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「球団数削減」は「球界が」旧態依然だからなのか

大昔からある球団数削減思想

地方のTV番組で
16球団構想についての特集番組が組まれたそうだが、
その中でインタビューに答えた球界関係者のうち
阪神の掛布雅之HLTだけが球団拡張ではなく
球団削減を主張したようで、
そのこと自体は公式twitterの予告で掲載されている。
これを見た人は
「15年前のナベツネの陰謀を蒸し返すつもりか」
などと考えるかもしれない。

ただ、ここで補足しておかないといけないのは
この「球団削減」の発想自体は
2000年代になって出てきたものではないことだ。
かつて南海の監督を務めた鶴岡一人は、
松下幸之助との対談の際に
「カリフォルニアと同じ面積しかない日本に12球団は多いのでは」
と言われたという。
まだMLBが24チームのころだそうだから1969~76年の間、
つまり約50年前には既にそうした発想があったことになる。
それも球界内部ではなく財界の大物だ。
正直なところ
カリフォルニアは面積が同じでも総人口が日本よりはるかに少ないのに
なぜ面積だけで見るんだという気になるが。
しかし考えてみると
「日本地図で空きがあるからここに新球団を」
「狭い関東に5チームもいらない」
と言ってる拡張賛成派も発想の根本は全く同じだ。
ちなみに今も増え続けているカリフォルニア州の人口は
東京大都市圏とほぼ同じで、
カリフォルニア州のMLB球団は5チーム。
あれ?

ナベツネは本当に読売のことしか頭になかったのか

エクスパンションどころか
逆に球団数を減らそうという考え方は、
日本の財界には伝統的にあったものと推測できる。
だとすると、
現在16球団を推進しているのがソフトバンクだったり、
最近新規参入をしたのがソフトバンク、楽天やDeNAだったり、
16年前に最初に新規参入を表明したのがライブドアだったのも
偶然ではないのだろう。

これらを踏まえると、
「既得権益を守りたいだけ」
「巨人のことしか頭にない」
と言われている球団合併や削減構想も
彼らなりに野球界全体の将来を考えたゆえのものだと考えられる。
これは又聞きなので
その点の信ぴょう性はご容赦いただきたいが、
以前あるスポーツビジネスの専門家が
球界再編騒動直後の渡辺恒雄と会った際に
「各チームの財政健全化や
その後の球団数増の可能性も視野に入れた
具体的かつ建設的な球界再編案構想を持っていて、
それまでの報道などで伝えられていた内容とも全く違うのもあって
非常に驚いた」と
その人物の講演で聞いたことがある。
講演を聞いたのはたしか2006、7年ごろだったはず。
また私は読んでないのでこれまた何とも言えないが、
渡辺恒雄の自叙伝にも
球団数削減からの具体的な球界再編構想が書かれていると聞く。
少なくとも渡辺恒雄自身は
「CSが嫌いだから」「関東にチームが多すぎるから」程度の理由で
16球団構想に賛成している人たちに比べれば
よほど深い考えを持っているとは言えるだろう。

ただしその構想が実現可能だったかといえば
かなり疑問符がつく。
球団が減ったあと
たとえ各チームの財政が健全化できたとしても、
果たしてその後再び球団を減らすならともかく
改めて増やす機運は本当に高まるだろうか。
その話が出ても名乗りをあげる企業が出てくるのか。
正直なところ、
これはこれでかなり楽観的な考え方だったように思えてならない。

あともう一つ重大な問題点をあげるとすれば
それは渡辺恒雄自身だろう。
何といってもこの人、
「たかが選手が」に代表されるように
発言に際しての言葉の選び方があまりにも悪く、
情報発信、特にメディア対応に関しては
マスコミ関係者とは思えないほど下手すぎる。
御自身がただでさえ嫌われ者なのだから、
さらに大衆を敵に回すような言動を繰り返せば
世間には何も伝えられるわけがない。
どんな発言をしても
どこからともなく大量の擁護者が現れては暴れてくれる
どこかの首相や財務大臣らとはわけが違うのだ。
もし10チーム制を強引に実現させていたら
多数のプロ野球ファンが本当に離れていったんじゃなかろうか。
そうなれば残った各球団財政の健全化も
絵に描いた餅で終わっていただろう。
なにせ今回の16球団構想に関しても
「すぐ実現できないのはナベツネのせい」という
あからさまな与太話を
いともあっさり信じる人が後を絶たないぐらいには
世間から嫌われているのだから。

参考

『私の履歴書 プロ野球伝説の名将』(日本経済新聞出版社、2007年)

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