの恩恵を受けている。
だからプロの「レベル」も当然上昇しているはずなのだが、
レベルが上がっていると思っている人はほとんどいない。
それどころかMLBもレベルが下がっていると言い、
さらには高校野球などもレベルが下がったと言う人が
長年見てきた「野球通」ほど多い。

ということは、
まず勝利への効率や身体能力などは
「レベルの高さ」には含まれないことになる。
その一方で野球の技術については
先ほど述べた点、
技術が充実する年齢の選手は別に見たくない、
技術はまだまだの10代~20歳前後の選手を見せろ
という主張が証明している。

その一方で「レベルの高い野球」とは
バントやボールの正面で球を受ける守備など
長年の日本球界を支えてきた
「目に見えるミスを避け、最悪を回避する野球」、
いわゆる「負の野球」で判断されることが多い。
この「負の野球」は
「1敗したら全てが終わる」アマチュア野球(特に高校)の試合方式と
非常に相性が良く
「レベルの高さ」の前提条件となっていたと言っていいと思う。
しかし、
「期待値を追求した結果、最悪をひくこともある」現代野球とは
相性が良くない。


インプリンティングの恐怖

エクスパンションによる「野球レベルの低下」に不安を抱いている
プロ野球選手やOBの皆さん。
野球ファンで
あなたがたが見せたいと思っている
「野球レベルの高さ」を見ている人は
意外とたいした数いない。
その点は安心してください。
いや非常に、非常に残念すぎる話ではあるけど。

ただ
これもどのスポーツでも大差ないだろうが、
高校野球などをよく見ていて
「自分は目が肥えている」
「自分はレベルの高い野球が見たいんだ」と自画自賛している人が
かなり多いと考えられるのが厄介だ。
この人たち(野球解説者、ライターなどを含む)が
「プロ野球のレベルが低すぎる」と認識してしまった場合、
自分でプロ野球を見なくなるだけじゃなく
「16球団になってプロのレベルは見る価値がないほど低くなった」と
喧伝する可能性が非常に高い。
実際この人たちは
張本勲、広岡達朗といった巷で「老害」と称される人たちから
こう言われると激怒して反論するが、
普段自分が応援するチームなどを批判する時は
だいたいこの手の「レベルの低さ」を叩いているのだ。
以前池田純・元ベイスターズ社長が指摘していた
レベルの低下による観客動員減少の懸念は、
こうした刷り込みによる部分も憂慮していたのではないかと
考えられるのである。

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